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理想の恋人  作者: 月樹
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6.スミレの彼女(魁皇視点)

基本、毎週土曜日12時の更新を目指しております。

極マレに変則更新もあります。

 彼女はスミレのように可憐で謙虚な人だ。


 どれほど謙虚かというと、まず新入生代表に選ばれるほど優秀なのに、『()()()()()』への誘いを頑なに辞退していたほどだ…。

 俺の横に立てるのは、その美しい容姿、優秀な頭脳、ともに彼女を差し置いて他にいないというのに、『自分のような、ありふれた者には勿体ない申し出です』と健気に断わっていたっけ…。


 本当は、少しでも俺と一緒にいたかっただろうに…。


 だから、俺の隣に相応しいのは彼女だけだと分かるよう、高貴な白薔薇を贈り続けた。

 遠慮して断りながらも、本当は嬉しかったのだろう…。

 ある日彼女がその白薔薇で作った、手製のポプリをくれた。

 もちろん、それは今も俺の寝室の枕元にある。


 俺の思いが伝わり、とうとう頑なだった彼女が生徒会に入ることを了承してくれた時は嬉しかった。

 恥ずかしがり屋な彼女は、きっと素直に認められないだろうと思ったから、全校集会で副会長の発表と同時に、俺の恋人である事も宣言しておいた。

 驚愕の表情で俺を見つめていたが、止めなかったという事は、きっと彼女も同じ思いだったのだろう…。

 それから俺達の交際は順調にスタートした。


 彼女は自分が庶民である事に引け目を感じていた。


 確かに、初めて彼女の家に招かれた時は驚いた。

 今にも壊れそうな年代物の木造建築に、うちの玄関ホールよりも狭い部屋。


 遠回しに『タワマンを買って欲しい』という、彼女の控え目なお強請りだと思った。

 手頃な物件を探していたら、時雨に『違うと思う…』と止められ、本人に確認しても『そうじゃない!!』と反対された。


 とりあえず、あんなセキュリティの整っていない木造建築に彼女を住まわせるのは心配だったから、他の部屋は全て買い上げ、うちの者に常時見張らせるようにした。


 そう言えば、彼女の家にいた弟も謙虚だった…。

 彼女に良く似た、とても美しい顔をした弟。

 この春からは完全実力主義の超難関校『海星志學館』に特待生として入学したと聞く。


 俺が『学費は全てこちらで負担するから、紫明学院に来い』と提案した時も、『そんな…いつまで続くご縁かも分からないのに、甘えられません…』と遠慮していたな。

 まあ、彼の頭脳なら、間違いなく京香と同じ特待生になれただろうが…。


『まだ学生の身で、自分の世話をしてくれている姉のために、将来は出世して、姉を幸せにしてあげたいのです』とその美しい顔を綻ばせ、語ってくれた。

 俺が『京香は俺が幸せにするから、安心して自分の行きたい道を進めば良い』と言ってやると、何故かどこからか一瞬殺気を感じたけれど…彼は姉に似た儚げな微笑みを返してくれた。


 俺には他に兄弟がいないので、何だか二人の関係が羨ましく思え、『どうせ将来はそうなるのだから、俺の事は兄と呼べばいい』と提案してやると、目を見張ってすごく驚いた顔をした。


 何故かその時も殺気を感じたけれど…。


 その俺の申し出に対しても『そんな未来は来ないので、烏滸がましくて呼べません…』と、伏し目がちに、その長い睫毛を震わせて答えていたな…。



『いつか弟にエスコートしてもらって、バージンロードを歩くのが夢なんです。

 …えっ…もちろん結婚するまで、婚前交渉なんて、不潔です…』

 と考えている清楚な彼女のため、俺達の交際はキスもまだという清い交際だ。



 まあ彼女の夢を叶えるためだ。性欲はその辺で適当に発散すれば良い。


 もちろん一度相手をしただけで勘違いしたり、京香にいらぬ嫉妬をしたり、子供が出来たなどのつまらぬ嘘で煩わされないよう、その辺の管理は時雨に任せているので完璧だ。  


 然し、最近そんな学院の不文律を弁えない、異物が混入してきたため、少々騒がしい事になっている。

 また、その異物、なまじ学院長の親戚のため排除が面倒だ。


 まだ今は京香も相手にしていないから良いが、彼女に害を及ぼすようなら…潰すか?

お読みいただきありがとうございます。


誤字脱字報告ありがとうございます。





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