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ミスター・ブルーズ 〜命運を握る背中のあざ〜  作者: マフィン
竹林と月とかぐや姫

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記憶のすべて

 目が覚めると、僕は椅子に座っていた。なんだか懐かしい気持ちになっている。そう、その椅子は、実家にいた時によく座っていたあの椅子だ。


 そして目の前には、父が気合を入れて買った大型テレビがある。そういえば、それを考慮して新しい家では、普通のサイズ・・・いやなんならもっと小さくて安いテレビを買った気がする。


 人生でなかなか幸せだった日々だ。だが、そんな日々はこの後崩壊する。巨大な津波のせいで・・・いや、宇宙から降りてきた宇宙人たちのせいで。


 宇宙に存在する強大な力と、自分たちの失態を隠蔽する権力者によって、僕の家族は犠牲になるのだ。


 そんなことを考えている間に、この夢なのかなんなのか分からない世界の僕も、津波に巻き込まれた。


 そして父や兄妹の顔が浮かんでは、消えていった。


 風景は次第に今の家のダイニングテーブルに変わった。手にはスマートフォン。そこに映っていたには、病床で眠っている母だった。


 そう言えば病院の計らいで一度だけ、スマートフォン越しに母に会っていたことを思い出す。だが、その時の母はだいぶ弱っていて、受け答えができる状態ではなかった。


 結局、ただただ母の辛そうな状況を見ているだけの、僕にとっても辛い時間を過ごすことになった。それが母の最後の記憶のため、僕は今の今まで記憶の彼方へ封印をしてしまっていたようだ。


 それをなぜ今になって思い出しているのか?


 画面の向こうの母は、目を瞑って安らかに眠っていた。今画面越しにいる母は、生きているのだろうか?亡くなって安らかな姿で眠っている母すら見ていない僕からしたら、そんな表情でもいいから、母の安心している姿でも見れればそれでいい。


 すると、画面の向こうの母の目がゆっくりと開いた。


 「母さん?」


 思わず、呼びかけてしまった。あれは、僕の潜在意識にいる母親だという認識はあるものの、体は心に正直なようだ。


 母親と画面越しに目が合う。母は何か何か言っている。音声はこちらに届いていない。果たしてなんと言っているのだろうか?


 僕は、スマホの音量を上げる。しかし、音は聞こえない。その間も母は、何度も同じことをこちらに訴えかけている。


 こうなったら、口元で何を言っているのか判断するしかない。


 そう意気込んだ瞬間に、母が何を言っているのか、簡単にわかった。


 「ごめんなさい」


 間違いない。母は謝っている。だがなぜ謝っているのだろうか?


 「なんで謝っているの?」


 すると、母の話している内容に変化があった。どうやらこちらの音声は向こうに届いているようだ。


 「あなたは」


 「どなたですか?」


 それがわかった途端、またもや風景が変わった。今度は家の近くのあのコンビニだ。周りに人は誰もいない。そして、太陽はいつもよりも近く感じた。


 そう、あの日・・・僕の大冒険が始まったあの日だ。


 次は誰が出てくるのか?実際にこの時にあったのはメイジーとカイだ。この際どっちがコンビニにいてくれてもいい。さっきの母の言葉の真相を知っていれば、誰でも良いから教えてほしい。


 だが、物が散乱し、停電のせいで薄暗くなっているコンビニの中にいたのは、メイジーでもカイでもない、意外な人物だった。


 「ようやく見つけましたわ」


 そこにいたのは、かぐや姫だった。


 「随分と深いところまで潜り込んでしまいましたね。それにここはまた随分と・・・散らかっているというのでしょうか?」


 かぐや姫は現代味たっぷりの光景に戸惑いの色を見せた。


 「ここはどこなんでしょうか?」


 かぐや姫は僕の問いを聞いて少し微笑んだ。


 「どこだと思いますか?」


 逆に質問をされるのは得意ではない。僕は、ある程度頭の中で予想は立てるが、結論を大事にする。だから、結論以外はどうでもいい。


 だが、その結論を得るには今は、その質問にイヤイヤでも答えなければならない。


 「潜在意識の中とかですか?」


 かぐや姫はさらに笑い出した。そう言えば、彼女は僕の頭の中の声が聞くことができる。


 「ええ、ちゃんとね。でも答えてくれて嬉しいわ」


 なんだか気まずい。


 すると、かぐや姫は僕の質問の答えを説明し始めた。


 「そうね。ここはあなたの記憶の中と言うべきかしらね。記憶のすべてと言ったところかしら?」


 「記憶のすべて・・・」


 「そうよ、ここにはあなたの生まれてから今までの全ての記憶が詰まっているのよ。もちろん、ここへ来るまでにいろんなものを見てきたと思うわ。まぁ中にはあんまり印象に残っていないようなことは、過ぎていってしまう時もあるんだけどね」


 僕は、先ほどから、記憶のすべてという言葉に違和感を感じていた。


 「あら、それにしてもあなたの記憶、随分と少ないわね。まるで、私みたいだわ」


 そう、それが違和感の正体なのだ。


 「多分ですが、これは僕の記憶ではないです。これは僕の潜在意識の願望や欲が具現化した世界だと思います」


 我ながら、随分と厨二くさい発言だと思うが、そうとしか考えられない。


 「なるほど、だとしたら、あなたの潜在意識に私を登場させて、何を願っているのかしら?」


 随分と恥ずかしい、質問をされてしまった。


 「なら、あなたは本物っていうことになりますよ?この時代では、あなたにお会いしていないですし」


 恥ずかしい質問をはぐらかそうとしたが、この後さらに恥ずかしいことになってしまった。 


 「ええ、私は本物ですわよ」


 かぐや姫は笑っている。


 「その証拠に・・・」


 そう言いながら、かぐや姫はきている衣服を脱ぎ始めた。


 「ちょっと待て待て!」


 僕は、急いで目を瞑り手で顔を覆ったが、数秒間に合わず彼女の裸体が脳に焼き付いてしまっていた。


 そして、僕は彼女の裸体への興味よりも、別の部分に興味を抱いてしまった。


 それは彼女の胸あたりから、へそにかけて赤く広がっていたあざのような物だった。


 「大丈夫か?」


 すると今度は、ぼんやりと男の声がして、まわりの景色も霞んでいく。


 そして気がついたら、かぐや姫もいなくなっていた。


 あれもやはり潜在意識のせいなのか?それとも・・・。


 「おい!しっかりしろ!」


 目を開けると、樫太郎が必死な表情で、僕の両肩を鷲掴みしながら、前後にゆすっている。


 僕はとっさに彼には今のことは黙っておかなければならないと思った。

評価、ブックマーク等もしていただけるとかなり嬉しいです!

よろしくお願いします。


感想も待ってます。


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