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ロケットパンチ騒動!③

促されるまま、ドッグへと向かう。昨日と同じように、棺が中央に置かれている。


 違うのはツナギ姿の男がその周りにいるということ。待機中なのか、ゆるっとした雰囲気で集まっている。


 棺というモノの整備斑がどういうものかは分からなかったが、3人の整備斑はどれもなかなかファンキーな容姿をしていた。何故かニット帽を被っていたり、髪が青かったり、尖ったトラジマ模様の髪型だったり。


「この方達が整備斑です。趣味はファンキーですが、実力も人の良さも申し分ない良い方達です。右のニット帽の方から、敬称を略して似都望(にとぼう)野田(のだ)柞磨(たるま)と言います」


「よろしくお願いしまーす!」


「お願いします」


 火動は頭を下げる。ファンキーな見た目だが、相手は大人だ。


「マリーゼさん、この子たちがあの新星ですか!?」


 トラジマ整備員、柞磨がこちらを指差す。


 新星って。


「俺達、劣勢80%から解放されるんすね!」


「そうでーす!」


「お前が答えるのかよ」


「いえ、陽給さんの言う通りです。正式なパイロット・メイカーの乗った有人機があれば勝利は9割。ですから皆さん、少し気を抜いても良いと言うことです」


「分かりました。でも、もしもの時は僕らを呼んでくださいね」


 青髪の整備員……野田だったっけ、が言う。


「いいのか……いいんですか」


 真面目な様子に、思わず敬語になっていた。というか、経緯が経緯だっただけで、本来なら番匠にもマリーゼにも敬語を使うべきだろうが……今更か。


「ええ。なぜなら、僕らにはアイドルがついてますからね!」


「アイドル?」


 聞き返すと、男達の目が一斉に光った。


 ちょっと怖い。


「鎮守府の接客用AIアイリス!」


「ネロリちゃんのボイスを使っての戦い! これは負けられない! 燃える!」


「お兄さんネロリちゃん好きなの? いいよね!」


「分かるかお嬢さん! 姫っぷり万倍の甘い声から出る勇ましいセリフ! キュートとクールの相乗効果でいくらでも聞ける感謝の雨霰……」


 どれも聞いたことのない名前だが、武装ではなく可愛さを全面に押し出したアレコレというのは何となく分かった。陽給はなぜか盛り上がっているが。


「このように、量産機でもなんとかなっていたんですがね? ちなみに私はロリータアイドルポップちゃん派です」


「なんとか、なってた……?」


 へんてこな欲望っぷりがものすごく見えてる気がする。


「意志の伝達からして、やはりAIより生身の脳……もとい人間の方が都合が良いと言うことになりまして」


「でもまぁ、そう気負うことはないっすよ」


 趣味全開の話を止め、柞磨が言った。


「有人パイロット一人だけに一任するのは苦境でしょ。俺ら慣れてますんで、いつでも声かけて下さぁ」


「ま、劣勢でも、5人まとめてかかりゃなんとかなるんで」


「い、良い人たちだ……」


「なんだと? お嬢さん、俺たちを悪の組織だと?」


「お、思ってないですーっ!」


 迫る野田にかわそうとしてかわしきれない陽給。


「なんなら今、発現(クリエイト)を見てみましょうか。この方たちは整備班と出撃班を兼ねているんです。さっき言ったとおり1棺は1人にしか使えないですから、斑を兼ねた方がコンパクトなんです」


「いいの?」

 

 柞間が頷く。


「巨大ロボ発現っていう、でっけぇ出来事の割にはあんまり疲れないからな。それに気分転換にもなりゃあ」


 疲れない。


 確かにそうだ。昨日の火動もとんでもない出来事に疲れ果てたが、歩けない動けないほどではなかった。ごく普通に帰って起きてここに至る。自分でも能天気すぎると思うが、あまりにも非日常な出来事に、逆に実感が湧かなかったのだろうと推測。


 じゃ、誰にする? とジャンケンが始まり。勝利を収めた柞磨が更衣室に入っていく。


 その間、別の人員が人工棺を運んでくる。棺はオリジナルと同じ色で、小さく『柞磨』と札が付けられていた。そして陽給がいただろうポジションには、サーバーマシンのような機械が繋いである。よく似たサイズの機械が2つ並んでいるのは、どことなくドミノを思い出させた。


「見といてくれよ、俺のロボ」


「量産機じゃないの?」


「ま、俺たちゃいろんな状況があってな。一番強いのは量産機のデザインだが、こんな訓練中じゃあ、どんなものだって妄想できる! 戦闘機能がなくてもいいんだからな!」


「柞磨さん、最低限の武装はつけて下さいよ」


「アイアイサー!」


 心底楽しそうに柞磨は入っていく。棺の中を見ると、昨日見た薄青ではなく濃い緑色の壁と床だった。これがオリジナルと人工棺の違いか。


 棺が薄緑に輝く。自分もああやって巨神を発現させていたのか。光の中には『LINCAGE』の文字が見えた。そして現れたのは、


 鮮やかなショッキングピンクのツインテール。


 全てを見抜くが如き碧い瞳。


 鋼のアイドルドレス。


「行けぇー! 俺のメカ・エリナVR!」


「えー!? エリナチャンまでアリなの!? 火動、次はあんたもアレ出してよ!」


「誰が出すかっ! というかエリナって誰だ!?」


「知らないのー!? 『メカ・エリナの城』見たことないの!?」


「マリーゼ、ロボならなんでもいいのか!? あんなチャラチャラしたやつまで!」


 チャラチャラとはひどいよ/ひどいぞー! という声を後ろに聞きながら、火動はマリーゼに叫ぶ。彼女は淡々と。


「司令官からもらってません? ロボットアニメ中心の再生リスト」


「……、まだ」


 あまりにも当たり前すぎる様子に、ツッコミも冷める。もらっていたとして、なんかすごいリストそうである。


「この前の実験的発現は、レモン絞り器を基にしたロボでした。知る人ぞ知るロボだったので、モニタールームで喝采が起こってたっけなぁ」


 なんでもいいのか、ホント。


 思ったよりも自由らしい。


「もっと勉強して、レッドグロウを成長させなきゃね!」


「れっどぐろう? なんだその名前」


 聞き返すと、陽給はきょとんと目を丸くした。


「え、火動の造ったロボットの名前だよ。赤いからレッドグロウ。これから成長しそうなのを含めて、それっぽいでしょ?」


「センスいいな、嬢ちゃん」


「でっしょー!」


 呆れていると、「ロボットに名前を付けるのは慣習ですよ」とマリーゼが囁いてきた。


 押し退けたとき、警報が鳴った。番匠の声がスピーカーから聞こえてくる。

第3話の投稿に合わせて、登場人物紹介を更新しました! さすがに整備班5人は多くて……。

急な変更、申し訳ございません!

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