24.月が綺麗ですね(2)
「父の仕事の都合で、この学園に転校して来ることになった天馬翔です。よろしくお願いします」
そう言って転校生が自己紹介した途端…
「「「「「キャーッ!!天馬翔!!本物!?」」」」」
何故か…凄い歓声が起こった…。
「え〜っと、本物です。モデルの仕事をしているので、ご存知の方もいるかもしれませんが、学友として遠巻きにせず、仲良くしてもらえると嬉しいな」
そう言って彼が微笑むと…
「「「「「キャーッ!!」」」」」
また凄い悲鳴のような歓声が起こった…。
(確かに…背が高くて、整った顔をしているけれど…普段、尊とか魁皇とか…国宝級の顔を見慣れているので、驚きが少ないわ…)
「席は後ろの空いている席の…村田の隣で…」
亮ちゃんがクラスを見渡して、転校生にそう言ったので、後ろの席の村田君が分かるように手を挙げて合図してくれると…
「あっ、僕…視力が悪いので…君、席を交代してくれないかな?」
困った顔をしながら転校生は、何故か隣の田中君に席を代わってくれるようお願いした…。
ちなみに私と田中君の席は、右端の前から5列目とどちらかというと後方の席…
「「・・・・」」
しばらく無言のせめぎ合いが続いた後、いたたまれなくなった前の方に座る飯塚君が、「僕が代わるよ」と申し出てくれた。
飯塚君の申し出にホッとした亮ちゃんは、
「飯塚ありがとう。じゃあ天馬はここ座って…」
と教卓前の席を指定した。
さすがに転校生も、親切心で言ってくれた申し出を断ることは出来なかったようで…『ありがとう』と飯塚君に伝えると、大人しく教卓前の席に座った。
(何だろう…鬼瓦家の暗躍の話を聞いた後だと、みんな怪しく見えてくるわ…。
とりあえず用心するに越したことはないと思うけれど…)
昼休みになると、転校生の騒ぎが耳に入ったのか…魁皇から生徒会室に来るよう呼び出された。
田中君も一緒にとのことだったので、二人で生徒会室に向かい入室すると…
何故か転校生がすでに来ており、魁皇の向かいに座っていた。
私達が入ってきたのを認めると、私には魁皇の隣、田中君には転校生の隣に座るよう促した。四人がけのソファのため、日下部君は魁皇の後ろに立って控えている。
最初に声を発したのは、魁皇だった。
「お前…時雨のところの天馬か?」
「若、ご無沙汰しております」
(えっ…まさかの知り合い?)
「こいつは、日下部の分家の、天馬家の長男だ。時雨とは従兄弟になる。
年齢が同じため、子供の頃何度か顔を合わたことがある…」
どうやら、謎の転校生は日下部君の親戚だったらしい…。
「こんな時期に転校してくるなんて…父上の差し金か?」
「いいえ、本家の…清時様から、若の大切な姫をお守りするようにとの命を受け、転校して参りました。
この度はご婚約おめでとうございます」
何も事情を知らない田中君が、珍しく驚いた表情で私達二人を見た後、またいつもの無表情に戻った。
「天馬、その件はまたちゃんとした形でお披露目する予定だから、それまでは内密にと言われなかったか…?」
魁皇が呆れて睨むと…
「申し訳ございません。喜びのあまり、先走りました」
そう謝る転校生の顔は、全然悪びれていなかった…。
何を考えているのかが分からず、思わずじっと見てしまうと…
「そんな熱い眼差しで見つめられると照れますね…。モデルをしているから、他人に見られるのは慣れていますが…こんな美しい人に見つめられることはそうありませんから…」
転校生は嬉しそうに微笑みかけてきた…。
「京香、天馬のことは気にしなくていい…。
こいつのコレは別に深い意図があってしているわけではない…。
こんな無害で優しそうな顔をしているが、昔から自分が面白い!!と思うことに首を突っ込んで、思い切り引っかき回すのが好きなだけだから…」
(それって…最悪に面倒くさい性格なのでは…?この大変な時に、どうしてそんな厄介な人物を投入したの…?)
私の疑問を察した魁皇が、こそっと耳打ちした。
「性格はアレだけど…護衛としての実力は一族の中でも一、二を争う、手練なんだ…」
つまり性格は難ありだけれど…安全のために側にいるのは、我慢しなさいということ?
「分かりました」
私が渋々了承すると…
「じゃあ、やっぱり僕が姫の隣の席に移動しても良いかな?」
いい笑顔で引っ掻き回す気いっぱいの転校生に…思わず、
「絶対嫌だ…」
素直な気持ちが、思わず口から出てしまいました…。
「天馬…こう見えて田中は空手全国大会一位の猛者だ…」
しばらく転校生と田中君の間で沈黙の戦いが続いた後…転校生は頷きあきらめた。
〜Winner 田中 充 〜
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