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Fake Real Game  作者: まもる
4/12

ひょっとこ——正体——

家の持ち主と思われる男に見つかってしまった空。

まず簡単に入れることに、相手も責任があると思いながらも、これは勝手に入ってしまった自分にも責任があるとも感じる。そして空は、彼から質問責めをくらう。

そして話してる途中で、彼が例のあのひょっとこだと知るが——?

 やっと落ち着いてきたところで、空は埃まみれの床に正座されられていた。

「で?なんでここにいるわけ?」

 男は椅子に座り、足を組んでこちらを見下すように聞いてくる。

 黒い上着に、その下の服も黒く、下のズボンまでもが黒い。ついでに、その男の髪も綺麗に黒いが、光が当たっているせいか、若干紺色っぽい。見事に全身真っ黒コーデだ。そこから覗く瞳も黒く、黒から生まれし男だ。

 正直この座り方はムカつくが、そんなことを言える立場ではないし、なんとも絵になるところも否定できない。

「見つけたので……」

「へー見つけたら人ん家勝手に入るんだー」

 すぐさま鋭い答えが返ってくる。

「だって!開いてたのも悪いと思いません!?不用心ですよ!それに、私この世界慣れてなくて、しかも変な人に襲われたんですよ!?入らない選択肢あります!?」

「逆ギレかよ……」

「キレてませんが!?」

 明らかにキレた声色に、もうどうでもよくなったのか、男は椅子から立ち上がった。

「はぁ……もういいやそれくらい。とっとと出てってくれれば」

「…………今の話、聞いてました?」

 正座したまま、その男を見上げて空は言う。

「聞いてなかったように思うのか?」

「はい、明らかに」

「どの辺が?」

「追われてるって言いましたよね!?」

「『追われてる』じゃなくて、『襲われた』だろ?」

「匿ってください!ゴホッゴホッ」

 空は埃の床に頭を近づけると、それを吸い込んでしまい咳が出る。

「おいおい大丈夫か?」

 と、ペットボトルに入った水を渡してくる。

 空はそれを受け取ると、パキッという音を立てて蓋を開ける。

 ゴクッゴクッと半分ほど飲み干すと、はぁーと息を吐く。

「匿ってください」

「そこからかよ……」

 男がうんざりしたように言う。

「俺が匿う理由ある?それに、さっきの男のこと気にしてるんだったら、もう心配しなくていい」

「匿って——え?」

 途中まで言うと、そんな声を上げる。

「どういう……」

 と机にチラッと視線がいくと、そこにはあるものが置いてあった。

 そこには、先程助けてくれたひょっとこ——正確には面——が置いてあった。ということは——

「あーー!!さっきのひょっとこ!」

 さっきの男と重ねながら指を差す。

 先程何かを置く音がしたと思ったが、これだったか。

「さっきより声でか……」

 耳を塞ぎながらそう呟く。

「え?え!?さっきって……さっき?え?」

 混乱状態に陥った空は目をグルグルさせる。

「えっと?何にそんななってっか知らないけど、さっきのは俺。男はちゃんと始末したから大丈夫」

 男は軽く説明すると、空はホッと胸を撫で下ろす。

「そ、そっか……ちゃんと始末——」

 と言いかけふと思うことがあった。

「し、始末?」

 訳がわからないといった顔をした空に、男はきょとんとした顔で言った。

「そう、始末」

「始末って……どういう——」

「え?殺したよ?」

 当然のように言い放たれた言葉に、空は声を失った。


 空は「殺し」という単語に固まった。

 澄み切った青い瞳に、黒い彼の姿を映しながら言い放つ。

「ころ……し?」

「そうだよ、殺し」

 全く狼狽えないその姿は、空にとって先程の男よりも恐ろしかった。

 確かに助けてはくれた。あそこで助けに入ってもらわなければ、あの後どうなっていたか。想像するだけでゾッとする。

 だが、殺すまでするか?

