表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミスター・ブルーズ 〜命運を握る背中のあざ〜  作者: マフィン
竹林と月とかぐや姫

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/131

トキ

 再び現れた因縁の敵を前に、すでに身動きが取れなくなっていた。彼女はこの時代で一体何をしているのだろうか?そもそも彼女はあの我々の前に姿を現していたメイジーなのだろうか?それとも、またこの時代に同じ顔の人物がいたのか?


 いや、もう僕は騙されるつもりはない。だが、この時代の人々はそうではないのだろう。なんならかぐや姫の様子をあんな簡単に見に来れるということは、それなりに信頼されているということだ。


 そうだった・・・。この心の声もかぐや姫に聞こえているのだろうか?


 僕はかぐや姫の方を見た。


 すると、こちらに笑顔を向けた。


 「ええ、一体なんのお話をしているのか分かりませんが、彼女は私の世話をしてくれている名をトキと言います」


 すると、メイジーいやトキは鬼の形相になった。


 「姫様、何を呑気なことをおっしゃっているのですか?この者は間違いなく、姫様を月へ攫おうという月の使者ですわ」


 トキは大声を上げた。もちろん、そんなことをしたら、この静かな平安の日本では、簡単に町中に声を轟かせることができるだろう。


 あちらこちらから、足音がこちらに向かってくるのが聞こえてくる。だが姿を現したのはほとんどが女性ばかりで、男は年老いた者が一人だけだった。どうやら提灯軍団は、まだ恐竜たちが足止めしてくれているに違いない。


 「貴様が月の使者か・・・」


 一人の翁が驚きの顔から、だんだんとしかめ面に変わったのがわかった。恐らく、月の使者っぽくないと思っているのだろう。そりゃ一晩中輝きを放っているかぐや姫に匹敵するような神々しい連中を想像していたのに、来たのはアラサーのひょろ男だ。


 「姫!怪我はないか?」


 翁は念の為、部屋の入り口から一歩も入らず、声を飛ばした。


 「ええ大丈夫ですわ」


 そろそろ姫からも説明してほしいものだが、それよりも先に翁が、一番誤解を生んでしまう状況証拠を見つけてしまい、翁の顔つきが変わってきた。


 「婆さん!」


 いやいや婆さんって・・・。多分だが自分の愛する妻だろうに、流石に酷いのではないかとも思うし、もう少し早く見つけてあげてよ。とも思ってしまった。


 するとかぐや姫はクスッと笑った。多分僕の心の声を聞いて笑ったのであろう。


 「姫!なぜ笑っているのですか?」


 すると、トキの表情もどこか笑いを堪えているかのように見える。まさか、やはり彼女も聞こえているのか?


 するとトキはわずかにこちらを見ながら、にやりと笑ったように見えた。やはり彼女は正真正銘、あのメイジーだ。


 「貴様!」


 翁の怒号が響き渡った。


 「婆さんに手をかけるだけでは事足りず、姫の心までもおかしくしたのか?」


 「いや?それに関しては、あなたの育て方の問題かと思うのですが・・・」


 それに婆さんもやめてあげてほしい。もう心の中で話しているのか、実際に口に出しているのか、かぐや姫が反応してしまうせいで、本当にわからなくなってしまっている。


 「造様。大将殿をお呼びしましょう。恐らく、竹林の魔物を退治して、こちらに向かっている頃でしょう」


 メイジーが翁に訴えたが、翁はそんな気はないようだ。こちらに敵意剥き出しの表情で睨みつけてくる。


 「いや!こんなもやしみたいなやつ。わし一人でどうとでもなるわ。わしが姫を助けなくて、誰が助けるのじゃ」


 だが、どこからも武器なるものが出てくる様子はなかった。


 僕は仕方なくメガホンレーザーを使おうと、手を胸ポケットに伸ばした。まぁあの青い光で照らせば、怯んでくれるだろう。その隙に逃げられる。


 だがしかし、やはりそううまく問屋が降りなかった。気づくと視界が天井向いているではないか。そうかと思えば、急に背中から頭にかけて重たい痛みが全身に広がっていった。息もしづらい。


 少し視界をずらしてみると、そこにはメイジーが僕腕を持っているのが見えた。


 「トキや、危ないから下がりなさい」


 「いえ、この者はもう手出しできないでしょう」


 メイジーの勝ち誇った顔から目線を反対側の手に移すと、彼女の手にメガホンレーザーが握られていた。


 しまった!このままでは仮に、メイジーから逃げられたとしても、その後は望み薄だ。


 あと残された望みは・・・かぐや姫だ。姫が釈明をしてくれさえすれば・・・


 しかし、彼女は何も言わず、ただこの状況を楽しんでいるようだった。


 なぜだ!なぜ姫は話してくれないのだろうか?


 「申し訳ございません。私もあなたの望みを叶えることができずに、心苦しいですが、私も引き下がることができない理由があるのです」


 かぐや姫は文字通り心に訴えかけてきた。


 「ご心配なさらないでください。彼らにあなたを殺させたりはしませんから」


 「姫!この者をどのようにいたしましょう?」


 翁が問う。すると、かぐや姫はこちらを笑いながらも、悲し気な視線をおくりながら、指示を出した。


 「打首にしてちょうだい」


 思わず耳を疑った。


 「違いますわ!今のは私じゃないわ」


 しかし、彼女の言葉が届いているのは、恐らく僕だけなのだろう。翁は翁のくせに、生き生きとしている。


 僕はメイジーに抑えられたまま、その場で首を落とされようとしていた。実際の日本はこんなに野蛮だったのか。こんなところで首を落とせば、首から吹き出した血がこの部屋を侵食して、匂いだのなんだの大変なことになるはずなのに。


 いや待て!もしかしたら・・・


 かぐや姫は私じゃないと心に訴えてきた。だが、確かに打首という言葉は僕も聞いた。ということは、誰かが姫になり変わって、発言しているのか?姫を操っているのか?


 誰かというかメイジーだが、彼女がもし姫を操っているとしたら、姫だけではなく、翁もここにいる全員が、メイジーによって操られているのかもしれない。


 まぁそれがわかったところで、もはやこれまでだ。僕はこの平安時代の歴史の一片に埋もれてしまうのだ。


 とそのとき、随分と近いところで、恐竜の咆哮が聞こえてきた。


 「なんだ今のは?」


 どうやら全員に聞こえているようだ。


 「プス」


 誰かが気づかれないようにこちらを呼んでいる。

第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