ロケットパンチ騒動!②
「巨神の話はこれで終わりだ。次はこの組織の成り立ちを話そう。マリーゼ君」
はい、とマリーゼはどこからか、紙芝居を取ってきた。
「始まりは20年前。真宮町の遺跡から1つの棺が見つかったことが始まりだ。棺は、男性が入ったとき、そして機械に関する空想をしたときのみ。願望を実現化する力を持っていた」
「それ、どうやって知ったんだ。1つの棺に1人しか入れないんだろう」
「最初に入った製造者に、たまたま協力的な女性が居たんです。彼らの名前はヴァース・ハイエットとアノニ・ハイエット。彼は驚異的な適合性を発揮し、ファーレンと共に世界中を荒らし回っていました」
紙をめくる。そこには銀髪の若い男が描かれていた。目元は描かれていないが、彼がヴァースか。
「ファーレンという組織は彼らの協力を悪用し、世界中の紛争で使い続けた。棺を人工的にコピーする手段を確立したのもファーレン。我々は力の悪用を阻止するため、アマテルを設立。オリジナルの棺を人工的にコピーし、対抗していた。だが2年前、彼らは更なる力を求めて、この真宮町に現れたのだ」
「わー、真宮町ぜんぜん関係ないじゃん……ただ単に棺が名産になったってだけじゃん……」
陽給が心底引いた声を出す。
「そして、君の入る棺はかつてヴァースが使っていたものだ」
「そいつの? それがどうしてここにあるんだ」
「原因は不明だが、アマテルとの戦闘中、突如としてヴァースは失踪。アノニも姿を消した。残ったのは棺のみ。我々は戦地に残されていたものを回収したのだ」
「敵の人達、取りに来なかったの?」
「想定だが。人工棺は多数所有されていた上、優秀なメイカーが消えたばかりだ。取り返せるほどの戦力がない上、オリジナルが渡っても痛手はないと考えたのだろうな」
「それに、先ほど言ったとおり棺は誰にでも使える訳では無い。1人につき1つ。おかげで嵩張ってしかたない。向こうも管理が難しいのだろうな」
嵩張るのが問題なのか……。呆れたところで、違和感に気付く。
「限られた人間にしか使えないなら、どうして俺はオリジナルを扱えるんだ」
「そこだ。この棺は君の遺伝子、もとい献血の血に反応した」
「そんなことやってたのか!?」
確かに以前献血には行った。しかしこんなことに使われるだなんて許可してない。
「真宮町を、ひいては世界を守るためだ。血液10mlは誤差の範囲である」
蕃昌は断言した。……いや、まぁ、そうだけど。
「そのため、我々はヴァース・ハイエットが君の父上ではないかと踏んでいる」
「……!」
紙芝居を見る。銀髪の、日本人とはかけ離れた男だ。面影も何もないが、彼が自分の父親……!?
「え、お父さん凄腕メイカーだったの!?」
「人工棺を解析した結果、前使用者の記憶が残ることもある。ひょっとしたら、ヴァースの素性ないし失踪した理由が分かるかもしれない」
「棺を使い続けていれば……でも、お前たちはヴァースに会ったことがあるんだろ?」
「いや、誰もいないのだ。彼のことは常にトップシークレット。ファーレンの上層部しか直接会ったことはなかっただろう。製造部トップにいた私ですら知ることが無かったのだから」
ここに呼び出されたときの「父のことが分かる」とはそういうことだったのか。けれど、まだ分かったとは言えない。
「紙芝居はこれで終わりです。整備班に挨拶しに行きましょう」
今回から、1週間につき1章(複数話)を公開することにしました!
爆夏のレッドグロウを、これからもよろしくお願いします!