22.ドキドキの夏休みin北海道(6)
「えっ…!?」
お父さんとお母さんが紫明学院の卒業生で、魁皇のお父さんの同級生だったなんて…。
「君のお父さんの山田太郎は一般家庭の出身で奨学生だったから、隣のクラスだったけれど、お母さんの鬼瓦雅は私と同じS組だった。
鬼瓦家は平安時代まで歴史が遡れる…ある意味名家だからね…。
君のお父さんはA組だけれど、とても優秀な人で…私達は同じ生徒会に所属していたんだ。
私が生徒会長で、雅が副会長、太郎は会計をしていた。
よく生徒会のみんなで意見を交わしたから、君のご両親のことはよく覚えているよ…」
(どうしよう…初めて聞く両親の過去…
ツッコミどころ満載なんですけど!?)
「父上…山田と鬼瓦では、京香の名字の白藤と異なるのですが…」
(確かに、私もそれが一番気になりました…。)
「白藤は、当時S組の担任だった…今は学院長をされている野々宮先生の奥さんの実家の姓なんだ…。
追いつめられた二人が駆け落ちしようと決めた時に、雅の担任で生徒会顧問でもあった野々宮先生が、密かに協力してくれた。
何せ鬼瓦家が総力を挙げて捜査しだしたら、名を変えるくらいしないと逃げられなかったからね…。
京香さんの祖父母の家なのに、こんなことを告げるのは気後れするけれど…知っておいた方が良いだろう…。
鬼瓦家は、昔から暗中飛躍を得意とする家でね…目的のためには、どんな汚い手でも迷いなく使う家なんだ…」
(魁皇のお父さんにそんな渋い顔をさせるほど、酷い家なのね…。お母さんが、話したがらなかったはずだわ…)
「あの昼行灯のような学院長が、そんな危険を冒してまで、生徒を守るために動くなんて思わなかったな…」
魁皇はほんわかおっとりした学院長先生の思わぬ行動にビックリしたようだ…。
「今では随分落ち着かれたけれど、あの頃の野々宮先生はとても熱心な先生で、いつも生徒達に寄り添って最善を考え、行動してくれる先生だったよ」
きっとすごく良い思い出がいっぱいあるのだろう…お父さんは懐かしむように話してくれた。
「私が日本に撮影で来ていたマリアンヌに一目惚れして、フランスまで追いかけた時も、先生は応援してくれてね…」
(ママンの名前、マリアンヌさんだったんだ…。一目惚れでフランスまで追いかけるなんて、さぞや情熱的な恋をされたのね…)
「こうやって私が妻と結婚できたのも、野々宮先生のアドバイスがあったからだ…」
そう言ってお父さんは誇らしげに、ママンの肩を抱き寄せた。
「父上…それはどんなアドバイスだったのですか?」
両親の馴れ初めに、魁皇が少し興味を持ったらしい…
「私にはマリアンヌと出会うまで、曜日ごとに異なる恋人がいたのだが、野々宮先生に『そんな中途半端な状態で行っても、振られて帰ってくるだけだ!!』と叱られてね…」
(やっぱり蛙の子は蛙ね…噛みしめるように言っているけれど、それ当たり前のことですから…)
「そらからすぐ、私はそれぞれの曜日の恋人達に別れを告げた。金曜日の恋人はとても気性の激しい女性だったから、思い切り殴られてね…私はその腫れた顔のまま、マリアンヌに会いに行ったんだ…。そうしたら、とても驚かれて理由を聞かれて…私が全ての恋人と別れ、身を綺麗にしてから会いに来たことを告げると『正直な人』と呆れられたけれど…受け入れてくれた。
あの時の先生の忠告がなかったら、今頃私達は結ばれていなかったと思う…魁皇は大丈夫なのか?」
お父さんが魁皇を見つめる瞳には、猜疑の色が混じっている。
「もちろんです。私は京香一筋ですから」
それに対し、笑顔で何のためらいもなく応える魁皇…嘘ばっかり…。
「カイオウ、オンナニハ、オトコガツクウソナンテ、スグ二バレルノヨ…」
良い笑顔で釘を刺すママンにも、魁皇は普通に微笑んで頷いた。
(あれっ?そういえば最近、魁皇が他の女性と一緒にいるのを見かけていない…?)
「父上、ママン、私が今まで女性をお二人に紹介したことがありますか?」
真剣な表情で尋ねる魁皇に…
「無いな…」
「ハジメテネ…」
何故かそれで、二人とも納得してしまった。
「魁皇、本気で京香さんと結婚したいのなら、お前も覚悟を決めて彼女を守らなければならない…。
鬼瓦家は狡猾だ…たぶん本家は、もう彼女の存在に気づいているぞ」
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