「なんで……」

「なんでって、君を襲った奴だよ?ろくな奴じゃないだろ」

「だ、だとしても、殺すまでしなくても……」

「じゃあ、あのまま生かしておいたとして、あの男がまたしない保証は?」

「っ……」

 そう言われて言葉が出ないのも無理はない。そんな保証あるわけない。むしろ、またやることの方が高い。

「君は、嫌じゃなかったの?」

 そんなの決まってる。

「……嫌、だった」

 ギュッとズボンを握りながら答える。

「だろ?君と同じ目に合う人がこれから出てきた……君は、あの時生かしておいてよかったなんて思える?」

 フルフルと首を横に振る。

「というか、ここでは殺すことは罪には問われない。さっきの男がやったことだって、別にここではどうでもいいことなんだ。誰がどんな思いをしようが、平気で無視する。それがここの世界だよ」

 男は窓の方まで歩くと、指先で埃を取る。

「ここでは誰かが守ってくれるようなことはない。あの時は偶然俺がいたからいいものの、下手したら取り返しがつかなかった。自分のことは、自分で守るしかない」

 ふっ……と指先の埃を息で飛ばす。

「だから消した。これで満足?」

 男は一通り話し終えると、ベッドに腰を下ろした。

 空はやっと床から立ち上がると、膝についた埃を払う。

「……確かに自分じゃ何もできない。私の判断で、誰かが傷ついても、責任は取れない。でも——」

 そう言って、徐々に男に近づいていた空は、男の胸ぐらを掴んで言い放った。

「それでも!あなたの手を汚したくなかった!」

「っ!」

 男は驚いたように目を見開いたが、空は続ける。

「殺しは良くないよ。向こうの世界でそうだったからじゃなくて、私自身そう思ってるから。だって、どんな人にも……家族がいる」

「……家族?」

「そう、家族……わからないけど、その人がいるってことは、必ず生みの親がいる。そうじゃなくても、自分の手で作り上げた家族がある。大切な人はいるんだよ……殺す殺さないとか、悪い悪くないとか、わかんないけど……誰かがそうしたからって、やっていい理由にはならないよ!それはただの言い訳で、自分そうしたいだけ。それに、あなたは一番関係ない」

 胸ぐらを離すと、空は頭を下げる。

「私のせいで、あなたを汚してごめんなさい!」

 男は頭を下げる空を見つめ、空は頭を下げたまま、シーンとした空気が続く。

 だが、それはあることで打ち破られる。

「っ……はは」

 そう声を上げたのは、ベッドに座った男だった。

「……っははは!」

 まさかの笑い声に、空もやっと顔だけ上げる。

「なんで……笑っ……て」

 男は目を拭いながら、肩を上下させて笑いながら言った。

「だ、だって……はは!おかしくてさ」

 おかしい?今のどこにおかしい部分があったのだろうか。

「なんか……途中からさ、話が逸れてくしさっ……くく」

 男は腹を抱えながら、頑張って耐えているようだが、耐えきれてない。

 笑いのツボがおかしいのでは?

「責められるかと思ったら、謝ってくるし……こんな面白いことないって……ははっ」

 フーフーと息を吐きながら、笑いを抑え込む。

 ポカンとした空を前に、男は言った。

「心配しなくても、俺は汚れてるよ、とっくに」

「え」

「数えきれないくらい人を殺したし、数えきれないほど、残酷な光景を見てきたよ。だから今更……よっと」

 そう言って、ベッドから立ち上がると、顔だけ上がった状態の空を、カクンと上げさせた。

「お前は面白いな、名前は?」

「へ?あ……」

 これは教えていいものなのか……そう思いながらも、渋々答える。

青園あおぞの……そら

 男はふーんと唸りながら顎に手を当てる。

「分かった、じゃあ青園」

「は、はい!」

 ピンと立ち、姿勢を正す。というか、急に呼ぶのか……

「お前、掃除できる?」

 空は目をぱちくりさせると、首を傾げた。

「はい?」

毎度ありがとうございます。

なんか訳がわからない方向に行ってますね。これ本当に命かかってるんでしょうか?

そしてこれは書いてる時個人的に思ったのですが、読んだ方はわかると思いますが、見知らぬ男に匿ってくださいと言える空の度胸がすごいですね。

ではまた次回お会いしましょう!

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