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16.5 女の子で過ごす一日!?あの日焼け跡が消えるまで

 目を覚ますと、長い髪がふわりと肩に触れた。


(そっか……昨日、水着を脱いでも戻らなかったんだっけ……)


 ため息をつきながら荷物を開けると、ぼくは息を呑んだ。


(ええっ!? これって全部女の子の服!?)


 そこにはフリル付きのキャミソール、パステルグリーンのミニスカート、ニーソックスにレースの下着まで揃っている。


 どう考えても、3人の仕業だ。


「ひかりお姉ちゃん、おはよ~」


 突然、かなたちゃんが部屋に入ってくる。


「あ、ちょっと! 今入ってこないで!」


 ぼくは慌てて胸元を隠したけど、彼女はクスクス笑うだけだ。


「あれ? ひかりお姉ちゃん、まだ日焼け跡残ってるね?」


 鏡を見ると、ビキニの日焼け跡が胸元にくっきりと残っている。


 ブラを身に着けると、肩紐がちょうど跡に重なり、生々しくて顔が熱くなった。


(もう、これ恥ずかしすぎるよ……!)




 キャミソールとミニスカートに着替えてリビングへ足を踏み入れると、みんながじっとこちらを見ている。


「わぁ、ひかりさん……すごくかわいいですわ!」

 

 まどかちゃんが感嘆する。


「ほんとに女の子だね……」

 

 つむぎさんも驚いたように微笑む。


 かなたちゃんが楽しげに拍手をする。


「ひかりお姉ちゃん、めっちゃ似合ってる!」


「そ、そんなに見ないで……恥ずかしいからっ!」


 思わず両手でスカートの裾を抑えると、みんながますます微笑ましそうに笑った。




 そのあと、みんなで料理をすることになった。


「ひかりさん、お皿を出してもらえますか?」


 まどかちゃんに言われて、高い棚の前に立った。


(あれ?届かない……)


 いつもより小柄になった身体は、高い場所に届かない。


 背伸びをした瞬間、スカートの裾がふわっと揺れ、ぼくの太ももがみんなに晒されてしまう。


「……っ!」


 振り返ると、三人が息を呑んでこちらを見ていた。


「あ、あの、手伝ってくれない……?」


 恥ずかしくて小さな声で頼むと、つむぎさんが優しく微笑んでお皿を取ってくれた。


「ひかりちゃん、なんだか妹みたいで可愛いよ」


「も、もう……! そんなこと言わないで……!」




 食事の準備が終わってテーブルで休んでいると、暑くなってきたので無意識に長い髪をまとめようとしていた。


 髪をゆるくまとめ、無意識に髪留めでアップに結んだ。


 首筋に風が当たって、涼しく感じる。


「ひかりお姉ちゃん、それ反則……!」


 かなたちゃんが声を上げる。


「えっ、何が?」


「髪を結ぶ仕草が、あまりにも女の子らしくてかわいいってことですわよ?」


 まどかちゃんが微笑みながら答える。


「本当に無自覚なんだね……」


 つむぎさんも呆れたように笑った。


(うう……ただ暑かっただけなのに……!)




 夜になり、一人でお風呂に入った。鏡に映る女の子の自分が恥ずかしくて仕方ない。


(ぼく、本当に女の子の身体になってるんだ……)


 日焼け跡もくっきりと残っている。


 恥ずかしくて、鏡から視線をそらす。


(こんなの直視できないよ……!)


 それでも、自分の中で女の子になってしまった事実を徐々に受け入れていることに気づき、心臓がドキドキした。




 風がやさしく髪を揺らす。


 満天の星空を見上げながら、ぼくはぼんやりと考えていた。


「ひかりさん、ここにいらしたのですね」


 背後から、まどかちゃんの優しい声が聞こえた。


「……まどかちゃん」


 振り返ると、まどかちゃんの横には、つむぎさんとかなたちゃんもいる。


 つむぎさんがふっと微笑んで言った。


「ひかりちゃん、今日は一日お疲れさま。色々大変だったよね」


「うん……正直、大変だったけど……」


 ぼくは照れ笑いを浮かべる。


「でもね……本当にありがとう。なんだか、みんなのおかげで安心したよ」


 すると、かなたちゃんが元気に笑う。


「だって、わたしたちは家族みたいなものだもん!どんなひかりお姉ちゃんでも大好きだよ!」


「かなたちゃん……」


 まどかちゃんも優しく微笑む。


「ひかりさんが女の子でも男の子でも、わたくしたちにとっては変わりませんわ。どんなあなたでも大切な存在ですから」


 その言葉が胸に沁みて、視界が少し滲む。


「ありがとう、みんな……」


 つむぎさんが、ふと真面目な表情になって尋ねてくる。


「でも……正直、ひかりちゃんは不安だったんじゃない?女の子のまま戻れないなんて、怖くなかった?」


 ぼくは一瞬考え、静かに答えた。


「確かに、不安だった。ぼく、このまま戻れなかったらどうしようって。でも、みんながいてくれて……救われた」


 三人が静かにうなずいてくれる。


「ひかりさん……それなら、よかったですわ」


 まどかちゃんがそっと近寄って、ぼくの肩を優しく抱いてくれる。


「ありがとう、みんな。今日、女の子として過ごしてみて、少しだけわかった気がするんだ。自分に何が起きても、みんなと一緒なら、きっと大丈夫って……」


 つむぎさんが優しく頷いた。


「うん、何があっても私たちはひかりちゃんの味方だよ。絶対に離れないからね」


 胸がじわりと温かくなった。


 今までの不安が、三人の言葉でゆっくりと溶けていくような感覚。


 ふと、ぼくは夜空を見上げる。


 波の音が心地よく響き、ぼくは自然と静かな表情で物思いにふけってしまう。


(このまま、女の子で過ごす日がまた来るかもしれない……でも、きっと大丈夫。みんながいれば――)


 カシャッ。


 突然のシャッター音に、ぼくは我に返った。


「ちょ、ちょっと!?今、写真撮った!?」


 見ると、かなたちゃんが満面の笑みでスマホを構えている。


「ひかりお姉ちゃんの物思いにふける姿、めっちゃかわいいから撮っちゃった!」


「え、ええっ!?消してよ、それ、恥ずかしい……!!」


 慌てて顔を隠そうとするけど、もう遅い。


「ふふっ、この写真、永久保存版にしましょうね?」


 まどかちゃんもにっこり微笑む。


 真っ赤になって慌てるぼくを見て、みんなは楽しそうに笑う。


 そんなに恥ずかしいのに――


 不思議と嫌な気分じゃなくて、胸の中がポカポカと温かくなる。


 この時間が、いつまでも続けばいいのに。


 そう思ってしまう自分に驚きながらも、ぼくは小さく微笑んでしまったのだった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は一息つく回ということで、女の子で過ごしちゃうひかりくんの一日でした。


次回は金曜日に更新の予定です。お楽しみに!

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