陰謀
こんな迫力のあるブルターは初めてだった。やはり、一端の大組織の局長という肩書きは伊達じゃないようだ。
すると、こんどは彼女の同僚で、何度もこちらに奇襲をかけてきたラプトルの一人のデルが答えた。
「ブルちゃん、今日の今日まで、私たちは帰る術がなかった」
「それは分かっているわ、あんな状態になっちゃったら、帰れなくて当然じゃないのよ。」
だが、デルを始めとする恐竜たちは、揃って首を横に振っていた。すると、今度はもう一人のラプトルのアルが話を引き継いだ。
「先遣隊の後を追って、地球へ到着した後、私たちは変異した先遣隊たちに襲われた。私たちはすぐにこの地球での調査は不可能と判断して、帰還を試みたのだけど・・・」
「タイムロックがかけられていて、地球に閉じ込められていた。そうでしょ?」
すると恐竜たちは、お互いの顔を見合わせた。
「それは私も分かっていた、恐らくカイの仕業だ。だが、問題はなぜタイムロックをしたのか?」
ブルターの言葉をなぜか、誰も聞いていないような気がする。
「ですが調べてみると、我々が帰れなかった理由はそれだけではなかったんです」
すると、デルが急に別の話題に変えた。
「実は、この施設のことなんですが・・・」
「この施設がどうしたの?」
デルはずっとこの事実を言いたくて仕方がなかったのだろうか、説明の勢いが止まらない。ブルターはそれをなるべく感情を表に出さないように、長として冷静に聞いているのがわかる。
「実はこの施設、先遣隊を追って到着した時から、ここにあったんです。」
「嘘!てっきり私、あなたたちが調査のために作ったのかと思っていたけど・・・」
さすがのブルターも驚きを隠せない様子だ。
「それじゃ、誰が?もしかして、カイが?」
「いえ、どうやら違うようです。ですが、全く関係がないわけでもないみたいなんですけど」
すると、恐竜たちは中央にある、メガホンレーザーに何かを入力し始めた。
「私たちは、この疫病のような現象を解決するための作業と並行して、まだ、元の時代に帰ることを諦めていませんでした。我々のタイムトラベルは電子を使います。ですから、一番大きな電子、つまり雷を予測するために、大気を操作する研究をしていました」
彼らは本当に、研究熱心でレベルが高い種族だ。心底、侵略とかを考える野蛮な種族じゃなくて良かったと思う。
すると、今度はTが説明を代わった。
「でもブルターさん、これをみてください。」
一応、僕も確認してみた。しかし、案の定何が何だかさっぱりだ。だが、どうやらブルターは意味がわかっていたようで、表情がさらに険しくなった。
「全くないじゃないか」
「そうなんです、この地球において雷雲が発生しないなんて、あり得ないんですけど」
Tはようやくブルターと驚きを共有できて嬉しそうだったが、彼女の方は、さらに悩みの種が増えて、顔のシワが増えた。
「だとしたら、一体・・・」
「分かりません。それを突き止める頃には、私たちも・・・」
だが、僕にはなんとなく見当がついていた。これまでの旅の中での知識をようやく活かすことができそうだ。
だが、問題はこの空気の中でそれを果たして発言していいのだろうか?彼らがこの存在に気が付かないわけがない。もしかしたら、それを考慮に入れない決定的な理由があるのかもしれない。
なのに、もしそんなことも知らずに、ドヤ顔で発言をしてしまったら?恥ずかしくて、Tの口に飛び込んでしまうかもしれない。
「どうした?ミスターB?」
Tの声にハッとした。
「顔が赤いよ?」
ブルターにそう言われると、なお一層顔が熱くなった。
「何か言いたいことがあるなら、言ってくれよ」
Tがそういうと、恐竜たちは一斉にこちらに視線を向けてきた。言うべきなのか?だが、ここでなんでもないですは、それはそれで逆にダサい気がする。
意を決して、息を吸った。
「わからないですけど、もしかして、ATシールドじゃないですか?」
すると、恐竜たちがざわついた。
もしかして、まずいことを言ってしまったのか?それとも全くの見当違いなのか?どちらにしても、笑われる方がマシなくらい恥ずかしい気分だ。
すると、ブルターが鋭い視線を向けてきた。
「君、なんでそれ知ってるの?極秘のはずよ?」
すると、恐竜たちはさらにざわついた。
「ATシールドって一体なんなんですか?」
デルがみんなを代表して質問した。ブルターは少し躊躇いの表情を見せたが、すぐにみんなに説明をし始めた。
「IGTOが極秘で開発していた、仮想防御システムだ。だが、そのシステムは一人の男がこの時代からはるか未来で試作品が完成させるのだが、悪用されることを恐れた彼は、そのシステムもろとも自滅して、結局完成していないに等しいと聞いている」
彼女の目にうっすらと光るものが見えたが、メガネの位置を直すふりをして、誤魔化していた。
「でも、それは現に地球で使われた。地球歴2025年の出来事です」
初めて、周りを置いてきぼりにしている会話を展開して、少し優越感に浸っている。
「もしそれが本当だとしたら、一体誰が?」
恐竜の一人が声を上げた。
「そうですよ。そんな、ブルターさんでも情報が曖昧な技術を使える者なんて限られていますよ」
その使用者にも僕は心当たりがあった。今の僕には怖いものはない。
「それは、ゲルダファだ」
一気に空気が静まりかえると、今度は一斉に恐竜たちの笑い声に包まれた。
そうだった。ゲルダファの話になると、決まって宇宙の人たちは笑いだすんだった。だが、ブルターだけは笑っていないかった。
「だとしたら!」
ブルターの一言で、また一気に場の空気が静まり返った。みんな彼女が次に何を言い出すのかを、固唾を飲んで待っていた。
彼女はまっすぐこちらを見据えている。
「宇宙規模の大戦争が起こるかもしれないぞ。いや、もしかしたら、もうすでに起こっているのか?」
ブルターはその話を知っているはずだ。彼女がこちらに問いを投げかけたせいで、今度はみんな、こちらを固唾を飲んで見ている。
だが、僕はこの旅で真実を目の当たりにしていた。たとえ笑われようが、反論されようが、僕は今まで見てきたことを信じる。
「はい、もう戦争は始まっています」
予想通り、場は騒然としている。彼女だけは僕を見ながら、微笑んでいるように見えた。
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




