寝殿
月明かりを頼りに、竹林を進んでいる。メガホンレーザーを使いたかったが、提灯軍団がすぐ横を通り過ぎていたせいで、安易な行動は取れなかった。甲冑が擦れ合う音を竹林中に轟かせながら、提灯軍団は恐竜たちの方へと向かっている。
一応彼らが時間稼ぎをする予定ではあるが、あまり恐怖心を煽ってしまうと、彼らはすぐに逃げ帰ってしまうかもしれない。そうなると逆に今度はこちらに都合が悪くなってしまう。
だが多分彼らは・・・特にティランはやり過ぎてしまうだろう。
つまり僕も、想定よりも迅速にことを運ばなければならない。まずはあの建物群へ辿り着かなければならない。提灯軍団が通り過ぎた今、頼りは上空から見た自分の記憶力だけだ。
すると、後ろの方で、恐竜の咆哮が聞こえてきた。ここまで静かな夜だと、数メートル先のように聞こえる。それとも本当に数メートルしか移動できていないのか?だとしたら、そろそろ提灯軍団が引き返してきてもおかしくないかもしれない。
僕は確認のため振り返った。
すると、月明かりとは違う褐色の点がぼやっと見えた。どうやらかなり移動はできているし、まだ彼らもこちらに戻ってくる気配はない。
僕は、そろそろメガホンレーザーに頼ることにした。
するとメガホンレーザーを使い始めてから目的地への到着はあっという間の出来事だった。
流石に門番は一緒になって竹林には向かっていないようだった。だが、周りの警備はかなり手薄だ。とはいえ、この辺りは全く人通りがない。それどころか、人がいるのかと疑いたくなるほど静かだ。
この騒ぎのせいか、松明の数が異常なほど並んでいて、その薪が破裂する音が度々聞こえる。
僕は、門から一番遠い位置の壁の前に立つと、そこの壁をメガホンレーザーで照らした。この機能は初めて使うし、初めて見る。果たして、うまくいくのだろうか?
するとメガホンレーザーで照らされている壁が、次第に薄くなっていくように見えた。まるで存在が消えていくように。そしてその薄くなった壁の裏側が次第に見えてくる。
ザ・日本建築みたいな、現代では寺みたいな建物が見えている。正直、僕は歴史が、特に日本史が大の苦手のせいで、どう説明していいかわからないが、とにかく僕は侵入に成功したようだ。
メガホンレーザーで照らしていた壁は、照らされなくなった途端に、また姿を現した。思わず、僕はその壁を手で触ってみた。
ちゃんとある。
やはりダイナー星人は優秀且つ天才の種族だ。
中は思っているほど、騒がしくなかった。なんなら静かすぎるぐらいだ。まぁあれだけの近衛がいれば安心なのだろうか?
だが逆にその静かさのせいで、どこに彼女がいるのかわからなかった。騒がしければ、その場所へ行けば見つかるかもしれないのに・・・。
「どうやら、無事に忍び込むことができたのですね」
かぐや姫の声が聞こえる。
「はい。ですが、静か過ぎてあなたがどこにいるのか・・・」
「私は今、寝殿を離れ、北対に身を隠しております」
それはどこなのだ?まさかこの時代のことだ。全て丁寧に書いてあるわけではないだろう。
「恐らくそこから一番遠い建物でしょう。他のどの建物よりも静かで、そしてどの建物よりも月が遠いです」
「分かりました。探してみます」
とは言ったもののたどり着ける自信がない。だが、モタモタしていたら、ティランたちが、近衛たちを追い返してしまう。その前にかぐや姫と話をつけて、バンブーネットワークを使わせてもらわないといけない。
そう考えると、僕は一気に焦る気持ちが増した。
とりあえず、この辺りの建物ではないことがわかった。となれば移動しなければならない。僕は腰から体を折り曲げながら、ゆっくりと移動を始めた。
すると、またかぐや姫の声が聞こえてきた。
「そちらの方角ではございません。そっちは東対の方角です」
なんとかぐや姫はまるでGPSのようにこちらの居場所が瞬時にわかるようだ。
「もしかしてあなたは、このお力を無意識にお使いになられているのですか?」
なんのことだ?そう思いながら、僕はひとまずその方向から右を向いた。
「左です。左の方角です」
そうだった。僕の愚かさが露呈してしまった。
しばらく歩いては、かぐや姫から指示をもらうという作戦で、かぐや姫のいる場所を目指した。その間も時々女性が廊下を足音一つ立てずに通るだけで、それ以外の動きはなかった。
逆に足音がないから、急に現れて何度か心臓が破裂しそうになった。
「だんだん、あなたの存在が近く感じられます」
その言い回しになんか謎にドキッとしてしまった。
「大丈夫でしょうか?」
そうだった、心の声が相手にも聞こえているのだった。
今僕の目の前には、ちゃんと建物がある。恐らくここにいるのだろう。
「中にどなたかおいでですか?」
「母がいます。ですが、どのような理由づけをしても、恐らくこの部屋をお出にならないと思います」
そりゃ困ったものだ。何せ、この質問はすでに壁にメガホンレーザーを照らし始めてから、ふと頭よぎったからしたのであって、いないものだと思い込んでいた。
すると、壁の向こうから二人の女性が姿を現した。
一人は煌びやかな雰囲気の、光沢みたいに全身から輝きが溢れている美しい女性と、その隣に年配のこちらもそれなりに上等な着物を着ている女性だ。
二人とも驚いた表情でこちらをみていた。
「でっ!でっ・・・で」
年配の女性はそう言いながら、白目をむいて倒れてしまった。
「あなたが・・・」
「はい、ミスターブルーズと言います」
すると彼女は僕を上から下まで眺めると一言だけつぶやいた。
「なんか想像してたのと違う」
それは一体どういう意味なのだろうか?
第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




