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ミスター・ブルーズ 〜命運を握る背中のあざ〜  作者: マフィン
竹林と月とかぐや姫

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お告げ

 僕は、さっきの様子を頭の中で思い返していた。なるべく細かいところまで気を配って思い出しているが、やはり、あの湯呑みがこぼれていた事実はない。むしろ思い返せば思い返すほど、あの湯呑みは恐ろしいほど無事であることへの違和感だけが浮かんでくる。


 「まぁでもあの爆発を起こしたときに、彼女がメガホンレーザーを持っていれば、恐らく、彼女に茶を飲ませる余裕がないくらいの被害は出ているはずなので、心配はないですよ」


 ブルターは彼をなだめた。


 「ですが、姫に害がないくらいの威力で彼女を止められるとは思えない。今からでも乗り込まなければ、姫の命が危ないではないか!」


 樫太郎はまるで猪のように、彼女の元へ突き進もうとしている。


 「それは大丈夫なはずです。あまり詳しいことは言えませんが、彼女は今、一時的ではありますが、身体の自由が効かないはずです」


 これも、信頼と実績のダイナー製品の為せる技なのだろう。


 「でも確かに、彼女が動けなくても、奥さまがいる。油断は出来ませんね」


 僕は、あえて懸念を口にした。どうせ彼がその事実に気づくのも時間の問題だ。


 あの時は奥さまは突然現れた僕に驚いて、気絶してしまっていた。もし、奥さまがお茶に毒が入っているのを知っていれば、目が覚めてから彼女が飲ませる可能性は高い。


 どちらにしても、今のままではなにも分からない。


 ちょっと待て!であるなら、ここから彼女の語りかければ良いではないか。


 そのとき、その考えに呼応するかのように、彼女の声がした。


 「それは駄目です。あなたは力を制御できていないので、あなたの声は彼女に筒抜けの可能性があります。なのでなにも考えずにただ、私の話をお聞きください」


 「お告げだ!お告げが来たぞ!」


 僕がそう言うと、樫太郎や恐竜たちの視線は、僕がおかしくなってしまったと思っているのか、どことなく同情の顔に見えた。


 「その調子です。あなたの心の声は聞こえていないです。それでは、あなたのためにも、話を続けますね」


 「また来るぞ!」


 もう、必死だ。


 「私は、ひとまず無事です。あの後帝の近衛たちが、こちらの部屋に入られて、母とトキは医務室へ運ばれました。あなたが持っていたからくりは、木っ端微塵に破裂しましたが、怪我をしたのは、トキだけです」


 僕は今のお告げをそのまま、一言一句違わないように、彼らに伝えた。


 「よかった。彼女が無事で安心した」


 樫太郎もようやく落ち着いてくれた。


 「ですが、あなたのからくりのせいで、への護りはかなり厳しいものになってしまいました。ですのでもう私の元へ来ることは不可能と思いください」


 「姫は知っているのか?トキや奥さまのことを」


 彼女の言葉の復唱を聞いていた樫太郎が、再び興奮し始めた。


 「もし、彼が私のこの言葉を聞いていたら、恐らく、取り乱して無謀にも、こちらへと向かおうとするでしょう」


 そう言うと彼の表情が、拍子抜けしたように、力が抜けていった。


 「姫なのか・・・?」


 だがその問いに答えることはなくお告げは続いた。


 「私はその無謀さを、別のことに使って欲しいと願います」


 「別のこと?」


 ブルターが呟いた。


 「もしトキが、あなたのおっしゃっているような者なのでしたら、あのシステムを使えって、彼女をこの星から追い出して欲しいのです。彼女のように、知識がある野心家がこの星にいては、私だけではなく、父や母、大切な人に危険が及んでしまう。だが、それのよって私はこの星にいられなくなってしまうかもしれない。ですが、命を落として、彼らのことを思えないのであれば、会えずともお互いを思いつづけられれば、私はそれで十分です」


 果たして彼らにこのお告げが、お告げ通り伝えることが出来ただろうか?これ以上は考えるのをやめた。全てが無になる前に。


 しばらくの間が空いて、再びお告げが始まった。


 「私の願いを聞き入れてくださったと信じて、詳細をお話しします」


 それで良いと思う。


 「私の願いは、もうお察しのとおり、あのシステムを直していただきたいのです。そのために我々の使命でのある、レチウムを取ってきていただきたいのです」


 「でも、今まであれだけの有力者が彼女のために、懸命に探していたにもかかわらず、見つけ出すことが出来なかったというのに・・・」


 その言葉が届いているかのように、またお告げが降りてきた。


 「彼らは楽することばかりを考えて、まともにさがしてなどいなかったのです。それに、場所は彼が分かっているはずです。私が彼に正体を明かしてしまったあの場所です」


 その言葉を聞いて、彼はなにかを思い出した顔をしている。どうやら場所が分かったようだ。


 「気を付けてください。私も頑張りましたが、もしかすると、この会話を彼女が聞いていたら、彼女もあなた方を追うかもしれません。お願いです。彼を守ってください」


 その言葉を最後にお告げは聞こえてこなくなってしまった。


 すると、恐竜たちが驚いたような表情をしていた。


 「君、もしかして・・・」


 ブルターがなにかを言おうとしている。


 「それよりも、早くしなければ。彼女の命が危ない」


 確かにそうなのだが、僕は恐竜たちの反応が少し気になる。だが 話はいつでも聞ける。今は一刻を争う。


 「それで、行き先は?」


 すると、樫太郎はその目的地を見据えながら告げた。


 「富士の山だ」


 月夜に照らされた。今とは少し違う形の富士山が、まるでこちらを挑発しているかのように、厳かにこちらを見ている。

第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1

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