34. 体育祭(2)
開会式が終わった後は何故か、いつも以上に周りに人がいる状態になった。
何事かと思ったら…開会式の間に、尊から魁皇に鬼瓦家の者が学園に潜伏しているという情報が入ったらしい…。
今は魁皇が先生との打ち合わせで抜けているため、田中君と天馬君が私の側にいてくれているのだけれど…
この二人、微妙に相性が悪いのよね…
「え〜っと、山田君だっけ…?」
「田中だ…」
「ごめんごめん…ありふれた名前だったと覚えてたから、間違えちゃった」
あれだけ仕事ができる天馬君が覚えてないなんてありえない…絶対にわざとだ…。
何か2人の間に挟まれていると、まだまだ日は暑いはずなのに、冷蔵庫の中にいるみたい…。
「佐藤君は何に出るの?」
「・・・・」
また…わざと煽ってる…。本当に天馬くんこんなに自分の欲望に忠実で、護衛が務まるのかしら?
「翔…田中君に絡むのは止めろ。
彼は根っからの武道家だから、お前の挑発には乗らない」
日下部くんが呆れたように天馬くんを諌めた。
「姫は何に出ますか?」
一応本家の日下部くんに言われたので、田中君を挑発するのを諦めた天馬くんは、今度は私に話を振ってきた。
「私は借り物競争と大玉転がしよ」
「借り物競争なんだ〜。お題が好きな人の時は、僕のところに来てくれても良いですよ♡」
そう言ってウィンクする天馬くんに、周りの女子達から悲鳴が上がる…。
何気に、天馬くんも田中くんも日下部くんも、人気が高い人達だから…さっきから女子達の視線がすごく刺さっているのよね…。
「天馬君は何に出るの?」
気を紛らすように尋ねると…
「え〜っ、そんなに気になります?」
「…別に…」
「反応が冷たい〜!どうして僕にだけ塩対応なんですか?」
胡散臭いからです…。
「田中君、日下部君は何に出るの?」
天馬君はほっといて、他の二人に尋ねてみる。
「私は綱引きとクラブ対抗リレーと騎馬戦です」と田中君。
「僕は白藤さんと同じ大玉転がしと玉入れだよ」と日下部君。
「田中君はまんま力技の競技だし、時雨君は昔から走るの苦手だものね」
少し小馬鹿にしたようにそう言う天馬君は、いかにも走るのが速そう…。特に逃げ足とか…。
「そう言う天馬も、走りでは俺に勝てたことがないだろう?」
確認を終え戻って来た魁皇も、会話に加わってきた。
「若が早すぎるだけです。若はリレーに出場されるのですか?」
「ああ。俺はリレーと騎馬戦だ。たぶん天馬もだろ?」
「そうです」
「そうなると…騎馬戦の時は誰も姫を護衛できる者がいなくなりますね…」
天馬君の中で、日下部君は護衛としてのカウントには入っていないらしい…。
「私が他の者と競技を変更してもらいましょう」
「いやいや田中君…君、A組の大将でしょ?君が交代したらみんなが困るから…」
何の迷いもなく、クラスメイトのところに行こうとする田中君を、日下部君が焦って止めた。
「じゃあ、天馬、お前が交代したらどうだ?」そう言う魁皇に…
「えっ…絶対嫌です。僕、若と本気でやり合いたいので…」
天馬は主にもNOと言える日本人だった。
「学校の中だし…他の人達と一緒に行動するし、騎馬戦の間くらい大丈夫だよ…。
こんな観客がいっぱいいて警備の人もいる場所で、何か仕掛けるなんて…さすがに無理だから…」
結局、登録通り、みんな騎馬戦に出て、私は大人しく本部席で応援していることになった。
後に、人は私を一級フラグ建築と呼ぶようになる…。
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