23.月が綺麗ですね(1)
無事三泊四日の北海道旅行を終え、行きと同じリムジンで家に帰ってきた。沢山のお土産と共に…。
あちらで用意してもらった洋服は全て私のためのものだそうだけれど…『うちにこんな上等な服を保管する場所はありません!!』と言ったら、手入れが必要な服はママンが保管しておいてくれることになった…。
今回着ることのなかった、あのゴージャスな服を着る機会なんて来るのかしら?
魁皇のご両親は本当に多忙で、あの晩餐以降は会うことが出来なかったけれど、色々と詰め込まれた…とても濃い時間だった…。
帰宅するなり、尊から質問攻めで洗いざらい吐かされ精根尽き果てていたけれど…とりあえず魁皇のお父さんに聞いたうちの両親の実家のことだけは、ちゃんと話し合っておかなければならなかった…。
「ふーん、鬼瓦家ね…。それで…京香はまさかそれに対抗するために二階堂と結婚するつもり…?」
ギクッ!!
「誘拐されるように行ったはずなのに、随分楽しそうに帰ってきたね。北海道土産も沢山持って帰ってきて…。
あっ…そう言えば、京香が帰ってくる前に、チルド便で魚介類とメロンも届いていたよ。二階堂家当主ご夫妻から…」
何でだろう…。すごく良い笑顔なのに、黒い何かが漏れ出ている…。
「いつの間にアレの両親からも気に入られているのかな…。でっ、そのことについて僕に何か説明することはある?」
笑顔なのに目が笑っていないという器用な表情で追いつめられ、北海道で正式な婚約証書を作成したことを白状させられた。
これはもし万が一、鬼瓦家が関与してきた時に、二階堂家が正々堂々と介入するためにとった措置なので、尊には黙っているつもりだったのに…。
「全くもって不愉快だけれど、実際まだ学生の身の僕には対抗できる手段がない…。
今ほど自分に力がないことを恨めしいと思ったことはないよ。
まだ婚姻ではなく、婚約だから…いつでも白紙に戻せるけれど…。
不本意ながら…今回は二階堂の力を借りよう…。僕は僕で、鬼瓦家について調べてみるよ」
そういうと尊は、いつも鬱陶しいくらい構ってくるのが嘘のように、自分の部屋に引きこもってしまった…。
(せっかく2人で食べようと思って、海鮮弁当買ってきたのにな…)
私は二人で分け合って食べようと思って買った鮭イクラ弁当とホタテ弁当を冷蔵庫に片付けた。
〜・〜・〜・〜・〜
それから尊は、バイトに行かない時はずっと部屋に籠もり何かを調べていて…と思ったら、突然出掛けて行ったりで、結局一緒に過ごす時間がないまま夏休みが終わり、寮へと帰って行った。
(とうとう、あの尊にも姉離れの時期がやってきたのかしら?
成長を喜ぶべきなんだろうけど…ちょっと淋しいな…)
そして新学期が始まり…
「おはよう。みんな夏休みはどう過ごした?田中は全国大会優勝おめでとう」
亮ちゃんがいつもの調子で挨拶をし、またいつもの日常が始まる。
「田中君、全国大会優勝なんて、すごいね。おめでとう」
「ありがとうございます」
田中君のポーカーフェイスも通常通りだ。
でも…何かソワソワするというか…変な胸騒ぎがするのよね…。
「新学期早々ですが、みなさんにお知らせがあります。
今日からこのクラスに新しい仲間が増えることになりました。
天馬、みんなに紹介するから入ってきて」
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