26.月が綺麗ですね(4)
天馬くんに家まで送り届けてもらった後、魁皇に連絡をした。
家に着いてスマホを確認したら、何件も留守電が入っていたから…
たぶん普通なら帰宅してるはずの時間になっても、私から帰宅の知らせがなかったから心配したのかな…?
(実際は京香のカバンに取り付けているGPSが、自宅ではない地点で停止したまま動かなかったからです…)
今日、天馬くんと一緒に撮影したポスターは、関西限定で販売されるジェンダーレスの香水のものだった。
そのため、こちらで出回ることはないと思うけれど…念の為これも伝えておいたほうが良いよね…。うぅ…怒られそう…
『事情は分かった…とりあえず京香に何の問題もなくて良かった…。
…明日朝は迎えに行くから…
…ああ、じゃあ気をつけて……』
もっと説教されるかと思ったけれど…思いの外、あっさりと解放された…。
とりあえず、今日は慣れないことをして疲れたから、ご飯を食べたら早めにお風呂に入って早く寝ようっと…。
〜・〜・〜・〜・〜
その頃、二階堂家の応接間では…
「おい、天馬…お前、ワザとだろう…?」
人を殺しそうな眼差しで、睨みあげる魁皇に対して、ヘラヘラと笑顔で応える天馬…。
「え〜っ、濡れ衣ですよ〜。たまたま若がボスに呼ばれたタイミングで、運悪くピンチヒッターを頼まれただけで…」
「お前が護衛していて、そんな偶然が重なるはずないだろう…」
魁皇の剣呑な雰囲気も物ともせず、ノラリクラリとかわし、黙って視線をぶつけ合うこと数秒…。
先に降参したのは天馬だった。
それまでの胡散臭い笑みが嘘のように真顔になると…
「二階堂の姫が、ただ綺麗なだけの守られてばかりのお人形では困るのですよ…。
しかも…厄介な鬼瓦家の人間だなんて…。
あの容姿があってもプラマイ、マイナスです。
綺麗なだけの女性なら、他にももっと貴方に相応しい人間がいるでしょ?」
また暫く黙って睨み合った後…
「で…真意は?」
改めて、魁皇が問い掛けると…
「逃げ回ってるよりも、堂々とやり合ったほうが面白いから…?
一度、暗躍の鬼瓦と情報戦で戦ってみたかったんですよね〜」
ヘラヘラと心底楽しそうに答える部下に、思わずため息がこぼれる…。
この男の行動基準は、自分が面白いか退屈かの二択。
面白いを追求するためには、主家の意向なんて二の次、三の次だ…。
「お前のことだから、そんなことだと思った…」
間違っても主家のため…なんて理由で動く男ではないので、思った通りすぎてガッカリする…。
「あっ…でもさっき言ったことも嘘ではありませんよ。私は意外と二階堂家に仕えて働くことを気に入っているので…その妨げになるような姫ならお呼びじゃないので…」
それが本心からの言葉なのか?はたまた遊びの一種なのか?捉えどころのない男に釘を刺す。
「京香が二階堂の人間となるのに、お前の承諾など必要ない。これは当主も認めている、二階堂家の総意だ」
主として命令を下す表情で、そう申し付けると…
「畏まりました」
真顔に戻り、そう応えたが…
この男がどこまでコチラの言うことを聞くのか…
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