カニカマ
謎の男を前に、どうしていいかわからなかった。万が一奴が何かこちらに攻撃を仕掛けてきても、男が二人いれば、どうにかなるとは思っていた。
いや、果たして本当にうまくいくであろうか?僕の人生は、喧嘩や暴力とは無関係の人生だった。でも、総理の腕をよく見ると、そこそこ太く感じたし、体も贅沢していると思われる割には、引き締まっている気がする。であるならば、こちらがどうにかして奴の動きさえ封じれば、あとは総理がやってくれるであろう。
そう頭でシュミレーションをして、完璧な作戦を建てていても、なぜか怖い。
相手の体格は、確かに横幅はデカく見えるが、明らかに我々よりも背が低いと思った。恐らく顔が見えていないという点が、恐怖心を煽っているだけに違いなかった。やはり第一印象は大事だ。
「どこの人間だ?日本政府の人間ではないな?CIAか?ICPU?」
映画でしか聞いたことない単語が、総理の口から飛び出し、改めて国のトップの人だという認識をしなおした。だが、その矢先に・・・。
「あれ?インターポールってICPU?ってかそもそもインタポールってこういうことしないか・・・。」
かなり間抜けな物言いだった。すると、謎の防護服の男は、何も聞いていなかったかのように話を続けた。
「確かに君たちが言うように、太陽はこちらに近づいてきているようだ。そのせいで車のオーバーヒートがあちこちで起きている。」
その声は、どこかおどろおどろしい。まるで変声機で声を低くしているかのようだ。低く重たい声は、さらに説明を続けた。
「だが、もし地上が上がっているならば、その分気圧が下がるから、いくら太陽の熱を受けようとも、気温が下がればそのような現象は起きるはずがない。」
「なら、太陽がこちらに近づいていると言うのですか?それにあの道の断面は・・・。」
「その前に!」
急に片手を前に出すもので、二人して少し身構えた。またもや心臓が波打つ感覚を全身で受けた。
少しの間、沈黙が続いた。我々は彼が何を言い出すのか聞き耳を立てて、待ち侘びた。
奴の表情が見えず、何を考えているのかさっぱりだ。
「腹が減った。何かないか?」
「え?」
恐らく総理と同じ気持ちだ。
思いもよらないリクエストに、とりあえずコンビニで調達したおにぎりと、カニカマスティックを見せた。
「カニカマ・・・。」
「ああ、まさか見たことないことはないよな?」
もし、総理の懸念が当たった場合、間違いなく地球外の何かだ。成人していれば、カニカマはどの地域の住んでいても、知っているはずだ。
すると、突然、奴は防護服の頭の部分に手をかけ始めた。
「まさか、カニカマが引き金で自分の顔を晒すつもりじゃないよな?」
だが、そのまさかだった。出てきたのは、無精髭を生やし、髪の毛が長くボサボサな、小太りの中年のおじさんだった。
「カニカマ好きに悪い奴はいない!」
中年おじさんはそう言いながら、カニカマを奪い去り、そのまま袋を引き剥がすと、中のカニカマスティックにかぶりついた。
「すまん、すまん、脅かして・・・。てっきりなんかヤバいやつかと思ってね。」
いや、お前が一番ヤバいやつだって。
「あなたに言われたくはないですけどね・・・。」
総理はもはや口に出していた。
「で?あなたは?」
「シーーーーッ!」
いきなり言葉を遮られた。
名前を聞くには絶好のタイミングだと思ったが、残念ながらそうではないようだ。
「誰が聞いてるかわからない。コードネームで呼び合おう!なんかないか?俺に!コードネーム!」
なぜ、人のコードネームを我々がつけなければいけないのか?
「何でもいいのか?」
なぜか総理はノリノリだった。
「ああ、かっこいいやつにしてくれ!」
「じゃあ、カニカマ!」
この人は煽っているのか?ではないとしたら、なんて安直なのであろう。
「いいじゃねぇか!カニカマ!よし、それで行こう!」
思ったより気に入ってもらえて良かった・・・。
「それで?あんたらは?」
これは、コードネームで答えるべきなのか?だが、こういう何を考えているかわからない奴は、何をし始めるかわからない。ここは奴のペースに合わせるべきなのだろうが・・・。
コードネーム・・・?何も思い浮かばない・・・。
すると総理が、手を挙げながら、
「私は、プライムミニスター。」
ととても初老とは思えない無邪気な笑顔で答えていた。
「ダメ!それじゃあ、安直すぎる!」
秒でダメ出しをされてしまった。
「P,Mね!」
「何それ?なんか有害物質というか午後のひとときというのか、なんかパッとしなくないか?」
なぜかこちらに意見を求めてきたが、もちろんどうでも良い。とりあえず、愛想笑いをしておいた。
「で、お前さんは?」
すると、総理が僕の背中を叩きながら、
「ミスター・ブルーズてのはどうだい?」
と今度は得意げに提案をしてきた。
どうやら、総理のネーミングセンスが安直なだけのようだ。
「なるほど、あんたのあざからとったってわけだね。」
たわいのない会話から、急に戦慄が走った。なぜ、あざのことを知っているのか・・・。どうやら総理も同じことを思って、鋭い視線でカニカマを見ていた。
あざは背中、それを知っているのは、母さんと問診をした医者たち、そして総理だけのはずだ。それに背中は服を着ているので、もちろん、見えるはずもない。
だが、カニカマはあざの話をしたのに、何というかあっけらかんとした雰囲気で、まるで当たり前のことのように振る舞っている。
総理がこちらの様子を伺っている。確かにこの質問をするに相応しいのは、総理じゃなくて自分だ。
「なぜあざのことを・・・?」
「あ?だって今ここにいるのは、あざがあるやつだけだろ?」
それはとんでもない情報だった。
「その情報はどこから?」
総理が質問していたが、やはりカニカマは政治家が嫌いらしく、別の方向に視線を向けていた。
「そんなことより、あれ見てくれよ!」
カニカマの指さす先に視線を向けた。大きなバッテンの印が、地面に刻まれている。しかも、一つだけではなく、複数の印が、足跡のようにどこかへ続いているようだった。
「なぁ?気になるだろ?」
気にならないと言ったら嘘になる。
ミスターブルーズって直訳するとアザさんってまぁまぁひどいあだ名だな
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




