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Fake Real Game  作者: まもる
12/12

迷子と迷子

突然連れ出された瞳。そしてその瞳と逸れてしまった星輝と空。

瞳は英語に大苦戦。星輝と空は瞳探し。

だが、空が瞳らしき人を見つけて……

「Was it okay?(大丈夫だった?)」

 突然手を引かれ、人混みを抜けたが、謎の女性、そして謎の言語(英語)、さまざまなことが一気に押し寄せ、何をすればいいのかわからない。

 何か言わなければと、口をパクパクさせるも、なんの言葉を出てこない。

「…………」

 相手の女性もきょとんとしながら黙ってしまった。

 そして、何か一人で納得したような表情を見せると、口を開いた。

「Ah, I see……(ああ、なるほど……)」

 そう呟くと続けて言った。

「You must be hungry!(お腹が空いているんだね!)」

「…………」

 瞳に英語はあまりわからないが、何か関係ないことを言っているのは、なんとなくわかった。

「If you don't mind, would you like to come over for dinner at my place?(うちでよければ、ご飯食べていくかい?)」

 声色で何か聞かれているのはわかる。でも、肝心の内容がわからない。

 とりあえず、お礼。お礼を言わなければ。

「せ……」

 少し不安だが、通じるだろうか。

「……せんきゅー……」

 言った。言うだけ言った。

 通じなかったら、自分の発音が悪いだけ。

(はぁ……英語、勉強しなきゃなぁ……)

 密かにそう決めていると、相手の女性は嬉しそうにぐいっと顔を寄せて、瞳の手を両手でギュッと握った。

「!」

 何事かと、目を見開くと、キラキラと目を輝かせる女性が映る。

「Really?!I'm so happy.(本当かい!?嬉しいなぁ)」

 今までにないほどの声を聞くと、向こうの方を指差した。

 本当に先程の女性だろうか。助けてくれたのには変わりないが、クールなイメージが壊れかけている。

 瞳の様子には目もくれず話している。

 次々と出てくる言葉に、瞳はただぽかんと口を開けて固まっている。

 やがてそれにやっと気づいた女性が、瞳に手をふりふりと向けながら聞いた。

「Hey, are you okay? Hey(あれ、大丈夫かい?おーい)」

 固まり切った瞳には、そこまで見えていなかった。



「あーれ……どこ行った」

 星輝は空を引っ張りながら、瞳を探していた。

 横にずらされていたお面は、今は元に戻されていた。

 見つけづらくないのだろうか……

 空は少々呆れながら思った。

 先程まで人々に囲まれ、あたふたしていたのに、突然現れた女性に手を引かれ、ずんずんと人の波をくぐって行ったかと思えば、いつの間にか二人の姿が消えていた。

 簡単に言えば見失った。

「ねぇ星輝速い」

 後ろから引き寄せられるように強引に連れ回されていた空がそう呟いた。

 だが、星輝はそんな言葉聞こえるわけがないと言わんばかりにスルーする。

「さっきまでこの辺にいたよな?」

「少しは聞く耳もってよ」

 むぅっとしながら星輝を見つめるが、視線が合うことはない。

 諦めてそっぽを向くと、最近見かけた金色の綺麗な髪が、人々の隙間からちらりと過ぎていくのが見えた。

「あ……あ、あぁぁ!」

 一瞬呆然としたのち、ぐいぐいと星輝の服を引っ張って言った。

 その勢いに引っ張り所が悪かったからか、苦しそうな声が聞こえる。

「うっ……お、おい……首……くびやってるぅ……」

 フードが後ろに引っ張られ、首が締まってしまっている。

 だが、気づいていないのかお構いなしにさらに力を込める。

「うぎゅぅ……」

 だんだん声が弱々しくなっていく。

「いた!いたよ!せ——」

 そしてようやく星輝を見ると、震えるどころかピタリと固まってしまっていたひょっとこ男の姿があった。

「星輝!?」

 首を絞める服を手でギュッと押さえていたが、ガクンと垂れてしまった。

 パッと服から手を離すと、星輝の体が倒れるように斜めに傾いた。

 空が急いで支えると、ハッと下がっていた首をパッと上げた。

「今、何が起こったんだ……?」

「だ、大丈夫?」

 自分でやったことなのだが、確認は大事……うん。

「聞いてくれ。一瞬だけ殺されそうになる夢を見た」

「…………正夢まさゆめにならないようにね」

 苦笑いを浮かべながら、なんとも言えない気持ちでそう言った。

 どうやら、先程のことは夢として処理されたらしい。

 助かった、と言うべきなのか、心がすごく複雑だった。

 

 改めて星輝に瞳のような人物を見かけたと話すと、今度はちゃんと話を聞いて一緒に向かった。

 すると、案外簡単に見つけることができた。

 そそくさと瞳を連れ去った女性とお探しの瞳の姿を見つけた。

 何か問題に巻き込まれた様子ではなさそう……だが。

 女性は愉快そうに笑顔で話しているが、聞いている瞳はポカーンとしている。

 入った方が良いのか、良くないのか、なんか雰囲気が掴めない。

 そんな星輝の思いなど差し置いて、空が行動に出た。

「これ、どうす——」

 横を見た時には、もう見慣れたあのジャージ女の姿はなく、前に向き直ると恐ろしいほどの速さで、人の中を突っ切って行った。

 目を二、三回ほどぱちぱちさせると、はぁ……と肩を落としながらため息を吐いた。

「ほんっと……めんどくせ……」

 そうボソリと呟かれた言葉は、空に届くわけはない。

 仕方なく、星輝はあの中へと足を進めることにした。

 

遅くなって申し訳ありません!

今回も短くなってしまっていますが、気長に待ってくださると助かります。

今後もどうぞよろしくお願いします!

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