混戦! 夫婦コンビ&美少女コンビ!?②
「今日は出撃はなかったな」
「司令から連絡来てない? なんか、ようへい? みたいな人が来て、先に倒してくれたんだって」
「そいつらが出撃してくれれば、俺達も楽になるのにな」
「えー楽しーじゃーん。それに、お父さんの情報はどうするのさ」
「ぐ……」
痛いところを突かれた。
「さ、さすがに毎日はお前も堪えるだろ」
「まー毎日はねー。あ、納言ちゃんねる始まっちゃう」
取り出されたスマホを奪い取る。
「食事中はスマホを見るな」
「うぅ、火動のおばーちゃん子ぉ……」
涙目を躱す。陽御崎家のルールは違うだろうが、ここは火ノ原家に従ってもらう。
そして22時。
「寝るぞ」
「え!? 夜はまだまだこれからだよ!?!?」
生活リズムの差がものすごく現れた。驚愕する陽給を適当にかわしつつ、自分の部屋への襖を開ける。彼女も観念したのか、テレビを消して自分の部屋へと入ってゆき。
「あ“―――――――――!!!!!!!!!!」
「なんだ!?」
すごい声が響き渡った。思わず居間へと戻る。陽給が血相を変えて飛び込んできた。ノートを抱えて。
「宿題忘れてた!!! 火動教えて!!!!」
「……」
なんだかんだで火動が勉強を見ることになった。曰く、「転校して来たばっかりでまだ範囲が分かんないの!!!」と強情な目で言われた。確かにそうだがなんだかそうでもないような気がものすごくするが、このまま自室に戻ってもあーだこーだ言われる気がする。仕方なく、それなりに初歩的な問題をアドバイスする。
「やったー解けた! 火動って教えるのうまいんだね!」
「……まぁ、毎日勉強してれば…」
純粋真っすぐな賞賛が眩しい。
「あわよくばこのまま全部やってもらおうと」
「……寝る」
「ごめんできるとこは自分で解くから部屋戻んないでー!?」
時計の長針が1周回った頃、ようやく陽給の宿題は終わった。
「ところでさ、火動って絵描くん?」
「は?」
唐突に質問が飛んできた。これでようやく眠れると思っていたのに、まだ何かあるのか。
陽給はノートの最終ページをめくった。そこには茶色い模様のネコが描かれている。
「えへへー、キュートキューティキューティスティックでしょ、カラメルキャット君」
茶色いからカラメル。大変安直なネーミングだ。くりっとした目が愛らしいといえば愛らしい。
「今日美術部の体験で描いて褒められちったんだ。だから絵の話題でもしよっかなーっと」
「するかっ。寝かせ「ちょっと描いて見せてよ、この白紙んとこ!」
「待て」
ぐいぐい来る奴だと思ったが、やはりハイテンションすぎる。
いきなり言われて題材が思いつく火動ではない。適当にネコを描く。陽給の可愛らしいネコではなく、リアル寄りのネコを。確か火ノ原家によく来ていたネコは、こんな感じだったはずだ。
書き終わって見せた途端。
「うめーっ! さすが初動で量産機を図面通りに発現させた男っ!」
「な、なんだその誉め言葉」
「しれーが言ってたよ! 初めてであそこまで再現するのはセンスあるって!」
あいつそんなこと言ってたのか。
「ぶっちゃけ敵に辿り着く前に壊れるトコまで想定してたみたい」
「……」
余計なお世話、とも言い切れない。よく考えてみれば初めての物が順調に動くのはそれなりにレアだ。鉄棒だって絵だってそれなりの練習が必要なのに。
……寝る時間は、結局遅くなってしまった。
普段の生活リズムからすれば遅い就寝時間だが、陽給にとってはまだまだこれからと言いながら自室に戻っていった。何がそんなにやりたいことがあるのだろう。また絵でも描くのだろうか。不思議なことだ。
思考回路はよく分からない。
けれど、絵を褒められて少し嬉しかった……それを認めるのは、まだもう少し後になる。




