ジーブス
ブルターはグラスの水を器用に口の中へ、漏れなく運んでいる。なんで、わざわざ地球人に合わせた設計のものを彼らが使っているのだろうか?
「やっぱり不思議に思う?私が、コップを使っているところ」
ブルターも心が読めるのか?それとも単なる偶然なのか?
「なんか、宇宙人だからもっと違う水の飲み方をしているのかなと」
そう言いながら、彼女が水を飲んでいる姿を眺めた。ブルターはそれを飲み干すと、その答えを言い始めた。
「私たちの星と地球の重力の問題ね。ダイナー星の重力はここよりも全然少ないから。だから、さっきの変異みたいなことが起きるんだしね」
確かに、言われてみれば、彼らが何の違和感もなく重力に適応していたから何一つ疑問に思っていなかったが、それぞれの星によって重力は違うはずだ。だったら、わざわざ自分たちでその星に順応したものを開発するなら、その星にあるものを使う方が簡単かもしれない。
だとしてもコップとラプトルの口は、相性が悪そうだ。
「それで、なんの話から行こうかしら?」
だが、僕の頭の中での興味はもう一つしかなかった。
「もし可能であれば、ジーブスの話を聞きたいです」
彼女は少しびっくりしていたが、すぐに笑顔が戻ってきた。
「わかったわ、ジーブスについてね」
まるで、優しいなんでも教えてくれる教育番組のお姉さんみたいな雰囲気でそういうと、ブルターはずっと気になっていたジーブスの話を始めた。
「この宇宙において、破壊的な行為や、侵略的考え方を持つ種族がゲルダファの他にもう一ついたの。それがジーブスよ」
彼女はメガネのズレを直して、また話を続けた。
「でも最初の頃のジーブスはそんなことはなかったのよ。平和を愛するなんなら宇宙の騎士のような存在だった。でも、偉大な知識と技術力が彼らを狂わせてしまった」
なんとも人間に似た生物だ。
「ある日彼らは、強大な技術力で宇宙の支配を宣言した。もちろん、我々IGTOは全力でそれを阻止しようと戦い、激しい戦争が繰り広げられた。そして彼らは負けた。正直、私たちは勝ち目のない戦いだと思っていた。でも勝ったの。なんでだと思う?」
急な質問に思わず首を横に振った。
その後もブルターはまるでおとぎ話を聞かせるように、ドラマティックに話を続けた。
「ジーブスの中でも内乱が起き、我々と司法取引を行った者がいた。そのおかげでジーブスは捕えられた。ところが、ここでさらに問題が起きた。彼らの身体が特殊だった」
それよりも僕は、裏切り者が気になっていた。だが、彼女の勢いに負けて、僕は後で質問をすることにした。彼女の話はまだまだ続く。
「彼らは実体がなかったのよ。いわゆる一種のエネルギー体となり、永遠の命を手に入れていたのよ。だから、全宇宙を敵に回して戦争を起こそうなんて馬鹿なことも実行できたというわけね」
「それで、どうやって捕まえたんですか?」
すると、質問をされたのが嬉しかったのか、ブルターの語りに一層力が入る。
「それは裏切り者の技術力のおかげで、捕らえておくことはできた。ところが、彼らは不死身。罰を与えるにしても死刑や終身刑なんて刑を与えても、彼らが送る永遠の時に比べたら、大した罰ではなかった」
確かに、自由はなくても物事には永遠なんてものは存在しない。たとえ終身刑だったとしても、いずれは自由の身になる日が来るかもしれない。
「そこで我々は裏切り者に意見を求め、そして結論が出された。それは、彼らの記憶を全て消して、有機物の別の肉体に閉じ込め、そこで永遠に人生を繰り返すというものだった」
輪廻・・・、僕の頭の中に浮かんだ二文字の漢字だった。
「もう気がついたと思うけど、それが人間よ。つまり、ジーブスはあなたたち自身なのよ」
そう言われても、ピンと来なかった。しばらくブルターは、こちらの様子をうかがっているようだった。だが、まだ説明は終わっていなかったようで、話をまた続けた。
「それからこの星は、何かと監獄として使われるようになった。君たちが忌み嫌う虫と呼ばれる種族も、宇宙の囚人だ。そして時々月から使者が送り込まれることがある。彼らは、ジーブスが隠したと言われているある物質を探すために派遣されているようだが、そのほとんどが囚人っていうのも皮肉だと思わない?」
しかし、今の話は頭に残っていなかった。
人間は本当は宇宙の罪人。しかも、かなりの悪い種族だったのだ。ファンタジー映画だとゴブリン、いや悪魔とかそういった悪の骨頂的な存在だというではないか。
ということは僕自身も、本当の僕は極悪人で犯罪者ということになる。
とは言え確かに人間は、これから2000年以上も歴史を刻んでいくが、争いがなかったことなんて一度もないだろう。世界史を学べば、常に何かを理由に争いを行っている。
今、その根本的な理由が、明らかになった瞬間だ。
「それで、それがこの戦争と何か関係があるのですか?」
すると、ブルターは喋りすぎて喉が渇いてしまったのか、再びグラスに水を注ぐと、それを一気に飲み干した。
「そう、そのさっき話した裏切り者の話なんだけど、それが、カイともう一人、クロっていう奴でカイの兄弟なのよ」
やはりそうだと思っていた。ということは、カイはエイリアンと言っていたが、実はエイリアンではない。人間と一緒ではないか。
その瞬間、カイに対しての疑念が胸の中で、大きく広がっているのを感じた。
怪しい奴は怪しいんです(笑)
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




