タガニウム
ワンボックスカーの運転席から、日差しが真っ直ぐに差し込んでき始めた。そろそろ、夕方ごろなのだろうか?地表よりも高い位置ということを考慮したら、まだ16時くらいかもしれない。
こうして彼らと話している間、総理は何をしているのだろうか?
車の中で一人で何を思っているのか?今、彼の正体は二つの可能性を秘めていた。
一つはこの国を全力で守ろうとしている政治家、もう一つは、エイリアンと手を組んでいる国家・・・いや世界的反逆者。
もし後者だと確信を持っていたら、あのセンチュリーには乗っていないかもしれない。いや、それどころか、うまいこと言って彼から離れるだろう。昔からフェードアウトするのが得意だ。
だが、よくよく考えれば、もし我々を裏切っているのなら、総理にとって、次の行動をとる絶好のチャンスではないか!
車窓から外の様子を視線だけで確かめてみた。一応、センチュリーは何事もなく停まっている。ただ誰かが乗っているかまでは、はっきりと見えなかった。
確信は持てないが、ひとまず安心する事にして、その「タガニウム」というやつについて聞くことができそうだ。
「タガニウムってなに?」
あまりにも当たり前のように出来てきた単語で、本当は知ってないと恥ずかしいことなのかもしれないと不安になった。
「地球外の物質で、数十年前に太平洋沿岸に落ちた隕石に含まれていた。」
なぜ、カニカマがそうスラスラと答えているのか?ますます知らないことが恥ずかしく思えてきた。
「海底に落ちた隕石の中に眠っていたタガニウムは、海水に溶けて地殻に根を張り、地球内部に広がり始めた。」
今度はカイだ。だが、カイの言葉にカニカマが頷いているのが気に食わない。カイはさらに説明を続けた。
「そしてプレートまで到達した時、今度はプレートに乗って移動をし始めた。それが、あの2011年に起きた、大地震だ。」
あの歴史的な大災害の裏でそんなことが起こっていたとは、夢にも思っていなかった。
「で、それが今更何だって言うんだよ。」
カイが話を続けている間、カニカマはポテトチップスの袋を豪快に開き、美味しそうな音を立てながら、3、4枚同時に頬張っていた。
「タガニウムは、この銀河でかなり強力なエネルギーを持った物質だ。この地球の原子力と呼ばれるものの数千万倍はあるだろう。」
「そんなのが今、この地球の奥深くに眠ってるって思うとゾクゾクするよな?」
恐らくカニカマの言っているゾクゾクは、違う種類であろう。
「もちろん、使い方次第で、どうにでも転がるくらい汎用性は高い物質だ。だからこそ・・・。」
「欲しがる奴も多いってわけか。」
どこの世界も摂理は同じなのかもしれないし、それこそ、宇宙人も地球人と大差ないのかもしれない。まぁ我々地球人も大まかに見れば宇宙人ではあるが・・・。
「じゃあこのどでかい事件も、そのタガニウムを欲しがっている奴らの仕業ってこと?」
「まぁ、そういうことになるな。だが、それがどちら側かわからない。」
「どちら側?」
「要するに、良い奴か悪い奴らかってことだよ。」
カニカマは、ポテトチップスを口に含みながらしゃべっているせいで、小さなカスを撒き散らしていた。正直不快だ。
「タガニウム自体は、使用が制限されている。ところが・・・。」
そう言うとカイは、キーボードを軽く操作して、モニターに簡易的な日本列島の図を映し出した。
ふとキーボードの脇を見ると、以前こちらに向けてきた、あのよくわからないメガホンのような装置が、恐らくUSBケーブルであろうものでコンピューターに接続されていた。
「これが日本列島におけるタガニウムの反応がある場所を示した地図だ。」
「はぁ・・・?」
「どう思う?」
どうと聞かれてもそのモニターには、何の印もなかった。
「何も・・・・。」
「そう!何も反応がない!」
いきなり上げられた大声は、ワンボックスカーの天井に吸収されていった。
「じゃあ・・・無くなったってこと・・・?」
もちろん、違うことはわかっているが、何を意味しているのか、自分のような地球人には理解できない。
「違うよ、ミスター・ブルーズ!違う物質に変わっちまったのさ!」
どうやらカニカマは、地球人ではないようだ。カイも「その通り。」と言うように、カニカマに指を差しながら頷いていた。
「よほど地球との相性が良かったんだろうなぁ。地球のエネルギー物質の何かと、化学反応やら何やら起こして、新たな物質として生まれ変わったようだ。その証拠に!」
カイがまたキーボードをいじると、日本列島の図に円形の赤い模様がちらほらと現れ始めた。
「これは、物質に関係なく、高エネルギーを感知している地域の図だ。」
ちょこちょこ海沿いに、赤い模様が広がっている。その中に、東京の北東の位置から埼玉県の南部にかけて、かなり濃い赤色の模様が集中していた。
この図が正しいものなら、間違いなく得体の知れない何かが、この東京の地下に存在しているのがわかる。
「でも違う物質に変わったなら、奴らはどうして・・・。」
「このタガニウムを狙っているか?だろ?」
カイが、どうやってか人の心を読むことができることを忘れていた。
彼はモニターを眺めながら答えた。
「この図を見ればわかるだろ?」
確かに、単位や数値の規模感はわからないが、かなり異常な状況だということは、何となく感じ取ることができた。
「しかも、タガニウム自体は使用を制限されている。ところがこの新しい物質は・・・。」
「まだ制限されていていない。」
制限されていないとなれば、悪用する側はタガニウムよりも使いやすい。逆に、制限する側は即座に回収し、制限するための研究を早急に進めなければならない。
気がついたら、カニカマはいびきをかいて眠っていた。
「目的はどっちなんだ?回収しにきたのか?強奪しにきたのか?」
カイはつぶやいた。こりゃとんでもない話になってきた・・・。
作者メモ:説明長すぎ
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




