42. 鬼瓦家(3)
『キョウカ、久しぶり…』
そう言って頭をかがめめて部屋に入ってきた彼女は、顔こそ確かに昔の面影があるけれど…
『ずいぶん背が高くなったのね…』
『うん…成長期だから…』
ポッと赤らめた頬に手を当て、恥ずかしそうにするアンジェラ。
確かに美少女顔なのは変わらないけれど…
180cmはある鴨居を、頭をかがめて入ってくるなんて…190cm以上あるんじゃないかな…?
『声も…少しハスキーになった…?』
『ちょっと風邪気味で…』
急にゴホゴホと激しく咳をしだすアンジェラ…。
『カツラ…ズレているよ…』
『・・・・』
先程、激しく咳ごんだ時に被ったカツラがズレておかしな状態になっていた…。
諦めたようにガバッとカツラを外すと、アンジェラは項垂れながらも、ポツポツと話し始めた。
『ごめん…実は僕、男なんだ…。キョウカが女の子の友達だと思って仲良くしてくれたから、なかなか言い出せなかった…』
『ううん。私が初めてアンジェラに会った時に、勝手に女の子と間違えて声掛けたから言い出せなくなったんだよね…。
あの時のアンジェラは本当に天使みたいな美少女だったから…私こそゴメンね…。
男の子ということは、きっと名前も違ったんでしょ…?』
「うん、本当の名前は、ヘンリー・タケル・ホワイト。
祖母が日本人だから、日本語も話せるんだ…」
そう言って、流暢な日本語で話し始めたヘンリー。
「そうだったんだ…。もしかして、弟の学校に来た留学生って…」
「うん。どうしても京香や尊に会いたくて…来ちゃった…」
顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうに下を向いて打ち明けるヘンリー…。
でも、騙されません…。
「子供の頃からずっと私達の盗撮をしていたって…本当?」
「京香達が日本に帰ってしまって寂しかったから…」
「たまに私物がなくなって、新しいものに代わっていることがあったんだけれど…」
「離れていると寂しくて…少しでも京香や尊の存在を感じていたくて…」
「まさか…身に着けている物にまで手を出していないよね…?というか、さっきから汗拭いているそのハンカチ…見覚えがあるんですけれど…」
「・・・・」
はい、有罪。
取り上げられると思ったのか、ヘンリーはすぐにハンカチをポケットにしまった。
ちなみに今のヘンリーの格好は、可愛らしい水色のゴスロリっぽいフリフリのワンピース姿なのに、顔は凛々しく、耳に掛かるくらいのサラサラ銀髪長身のイケメン姿なのが、かなりアンバランスな感じだ…。
「それで…どうしてこの屋敷にいるの?」
京香は話を聞き出すために、諸々を飲み込み、冷静に会話を続けた。
「鬼瓦家は僕にとっても親戚の家なんだ。だから、実は京香と僕は親戚になるんだよ」
私は今までその存在を知らなかった祖父母に誘拐されて、この屋敷に監禁されているのに、そんなことまるで無かったように嬉しそうに語るヘンリー…。
ここまで誰に止められることもなく入り込めるということは、彼は鬼瓦家の中でも、かなり中心にいる人物なのだろう…。
「あなたは私達を監視するために近づいたの?」
はぐらかされるかもしれないけれど…
あんなに優しくしてくれたアンジェラの好意が、私達を見張るためだけのものだったとは思いたくなかった。
アジア系の人間はいても、日本人が少ない土地で、いつも疎外感があった。
クラスでも遠巻きにされていて、自分達は異質なんだという思いは消えなかった。
そんな中、いつも笑顔で話し掛けてくれる天使のように可愛い女の子、アンジェラは京香にとって唯一人の信頼できる親友だった…。
そう言えば尊はあの当時から…
『見た目は綺麗だけれど…何かアイツの笑顔、下心があるように見えて胡散臭い…』
と敵視していたわね…。
当時は、何でこんな可愛い女の子にまで、そんな冷たい態度が取れるのかしら…?と思っていたけれど…
案外、第六感って侮れないのね…。
ヘンリーは何と言おうかと躊躇った後、ひと呼吸して人好きのする爽やかな笑顔を引っ込めた。
そうすると母国でいつも呼ばれている
『Ice Prince』の表情となり、一気に近寄り難い空気をかもし出した。
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