19.ドキドキの夏休みin北海道(3)
「アナタガウチノカワイイテンシヲタラシコンダドロボウネコネ?アイタカッタワ♡」
「???」
すごく迫力のある笑顔で、呪文のような何かを言われたけれど…カタコトの棒読みで意味が理解できなかった…。
…テンシ…?ドロボウネコ…?
最後だけ親しみを込めて『アイタカッタワ♡』だったのは何故…?
私が理由がわからず、何も答えられない状態で戸惑っていたら…
「ママン…それ…誰に教わったの?」
魁皇が呆れたように、お母さんに尋ねた。
「エッ…ナニカオカシカッタ?
ハジメテカイオウノカノジョヲショウカイシテモラウカラ、コウインショウヲモッテモラエルアイサツヲ、ミュゲ二オシエテモラッタノダケレド…」
えっ…絶対違うでしょう…?
「ミューのいたずらか…。ママン、それは好印象どころか、絶対使っては駄目な挨拶だ…。
変にカッコつけようとせず普通で良いよ。
京香は英語はもちろん、最近はフランス語も学び始めているから、言葉には困らないから…」
そうなのだ…。もともと英語は働く時に役立つと思って身につけていたのだけれど、最近では魁皇のところから家庭教師の人が送られてきて、フランス語まで学ばされている。
まあ語学は身につけて損になるものではないから、有り難く無償で教わっている。
「ソウダッタノネ…。ミュゲニモコマッタモノネ…。ゴメンナサイ」
大輪の薔薇がシュンと萎んだようになってしまったので、私は慌てて言葉を掛けた。
「いえいえ、気になさらないでください。
あらためまして、白藤京香と申します。
突然お邪魔したにもかかわらず、素敵なお部屋やお洋服をご用意いただきありがとうございます」
私が笑顔で挨拶をすると…
ギュッ!!
魁皇のママンに思い切り抱きしめられた…。
さすが現役モデル…背が高〜い。華奢なのに筋肉質…。すごくいい匂い〜。
と五感で、歓迎されていることを感じることができた…。
魁皇の方に振り向いたママンは…
『何、この完璧な娘は!!見た目は妖精のように儚げで美しく、頭脳は優秀、すぐに動ける行動力もあり…気遣いも出来て、性格の良さも完璧!!こんないい娘、逃がしたら駄目よ。絶対うちの嫁にするのよ!!』
とフランス語で早口にまくし立てたので、何を言っているのか、まったく聞き取れなかった…。
『もちろん…逃がすつもりはない!!』
魁皇も笑顔でママンに応えていたけれど…
これまた、早口で聞き取れない…。
いくら北海道といっても、真夏なのに一瞬寒気がしたのはどうしてかしら…?
とりあえず…帰ったらフランス語のリスニングをもう少し強化してもらおうと思った…。
その後昼食は日本語、英語、フランス語を交え楽しくお話しながら、順調に進んだ。
今度は、私にも聞き取れるようにゆっくりと話してもらえたので、フランス語の会話にも問題なく加われた。
「キョウカハ、テーブルマナーモカンペキネ」
ママンが優雅に食後の紅茶を楽しみながら、褒めてくれた。
マナーに関しては、生前母が躾けてくれたものだ…。
詳しいことを教えてもらう前に、両親は亡くなってしまったけれど…母は割と名門の家の出身だったらしい…。
どういう経緯でかは知らないけれど父と駆け落ちしたので、二人とも実家とは縁が切れていると言っていた。
だから両親が亡くなった時、誰にも頼ることが出来ず、私と尊は二人きりで生きていかなければならなくなった…。
まあ、隣家だった高階家の皆さんが助けてくれたから、どうにかなったんだけれど…。
「アラ…ワタシ、マタ…ナニカシツゲンヲシタ?」
私の手が止まってしまったので、ママンに気を遣わせてしまった…。
「いいえ…私にマナーを教えてくれたのは母なのですが…両親は三年前に交通事故で亡くなっているものですから…ついその事を思い出してしまって…」
私が場をしんみりさせないように、笑顔でそう語ると…
「ナニモシラナクテ…ツライコトヲオモイダサセテ、ゴメンナサイ…。
キョウカガ、コンナヨイコナノダカラ、キットスバラシイゴリョウシンダッタノネ…」
ママンがまたギュッと抱きしめてくれた。
「ホントウノママニハ、ナレナイケレド…ワタシヲ、ママトオモッテ、エンリョナクアマエテキテネ」
まったく別人なのに…ママンからはお母さんと同じ、温かい優しい匂いがした。
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