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ミスター・ブルーズ 〜命運を握る背中のあざ〜  作者: マフィン
竹林と月とかぐや姫

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約束

 時は少しだけ遡る。造と樫太郎が激突した時の話だった。ブルターの治療が功を奏したおかげで、アルがなんとか目を覚ました。


 「アル・・・」


 「ご心配をおかけしました。ブルターさん」


 「ブルちゃんね」


 アルは周りを見渡した。


 「ティランはどうなったのですか?」


 「ティランは・・・」


 ブルターが事情を説明した。


 「ティランなら、対岸で傷を負って倒れてしまったわ。今、デルが手当てをしているところよ」


 「あの覚醒状態のティランでもダメだったのですか?」


 ブルターは静かに頷いていた。その間も、造と樫太郎の戦いは続いている。


 「彼がもし、あの男に負けてしまったら・・・」


 「そうね・・・、私たちは彼女を甘く見ていたようね」


 そう言いながら、同じように二人の戦いを鋭い眼差しで眺めているメイジーの様子を伺った。


 「それに、仮に彼があの男に勝ったとしても、彼女を倒せるかどうかは、わからないわ」


 確かに、それはそうだった。それにまだどんな策を彼女が隠し持っているか分からない。


 「そういえば、さっきもう一度、山肌の穴を開けてほしいって言っていたけど、あれは一体どういうことなの?」


 急にブルターが、声をひそめながら、尋ねてきた。メイジーも僕もかぐや姫もゲルダファである。だから、あの時、かぐや姫と話していた、このテレパシーのようなものをメイジーも聞くことができていた。


 なら、ますます今の会話を聞かれるわけにはいかない。僕が黙っている表情を見て、ブルターは何かを察したようだ。


 「なんだから分からないけど、山肌の穴を開けるということは、あの物質を取ってきたら良いってことよね」


 「そしてそれを僕に渡してください」


 すると、ブルターの顔が急にしかめ面になった。


 「それ、やったことあるの?」


 アルはあまり内容を理解していないのか、僕とブルターを交互に見ている。だが、逆に、ブルターは僕が考えていることがわかっているようだ。


 「ええ、二度」


 「わかったわ。でも、絶対にこれだけは約束して頂戴」


 そう言うと彼女は、僕の手を両手で掴んだ。


 「この作戦はあなたがいなければ成功しない。あなたが居なければ宇宙を救えないの。だから、命を粗末にしないと、約束してちょうだい!わかったかしら?」


 正直、彼女は僕を買い被りすぎだ。僕はそれほど勇敢な男ではない。死ぬことなんて絶対に経験したくない人生の一大イベントである。


 「わかってます。なので、僕もあなたを信じてます」


 「ええ、わかったわ」


 そう言うと、彼女は僕の手を離した。


 「アル、私が入れるくらいの大きさの穴を開けて!なるべく、彼女たちに気が付かれないようにね」


 すると、アルが小さく手を挙げた。


 「ブルターさん、私の方が小柄ですので、私に行かせてください。そうすれば、開ける穴が小さく、敵に気づかれにくくなると思います」


 すると、ブルターの眉間のしわが、隆起した。


 「ちょっとアルちゃん?それは一体どういう意味かしら?」


 もちろん、彼女にそんな意図はないことぐらい、聞いていればわかる。しかも、アルも意味がわかっていない。


 「私の方が体調も幅も小さいので、その方が・・・」


 アルはさらに煽っているかのように、話をなぞると、ようやく空気の違和感に気づいたが、その根本の理由まではまだわかっていないようだ。


 一方のブルターは、アルの追加説明で、さらに眉間のしわが掘り進められた。


 「ちょっと、アルちゃん?それはもしかして、若い自分の方が痩せていて、歳上の私の方が太っていると言いたいのかしら?」


 どの種族でも痩せている方がいいものなのか?でも確かに、見た目が恐竜だからなんとも言えないが、どちらかといえば、アルの方が細くて可愛らしく見えるのは事実だ。


 「ちょっと!声に出てますけど?」


 いや!声は出していないはず。そういえば、ずっと疑問に思っていた。これがゲルダファの特殊能力で、僕がコントロールをして、使える能力だとしたら、どうやらゲルダファ以外の種族にも聞こえさせることができるようだ。


 「ごめんなさい!別にそういう意味じゃ・・・」


 いや、今の言葉はそういう意味でしかない。


 だがすぐにブルターの表情は元の優しい表情に戻った。


 「でも、確かにそうかもしれないわね。悔しいけど私もお菓子を控えて、ダイエットを頑張るわ。でもね、この作戦を指揮しているのは私なの。だから、これ以上私の愛している部下たちを危険に晒すわけには行かない。だから、申し訳ないけど私が行くわ」


 「いや!あの!そういう意味ではないです・・・すいません!」


 ようやくアルは、自分の発言の意図せぬ無礼に気がついたようだ。まぁ、別に無礼ではなく、彼女の被害妄想なのだが。


 「もし、私が帰って来なかったら、あなたはデルと彼の言うことを聞いて頂戴ね」


 「わかりました。ではお気をつけて」


 そこからは結構あっさりとしたやり取りだった。ブルターが山肌の穴に入ると、アルがすぐに、穴を修復した。まぁ僕以外が触っても、多分レチウムはなんの効果も発揮しないであろう。だから、普通にとってくればいいだけで、危険なのはその後の話なのである。


 そのころは、もうメイジーは別のことで精一杯で、こちらに見向きもしない。


 そしてまもなくして、再び山肌に穴がいた時、ちょうど樫太郎がこちらを見ていた。


 明らかにこちらを見ている。すると一瞬だけ首を横にふった。


 「頼む、誰か彼の手当をしてくれ・・・」


 どうやら、彼なりに何か作戦があるのだろうか?僕は彼の手当てをする名目で、樫太郎とメイジーに近づいた。


 ブルターもまだ穴から出ないようにしている。多分、レチウムは発光物質なのだろう。


 彼女にバレるかバレないか?緊張状態がかなり長いこと続いた。


 そしてようやく、その時がきた。


 「今だ!」


 僕はその言葉を聞くと、樫太郎の反対側から、メイジーに距離を詰めた。だがあまり詰めすぎてはいけない。


 「パス!」


 その言葉と共に、ブルターから赤く光るレチウムが投げ込まれた。


 僕が手に触れてから確実に、彼女に放り投げてなければならない。穴から持っていくのでは、メイジーの近くへ届ける前に、爆発していただろう。


 だが、すべての作戦は・・・失敗に終わった。

評価、ブックマーク等もしていただけるとかなり嬉しいです!

よろしくお願いします。


感想も待ってます。


記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1

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