それぞれの思い
材料を揃えた星輝は、いつでも終わらせることができる状況へと至った。
空、瞳はそれを知らない。
それぞれの抱える思いとは……
空は意外と朝は早く起きる。
毎日ランニングを習慣づけていたからだ。
こちらの世界に来ても、それは変わらない。
星輝には迷うからやめておけと言われていたけれど、それでは体が鈍ってしまう。なので深くは入らない、なるべく真っ直ぐな道で、帰りがわからなくならない程度なら許容された。
空は、昇った日が空を照らし、寒さで息は白く染まる。
走れば体が次第に熱を持ってくる。
小刻みに息を吐きながら走る。
だが、今日は走ることに集中できない。
なぜなら、昨日……いや今日かもしれない。正確な時間はわからないが、気になることができてしまったからだ。
頭がそれでいっぱいになっているうちに、いつのまにか家の前へと戻っていた。
「あれ?……もう戻ってきちゃった……」
少し乾燥した喉で、少々息切れしながらも、ポツリと声が漏れた。
自分が気にしても仕方がない。きっと彼には彼なりのやり方があり、考えがあるのだろう。
今は……彼を信じよう。
星輝はベッドで横たわりながら、考えを巡らせていた。
空は朝のランニングに外に出ていて、瞳はまだ寝ている。
自分なりに楽な体勢を試行錯誤して、ベッドの上で体をゴロゴロ動かしていたが、結局仰向けにする。
(もう確信へ至るための材料は揃った。もういくらでも好きにできる)
はぁとため息を吐くと。改めて面倒なことに巻き込まれてしまったと思う。
(まあ正直、あいつ次第なとこあるけど……)
体を横にして、壁際の方に顔を向けると、目を閉じた。
瞳が起きたのは昼過ぎだった。
昨日いや、今日寝たのは深夜と呼べる時間だったと思う。
ここ数日、なかなか寝付けない。寝付けるわけがない。
好きな人が、得体の知れない世界に一人で放り出されている。実際、瞳も獣に襲われた。彼も同じ目に遭っていたら……それ以上のことに遭っていたら……悪いことばかりが頭を埋め尽くし、支配している。
瞳には助けてくれる人が現れた。運が良かったのだろう。
でも彼は?今の彼には助けてくれる人が周りにいてくれてるだろうか。
『王を殺すこと以外は罪には問われない世界』
私はこの世界で、どう生きていけばいいのだろう。どうやって自分を保てばいいのだろう。
——辛い——辛いよ……
胸がズキズキ痛む。
瞳はベッドの上で、必死に胸を押さえた。
「……っ」
目が潤む。薄い水の膜を張り、瞼に溜まっていく。
現実から目を背けるように、目をギュッと閉じた。そこから生温かい水が流れ、シーツに丸い跡を残す。
「ゆー……くん」
思わず声に出た。瞳が彼を呼ぶ名だ。
きっとこの名前を呼びたかった。
でも目の前には誰もいなくて、真っ暗で。
彼の名を彼の目の前で呼びたい。
今は、望みはそれだけでいいから。
熱くなる瞼を開けると、やっとの思いで手を動かし、何もない壁に向かって手を伸ばした。
だが、誰も手を握ってくれなかった。
当然のことなのにな。
そろそろ終わりが近きそうです。
長いことすみません。
もう少しお待ちください。(お待ちくださいばかりですみません…)




