クロノスとカイロス
ブルターの説明はまだまだ続きそうだ。
「大丈夫?」
彼女は果たしてなんの心配をしているのだろうか?確かに、今突きつけられた事実は、愉快な内容ではなかった。でも、記憶もなければ、感覚もない以上、自分のことであって、他人事である。なんとも形容し難い複雑な感情だった。
「まぁ、なんとか」
今の回答以外に思いつかない。ただ、こちらの精神状態を加味して、説明が終わるのは避けたい。
「それで、結局カイはなんなんですか?」
彼女は、心配そうにこちらの様子を伺いながら、説明を続けた。
「司法取引をしたカイとクロ。いや、カイロスとクロノスはそれぞれ、IGTOから地球の監視役を任されていた。クロは地球の流れる時の監視を、カイはその瞬間的な時の監視をそれぞれに課した。」
ギリシア神話のクロノスとカイロス・・・。言われてみればそのままではないか。
「ということは要するに監視という名目で彼らも自由を阻害され、時の番人として、幽閉されているということですか?」
「ジーブスは罪人であることに変わりはないわ。たとえ、戦争を止めるために、我々に協力をしたからといって、全ての罪が消えるわけではないし」
その時、ふと、ある疑問が浮かんできた。
「カイ自身は何をしたんですか?」
ブルターは不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
「それはどういうことかしら?」
「いや、ジーブスに罪があるのはわかるけど、個人個人が罪を犯しているわけじゃないのなら、カイは罪を犯すどころか、むしろ宇宙の救世主じゃないですか?」
しばらく沈黙が続いた。ブルターから言葉がなかなか出てこなかった。少し気まずくなった。
「ごめんなさい、ただの素朴な疑問なので、気にしないでください」
とはいうものの、彼女から次の説明がなかなか飛んでこなかった。
「そうだとしたら、どうしてカイとクロはIGTOに入れたんですか?罪人が大出世じゃないですか」
「そこなのよ。そこが彼らのすごいところであり、恐ろしいところでもあるのよ」
ようやく、彼女が話し始めた。
「あなたも彼に会ったことがあるからわかると思うけど、彼の言葉はまるで魔法のように、相手を説得させる力があるの。それは彼の力なのか、ジーブスの力なのかはわからない。現に、今のIGTOのトップはクロだしね」
確かに、彼と旅をしている最中も、彼は言葉を操っているように見えた。何せ、彼は一生喋り続けていたし、それのおかげで問題が解決していた側面もあった。
彼女はさらに持論を展開させた。
「これは、私のあくまで推測に過ぎないのだけど、今回のこの戦争も、私はクロかカイが仕掛けた代理戦争なんじゃないかと思っているの。ゲルダファをけしかけてIGTOと戦争をさせる、そしてどちらが勝っても負けても、弱っている勝者に攻撃を仕掛ける。彼らならやりかねないわ」
「それはジーブスですか?それとも、カイとクロがですか?」
「両方よ」
多分彼女は、こちらの質問の意図を汲んでいたであろう。まっすぐとこちらを見据えながら、答えた。
僕は、どうしてもカイの最終目的がそこにあるとは思えない。確かにブルターの持論にカイが関与していないとは思わないが、それでも辻褄が合わない場面が、今までの旅の中で起きている。
僕の頭の中は、説明を聞いた後の方が疑問でいっぱいになった気がする。
その時、ティランが部屋に入ってきた。すごく息を切らしている。
「ブルターさん、」
「だから、ちゃんだってば!」
ここまで浸透しないなら、諦めたら良いのに。それこそ、今の日本だったらパワハラとして訴えられても、不思議ではない。
「ブルターちゃん。ここから、西側の岸壁に怪しい装置がありました」
「もしかして、シールドの?」
「分かりません。とにかく今、破壊を試みているのですが、びくともしません」
「分かったわ、そのまま続けて」
ティランはコクりとうなずくと、回れ右をしてそのまま走り去っていった。
「そろそろ私たちも戦いの準備に取りかからないと、彼らに全部仕事を取られちゃうわね」
確かに体感わずか一時間もかからない間に、彼らはもう後少しのところまで準備を進めているではないか。
ブルターの後を追って部屋を出ると、さっきまでの施設とは様相が様変わりしている。
研究対象が変わっただけでここまで変わってしまうものなのか?
中央にあったメガホンレーザーは別の装置に変わっているし、あちらこちらに謎の液体が入ったガラス張りのなにかが置かれていた。
「それでなにか分かったかしら?」
するとデルが、空間に浮かび上がっている資料をブルターに見せながら、説明をした。
「ジーブスの証言から、アドレナリンを抑える方向で、進めていましたが、それよりも、その過程で・・・」
そこから先はなにを言っているのかわからなかったが、要するに彼らは、僕のちょっとした発言だけで、体の変異を根本から抑えて、さらには変異を抑制する薬を開発したというのだ。
「よし、ならそれを時間の許す限り大量に製造しましょう」
「わかりました、現在すでに5340万個の製造に成功しています」
彼らの仕事ぶりに圧倒させられ続けていた。
「あとは、シールドだけよね・・・」
すると、太ももでなにかが振動している。久しぶりの感覚だった。ズボンのポケットをまさぐった。
「どうしたの?」
ブルターは不思議そうにこちらを見ていた。
なんとこんな恐竜時代に、スマホに着信が来たのだ。だが、番号が分からない。でも、出ないわけにもいかない気がした。
僕は、通話ボタンをスライドさせて、スマホを耳に当てた。
「もしもし」
恐る恐る電話越しの相手に呼び掛けた。
「おー、つながったぞ!俺だ俺、カニカマだぜ!」
なぜか、カニカマから電話が来た。これは好都合かもしれない。
久しぶりのキャラですね。もっと後に出す予定でしたが
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




