決着
樫太郎の完璧な位置どりとタイミングでの指示、そして機転を聞かせたブルターの行動力が、相まって僕はレチウムを最高のタイミングで、メイジーの元へ放り投げようとした時、樫太郎と対峙していたはずのメイジーが、不適な笑みを浮かべながら、こちらに振り返った。
樫太郎の刀はメイジーに当たっている。だが、彼女は表情ひとつ変えていない。
そして、彼女の傍に信じられない人物がいた。
「かぐや姫!」
樫太郎の驚いた声が聞こえると、僕は咄嗟にレチウムを湖に反対側の誰もいない方へと放り投げた。
だが、そんなことをしても無駄だ。どちらにしても、レチウムがレットストーンと同じように爆発するのであれば、メイジーだけでなく、僕もかぐや姫も跡形もなく消えてしまうに違いない。
メイジーは勝ち誇ったような表情でこちらを見ていた。やはり、彼女に勝つには彼が・・・カイがいなければならないのだろうか?
ほんの一瞬で、悔しさが込み上げてきた。どうやら、ブルターとの約束は果たせそうにない。
レチウムは投げ込まれた湖の水面スレスレで、真っ赤な爆炎を半径数キロメートルに渡って広がっていった。
その爆炎と、それと同時に朝焼けの空気を震わせた爆音は、この時代の人々に、富士山の噴火を錯覚させた。
僕は目を瞑った。以前レットストーンの爆炎を浴びたメイジーの姿とIGTOの局員たちは、跡形もなく消えてしまった。跡形もなく消えるというのは一体どういう感覚になるのだろうか?
痛いのか?それとも何も感じず、ただ時が止まってしまうのだろうか?できれば後者になってほしいものだが、後者は後者で、虚しいというか、悲しいというか、そうなってしまっても自分には分からず、ただただ自分がいなくなった世界が続いていくと考えると、恐怖心が芽生える。
結論、僕はまだ命を終わらせたくないということだ。
どうやら、その願いが叶ったようだ。目を開けると、僕たちをいつもの青い光が包み込んでいた。
ブルター、アル、デル ティランが、四方に向かってメガホンレーザーを掲げ、中規模のドーム型のバリアを張り巡らせていた。
それのおかげで、レチウムの爆発に巻き込まれることはなかった。
「あんな米粒みたいに小さなかけらが、こんな大爆発を起こすなんて・・・」
樫太郎は開いた口が塞がらないようだ。
「あら、ご親切に助けてくれたのね?それにお久しぶりじゃない、ブルターちゃん。ちょっと太ったかしら?」
「知ってるの?」
聞かない理由がなかった。
「やっぱりあなただったのね?どうりで見たことがあると思っていたけど、ずいぶんと老け込んだせいで、確信が持てなかったわ」
そんな軽口を叩いたブルターだったが、すぐに様子が変わった。
「よくも・・・」
他の恐竜たちもメイジーを睨みつけている。
「よくもケイさんを!」
今度はティランの太い声がこだますると、デルはメガホンレーザーを彼女に向けた。
メイジーは耳を抑えながら、うずくまり、その隙に樫太郎がかぐや姫を抱き抱え、なるべくメイジーから離れた場所へと、彼女を運ぶ。
「かぐや姫!」
樫太郎はかぐや姫を見つめている。彼からしたらようやく、自分の手で彼女を抱きしめることができるのだ。それはどれほどの時を待ったことか・・・。だが、かぐや姫は手のひらを彼に向け、まだその時ではないことを彼に示した。
樫太郎はハッとすると、かぐや姫よりも前に自分の体を運ぶと、険しい顔で高音に苦しむメイジーを見た。
メイジーは、明らかに苦しんでいるはずだが、時折不適な笑みをこちらに向けてきた。
「あなたたち、もしかして私の肉体を解放しようとしているのかしら?でも残念ながら、それは無理よ。何せ、私の肉体は極限まで強化されているからね」
「どういうことでしょうか?」
「どうやら、私たちの仮説は間違えているみたいね」
恐竜たちの会話を聞いて、今度は笑い始めた。
「いえいえ、あなたたちは間違っていない。私が少しばかり上だっただけの事よ」
「どういうことだ?」
今度はブルターが本人に直接尋ねた。
「私の体が頑丈すぎて、外からの音では足りないのよ」
「ブルターさん、どうしますか?」
気づいたら、もうすでにメガホンレーザーが四つも使われている。
「さすが、ケイの弟子ね。ブルターちゃん」
だんだんメイジーに余裕の表情が戻ってきている気がした。
痛みに慣れてしまったのか?
すると突然、頭の中でかぐや姫の声が聞こえてきた。
「では、内側からなら効くってことですよね?」
その言葉を最後に再びかぐや姫の声は聞こえなくなった。
「どうしたんだかぐや姫?」
樫太郎に心配そうに、体を支えられているかぐや姫は、頭を軽く抑えながら、目を瞑っていた。
すると、メイジーの顔から笑みが消えていくのがわかった。
「ちょっとまって!何をするつもり?まさか!」
メイジーは一人で喚き散らかしている。
「くそ!まだ終わりじゃないわ!私の体が消滅しても、すぐに戻ってくるわ!いつでも何度でもね!」
ヴァインズの屋敷で我々に負けた時よりも、切羽詰まったような声に聞こえる。
「ティラン、メガホンレーザーの用意!彼女は絶対逃さないわよ」
ティランは大きく頷き、自分の体よりもかなり小さいメガホンレーザーを、もう一度構えた。
すると、断末魔とともに、彼女の体は数十匹の蛍の大群のように、小さな緑色の発光体へと姿を変えた。それを一つも逃すことなく、メガホンレーザーの紫色の光で包み込んだ。
これで彼女との決着がつけばいいのだが・・・。
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




