41. 鬼瓦家(2)
ミコトと呼ばれた尊大な男は、その青い目を眇めた。
「ミコトはアンタの可愛い孫の名前でしょ?僕は尊。
後継者の名前くらいちゃんと覚えてよ」
「まだお前を後継者と認めたわけでは…」
往生際悪く、言い返そうとする景虎を冷めた目で見つめながら、タケルはため息をついた。
「アンタが当主としての才能がないから、代々続いてきた鬼瓦家を傾かせ、没落寸前だったのを今の状態に戻したのは誰だと思っている?
もうすでにこの家の実権を握っているのは、この僕。だから…アンタが勝手に配下の者を動かして京香を攫ってきた情報もこうやってすぐ入る…」
隠密に動いたはずの自分の行動が、全て把握されていることに、景虎は動揺を隠せなかった…。
「どうせ…雅の代わりに京香をアクラム氏に渡せば、実権を取り戻せる…なんて浅はかなことを考えたんでしょ?
あの爺さん、いくつだと思っているんだよ…。表向きはともかく、もうあの家もとっくに代替りしているから、彼にそれほど力はない。
僕が何のために根回しして、アンタが壊したアクラム氏との関係を、その後継者である長男のアフマド氏の事業に協力することで取り戻したと思ってるの?
変に引っ掻き回して、余計な手間を掛けさせないでくれるかな〜」
「・・・・」
自分の目論見を見事看破され、こんな孫と変わらない年の若造に好き勝手言われる屈辱に、景虎は何も言えなくなった…。
「後は僕が動くから、爺さんは黙って見ていて。大人しくしていられるなら、一応こんなのでも京香やミコトと血が繋がっているから、お飾りの当主としての体裁は整えてあげる。
でも僕の邪魔をするようなら…潰すから…。婆さんにもよく言い聞かせておいてね…。次はない」
そう言ってタケルは振り返りもせず、部屋から出て行った。
〜・〜・〜・〜・〜
その頃…京香は…
自分の部屋と同じ作りなのに、全く異質な部屋の中で、居心地悪そうに現状を把握しようとしていた。
スマホは没収され、連絡することも出来ない。
(あ〜あ、あんなに言われたのに…まんまと罠にはまってしまって…
今頃みんな心配して、必死になって探してくれているんだろうな…)
そう思いながら最初に頭に浮かんだのは、自分を守ると言った時の真剣な魁皇の顔…。
今までの京香なら、間違いなく尊の顔が浮かんだと思うのに…自分でもそれが何故か分からなかった…。
トントン
そんなことをボーッと考えていたので、突然のノックの音に少しビックリした。
「はい…」
こんな時間に誰だろう…?と思ったけれど、自分の家ではないし、居留守を使ったところで、鍵は向こうから開けられるので返事をすると…
「入ってもいい…?」
祖母だとばかり思っていたけれど、遠慮深そうに尋ねてくるその声は思ったより若くて…ハスキーな声だった。
とりあえず誰か分からないけれど、囚われの身である自分に『NO』と言えるはずもなく…
「どうぞ…」
と答える京香の戸惑いが混じった返事に…
静かにドアを開け、入ってきたのは…
長い睫毛がおおうその伏せめがちな瞳に、懐かしい面影が残る銀髪に青い目の美少女だった…。
『アンジェラ…?』
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