竹林
いよいよすべての準備が整った。もうこの時代でできることは残されていない。恐竜たちは、この星で命を落としていった同胞たちに別れを告げるために、慰霊の儀式なるものを行なっていた。
彼らがこの星に来てからどれくらいの時が経ったのだろうか?その間にどれくらいの恐竜が亡くなったのか?
そして儀式が終わるとそれぞれの、卵だと思われていたタイムマシン?に乗り込み始めた。
「ブルターさん、全員脱出準備が完了しました」
「ご苦労様、あなたもは早く自分の船へ」
ブルターがそういうと、報告してきたトリケラトプスは、足早に走り去っていった。
「私たちも行きましょう」
ブルターの船には、僕と彼女の他に、ティラノサウルスのティランと、ラプトルのデルとアルが割り当てられた。地球に侵入できた後に、シールドの増幅装置を破壊するためのメンバーだ。
卵に乗り込むと、デルとアルが忙しなく操作盤を操作している。そして真ん中でブルターが、無数のモニターを凝視していた。
「全機浮上開始」
ブルターが目の前にあったマイクに勇ましく発言すると、卵から振動と重低音が発せられた。
「全システム正常に作動」
「1号機、異常なし」
「5号機、異常なし」
各所から、そんな声が鳴り響いていた。いよいよ戦いが始まる。だが、そんな中、僕は何もしていない。いや、何もできない。またしても自分の不甲斐なさが露呈して、嫌気がさしていた。
「3号機、目標高度到達」
だんだん、他の船からの報告が、変化し始めた。
そして全ての卵が目標高度に到達すると、ブルターは再びマイクに手をかけた。
「よしみんな、それぞれ抜かりなく、また2025年の地球で会おう!」
スピーカーから恐竜たちの咆哮が聞こえてきた。
ティランやデル、アルもその場で咆哮している。
ブルターはこちらに視線を向けた。僕も覚悟を持って頷いた。すると、彼女は深く目を瞑り、大きく息を吸うとまた目を大きく開け、息を吐いた。
「ティラン、爆破開始」
「了解」
すると、さっきまでいた施設は、大きな爆音とともに炎に包まれた。黒煙が我々を追いかけるように、こちらに向かって勢いよく上に上がっていく。
すると、上空の景色が少し歪み始めた。どうやらこの地球に張り巡らされたシールドが崩壊しているようだ。
「タイム装置起動」
だが、こちらからは何かが動き始めたようには見えなかった。
「ブルターさん、行き先は?」
ブルターは返答に困っているような表情を浮かべた。
「地球人暦800年から、900年あたりに電子痕跡が残っていないかしら?」
デルとアルは絶えず操作盤を動かしている。
その間に、各所でタイム装置で2025年へと向かう報告が相次いでいた。どうやら完全にシールドの破壊に成功したようだ。
こうして今、地球上の恐竜は絶滅したのだった。
無線機からの声は次第に減っていき、そして全く交信する声は聞こえなくなった。
「ありました、ではこの電子痕跡を目的地に指定してよろしいでしょうか?」
「ええ、よろしくお願いするわ」
ブルターがそう言うと、みるみるうちに地球の景色が変わっていき始めた。
鬱蒼と生い茂ったジャングルは、たちまち小さくなっていき、次第に文明的な建物が並び始めた。とは言っても現代のものに比べれば、少し古臭い感じがした。
これは社会の時間に習った寝殿造とかいう、やたら横にでかい家が地上に見えてきた。そして、太陽に照らされた昼の様相とは打って変わって、大きな満月が、淡く照らす夜の風景へと変わっていった。
「ごめんなさい、場所は問題ないかと思われますが、時代は少しずれてしまいました」
アルが謝罪の言葉を述べた。
「大丈夫よ、むしろ好都合かもしれないしね」
ブルターが微笑んだ。
今我々は、はるか昔の日本の上空にいるに違いない。昔は街灯なんてものはなかったせいで、月の光でぼんやりとしか下の様子はわからないが、どこか懐かしいというか、若干の温かみを感じていた。
ブルターはこの場所を意図してきたのか?
「とりあえず、人気のないところに着陸しましょう」
そうして選んだのは、寝殿造の家の少しばかり離れたところにあった竹林だった。
竹林の中に卵を着陸させると、我々は外に出ることにした。全員が外へ出ると、卵型の船は、船であることさえ忘れてしまいそうなくらい、小さな卵に姿を変えた。
「これ、こんなところに置いておいて大丈夫なんですか?」
その質問にデルとアルがブルターの方を見た。すると彼女の口角が少し上がっている気がした。
「そうね、じゃああなたが持っていってくれないかしら?」
なんか彼女らしくない気がした。だが、これから2025年の地球に向かうにあたってバンブーネットワークを使うのならば、もうこれを使うことはしばらくないはずだ。
僕は卵に手をかけ、そして持ち上げようとした。手のひらを少しはみ出すくらいの大きさだった。僕はその見た目に騙されて、簡単に持ち上げられると思ってしまった。
しかし、いざ持ち上げようとすると、まるで張り付いているかのように、地面から離れることはなく、僕はそのまま勢いよく尻餅をついた。
すると、恐竜たちは笑い始めた。
「ごめんなさいね。まさか転んじゃうとは思わなくて」
ブルターは笑いながら僕を起き上がらせてくれた。だが、僕は痛みを感じてはいない。ただただ恥ずかしいだけだった。
すると、メガホンレーザーを辺りに照らしていたデルが、急に声を上げた。僕の羞恥心は不完全燃焼状態で放置されることになった。
「この辺りに電子の歪みを感知しました」
「と言うことはこの辺りに、地球の生物じゃない何かがいるってことね」
我々はそれぞれがメガホンレーザーを持って、辺りを見回した。すると、目の前に現れた一本の折れた竹にメガホンレーザーが異常な反応を示した。
「これかしらね?」
よく見るとその竹は何者かによって綺麗に切られている。そしてその竹の筒の中は、微かに光を放っている。
新しい章ですね。物語も折り返しております。
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




