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理想の恋人  作者: 月樹
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2.君の名は(陽一視点)

基本、毎週土曜日12時の更新を目指しております。

極マレに変則更新もあります。

 入学式前の講堂内は、ほとんどの生徒が顔見知りのため、春休み明けの再会を喜ぶ声や新しいクラス分けについて話す声でガヤガヤと賑わっている。


 そんな中、舞台袖で一人俯いて、用意した挨拶文を確認する生徒がいた。


「白藤君、大丈夫?緊張していない?」


 生徒会長の田宮陽一が声を掛けると、一瞬ビクッと肩を震わせたが、ゆっくりと顔を上げ、陽一だと認識すると、ふわりと花が咲くように微笑んだ。


「田宮会長、お気遣いいただきありがとうございます。会長にご指導いただき作成した文を間違えないように覚えるのに必死で、居られたことに気づかないなんて…申し訳ありません」


 今にも折れそうに儚げなのに、凛とした声は芯がしっかりしていて、しかも満開の桜のように柔らかい笑顔は見る者の心を魅了してやまない。


 陽一も彼女の笑顔に捕らわれた者の一人で、春休みに新入生代表として彼女を学院長から紹介されて以来、単なる後輩としてではなく、大変好ましい人物として彼女を見ていた。


 春休みに、学院長から新入生代表の子の補佐をしてあげて欲しいと呼ばれた時は、何事か?と奇異に思いながら学校に登校してきた。

 どうせ今回も、代表はあの二階堂魁皇が務めるはず。

 二階堂は先輩であろうと教師であろうと、自分が認める者以外に頭を下げるような人間ではない。

 陽一に対しては、一応生徒会の先輩ということで多少の敬意は払っていたが、それでも家柄が二階堂の方が上なので、尊敬されている訳ではなかった。

 その彼に、わざわざ陽一の補佐が必要とは思えない。


 いぶかりながらも依頼を断るわけにもいかず、学院長室のドアをノックして入ると、中にはいつもの太鼓腹を抱えた人の好さそうな学院長と、その横に見たこともない美少女が座っていた。


「田宮君、よく来てくれたね。とりあえず、こっち座って」


 好々爺然とした笑顔で手招かれ、陽一は二人の前の席に腰かけた。


 目の前の美少女はこの学校の制服を着ているから、うちの生徒なのだろう。でもこんな美少女、今までお目に掛かったことがない。

 真っ黒のロングストレートの髪は腰近くまであり、その髪に覆われた白く小さな顔はお人形か?というくらいすべすべのつるつるだ。

 おまけにほっぺはほんのりバラ色。くるんとカールした睫毛も、マッチ何本のるだろうか?というくらい長く濃い。

 その睫毛に縁取られた零れ落ちそうな黒いお目目は、本当に普通の人間か?少女漫画から出てきたんじゃない?と思えるくらいキラキラしている。


「彼女が今年の新入生代表の白藤京香さん。白藤さん、彼は高等部の生徒会長を務めている三年の田宮陽一君だ。

 わからないことや困った事があったら、彼に相談するといいよ」


 彼女が新入生代表?二階堂でなく??今年の新入生代表は顔で選んだのか?いやそんな筈はない。

 この学校は毎年代表は成績で決めるはずだ。


 陽一が一人悶々としているのに気付いた学院長は話を続けた。


「白藤さんは、高校からの編入生なんだけどね、本当に優秀で、内部の進級テストより難しいと言われる編入テストに満点で合格したんだ。

 これは創立以来の快挙と言われていて、初めてなんだよね。

 あの高名な第38代生徒会長、今の理事長の柴咲様でも惜しくも498点で今までトップだったからね」


 微笑みながら、穏やかに学院長は話しているけれど、それって本当にすごくない??

 こんなに人間離れした美少女の上に、頭まで超ド級なの?これは二階堂を抜くはずだ。


 あの男が絶対黙ってるはずがないと思うけど・・・。


 陽一は、この美少女の高校生活が穏やかに過ごせるよう、できる限り尽力しようと心に誓った。

お読みいただきありがとうございます。


誤字脱字報告ありがとうございます。


次回から、やっと主人公ターンになります。

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