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君のためにできること④

『距離、もう見えるよー。がんばって殺してねー』


「来たぞ。貴様の友達とやらが」


 知恵の声が響く中、京子は笑みを浮かべた。


 物言わぬメイカーは、何も答えなかった。



 ◆



『火動さんの生体反応あり! ですが、反応は巨神内部にあります!』


『棺は1人に1つのはず……ファーレンめ、精神操作か!』


 司令が苦々しく叫ぶ。陽給は奥歯を噛みしめたが、怒りに身を任せては勝てる試合も勝てない。気を取り直し、操縦桿を握り直す。


「大丈夫! なんとか壊す方向性でやってみる!」


『黒い機体にも注意してくれ。レーダー・目視ともに引っかからないが……』


「賢、いつも通り掴んで壊すからね!」


『分かった!』


 言ったものの、そうやすやすと当たりに来てくれるとは思っていない。まずは周囲を旋回しようとするが、ビームは速い。顔の間近で光線が炸裂し、思わず目を瞑る。


「速っ……生き急いでるとロクなことないってのに!」


 速度を追加。それに、これからが大事なのだ。ビームをかわしながら、陽給は叫んだ。このために、音声スイッチは全部ON。念のため司令に言っておく。


「司令! 火動と話してみるから、作戦は喋んないでね!」


『陽給君? 何を……』


「おーい! 聞こえてる!? って聞こえてたらこんな状況になってないか!」


「何を語りかけている? 無駄だ、洗脳されている。貴様の声は届かんだろうな!」


 パイロットの女は笑うが、おかまいなしだ。


「私も賢も、司令官も細目メガネも、整備斑の人も待ってるから! もちろんカヨコばーちゃんキチゾーじーちゃんも! 田中さん家のワンちゃんの時はごめん! 強制って本当やだよね、今度は私が助けるから!」


 攻撃を避けながらひたすら語りかける。最終的にはジャミングを撃ち込んで機体を分解させるのが目的だが、そんなの待っていられない。けれど、攻撃は激しい。


「くっ……」


 右腕にビームが掠る。痛覚は遮断されているが、バランスを崩す。無事である左腕で立て直すが、語りかける余裕はない。女の含み笑いだけが聞こえる。バランスと同時、パワーバランスまで崩壊していく。先ほどまで膠着状態だったが、明らかに追い詰められていく。


『陽給、一旦逃げて! 右腕を再生する!』


「う……」


 相手に聞こえない程度の小声で、賢が小さく叫ぶ。


 その方がいいのだろう。けれど、ああもう!


「早く起きろー! あの時のこと謝るから! 山に連れて行ってごめん! ハチからかばってくれてありがとー! 今度一緒にパフェ食べに行こー!!!」


 思いつく限り口にした。

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