ダイナー星人
僕は重大なミスを犯した。なぜ、袋を開けなかったのか?まぁそんな余裕がなかったと言えばそれまでなのだが、もし袋が空いていれば、有効成分が一気に彼らの体内に吸収されたかもしれないのに。
いわばカプセル錠の蓋を開けて、そのまま飲むみたいなことだ。いちいち胃で溶かしてなんてする時間はないかもしれない。
だが幸いにも、お菓子の袋を5つも放り込んだせいで、ティラノサウルはひどくむせ始めた。
だが、その隙に逃げる暇もなく、今度はブルターが襲い掛かってくる。次こそは袋を開けなければならない。だが、地球のものと違い、ダイナー製のお菓子の袋は、びっくりするほど開けにくい。
そんな呑気にお菓子を開けている時間をくれるほど、ブルターの気は長くなかった。こちらにとびかかると、器用に両足で腕を羽交い絞めにしてきた。そして彼女の鉤爪が前腕を貫いた。
なんか彼女、さっきより怒っている気がする。
その真偽はわからないまま、今まさに彼女に文字通り食べられようとしていた。ところが、彼女の唇がこちらに付くかつかないかくらいのタイミングで、動きが止まった。
不覚にも彼女とキスをしているみたいなことになってしまっている。
「ブルターさん、ダメですよ、大人しくしてなくちゃ。」
日本語だ。こもった低い声。
ティラノサウルスの彼が、ブルターの長い尻尾をつかんでくれている。
「そこのジーブスさん、すまねぇが、俺を治したみたいに、ブルターさんも治してくれ。じゃないと俺も限界だ。」
どうやら元に戻ってしまったことで、力も元に戻り、こちらからすると弱体化してしまっていた。
僕はすぐに、さっき開けようとしていた袋に手をかけた。
「違う、そうじゃないよ。対角線上に引っ張るんだ。」
右上と左下を引っ張れば良いという事か?
すると、意図も簡単に袋が開いた。そして、まだうだうだともがいているブルターの口にお菓子を放りこんだ。
見た目はピーナッツのような形をしている。
しばらくすると、彼女の呼吸がどんどん落ち着いてき始めた。
「ふう、これで大丈夫だ。」
ティラノサウルスの彼は、そう言いながらブルターのしっぽを解放した。
「すまねぇ。あまりに抵抗するものだから、強く掴んじまった。跡が残らなきゃいいが・・・」
そう言いながら、彼女のしっぽをじろじろと眺めた。
「ありがとう。ミスターT。」
そう言うと、彼女はこちらを見た。明らかに感謝を述べられると期待したが、それは間違いだった。
さっきほどではないが、恐竜の強靭な力によって頬に一発ビンタが飛んできた。
「ええ?」
思わず変な声が出てしまった。
「おい、なんで殴ったんですか?あいつは俺たちを助けてくれたのに?」
そうは言いながらも、彼女の勢い抜群のビンタとそれに対するこちらの反応を見て、ティラノサウルスのミスターTは大爆笑していた。
「だってこの人、私の好きなお菓子を5つもあんたに放り込んだのよ?私が大事にとっておいた・・・」
かなりご立腹だ。
「はっはっは!ジーブスさんでもそれは駄目ですわ」
「いや、何も知らなかったから・・・、ごめんなさい」
するとすぐに彼女の顔に笑顔が戻った。
「良いのよ!それと遅くなったけど、助けてくれてありがとう。」
そう言うと、彼女はこちらの懐に入ってきた。どうやらハグをしているようだ。
ちょっと待って・・・、
「そういえば、おかしくなっているときの記憶ってあるんですか?」
「え?」
ブルターの様子が明らかにおかしい。
「ああ、全部覚えてるよ!なぁ?ブルターさん。」
代わりにミスターTが答えてくれた。
「え?そうなの?私は結構忘れてるけど?記憶に差があるのか?これはメモしないとだね。」
明らかに覚えているようだ。
「そうだ!」
ミスターTはそう言うと、のこのことこちらに近づいてきた。
「俺は、ミスターTです。きみは?」
「ミスターブルーズです。よろしく」
「え?君もミスターが付くのか!なぁなぁ、だったら君も一層ミスターBにしてさぁ。BT兄弟なんてどうだい?」
確か彼が一番最初にこの時代に来た時に会った恐竜だったはずだ。まさか、こんなギャップがあったなんて。タイムトラベルをして、過去の自分に教えてあげたいものだ。
「お好きにどうぞ」
どう返していいかわからなかった。だが、ミスターTは嬉しそうだった。
「それで、Tちゃん。一体何があったの?」
「まずは、ここにいる恐竜たちを元に戻しましょう。話はそれからです。」
そう言うTの顔が、さっきまでのふわふわとした雰囲気とは打って変わって、少し険しいように見えた。
我々は床に散乱したお菓子の袋を大量に手に取った。
「いい?どんなに図体がでかくても、一人一個で十分だからね。くれぐれも二個も三個も渡さないように!」
ブルターの目は本気だった。
僕は絶対に彼女に逆らわないと誓った。
そして、まずは三人で彼女の同僚のデルとアル。そしてスピノサウルスやプテラノドン、トリケラトプスと次第に仲間が増えていった。増えれば増えるほど、作業はどんどんはかどっていった。
そして、だんだんとみんなの身体が小さくなっていることに気が付いた。
「よし、大体治療は出来たかしらね。」
「え?恐竜ってこんな少ないの?」
数えてみても、一クラス分くらいしかいなかった。正直施設に入れるかどうか心配だったが、むしろ一人ひとりが小さくなっているおかげで、余裕だ。
「まずはみんなお帰り。みんなとまたこうして会えてよかったわ。これも全て、ここにいるジーブスのおかげよ」
彼女がそういうと、みんな各々で感謝を述べ始めた。僕はそんな雰囲気に慣れておらず、こんにゃくみたいにくねくねとしていた。
「それで、さっそくなんだけど、何があったの?」
すると、一人のラプトルが前に出てきた。
「ブルターさん・・・」
「ちゃん!」
謎の訂正が入った。ラプトルは気を取り直して、もう一度話始めた。
「ブルターちゃん・・・、私たちは嵌められたんです。」
ブルターの顔が一層険しくなった。
「詳しく話して!」
他の恐竜からもお祝いムードは消え去っていた。
ダイナーのお菓子は塩辛いらしいですよ
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




