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おしどり夫婦のお料理事件簿〜小さな謎とダイニング・メッセージ〜  作者: 地野千塩


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菜の花サンドイッチの教訓(5)

 飯島は、あの一件以来、新しい仕事を精力的に受けているという。飯島が書きたかったファンタジーやSFはしばらく書けないというが、それでも楽しそうだ。


 それの元々飯島は会社も経営していて、そちらでも大きな案件が入り、忙しそうだった。忙しすぎるのは大変だが、そうしている内に、不平や不満も消えてきたようだった。


 最近はまた手作りクッキーをもらった。いやいや始めたというよりは、可愛らしいパンダやうさぎ、クマなどの本格的アイシングクッキーを貰ってしまい、美玖は大喜びではしゃいでいた。


 今日も三時のおやつの時間に、コーヒーと一緒に飯島が作ったアイシングクッキーを頂く事になった。


「このウサギのアイシングクッキーもよく出来ているわねぇ。可愛いけど、飯島さんって凝り性なの?」

「まあ、一度始めたら、とことん追求するタイプだね。作家だが、研究職タイプだよ、あいつは」


 苦いコーヒーとともに楽しみアイシングクッキーは、甘すぎず、美味しく感じてしまう。


『まあ、料理男子とかジェンダーレス男子とか言う流行は理解できんが、クッキー作りは案外楽しい。これも作品に活かすか。書きたくはないが、実際に書いてみないとわからない事もあるだろう。食わず嫌いは良くない』


 クッキーを噛み締めながら、飯島の想いは明るく前向きなものに変わっていて、朔太郎は安堵していた。


 一時は本当に心配していたものだが、この調子だったら、大丈夫だろう。朔太郎も新しい企画を練りながら、前向きだった。本当は新しい企画も乗り気ではないが、やはり新しい事をしていると、脳が冴えるというか、頭の回転も早くなったような気がしていた。当分は認知症の心配もないだろう。


「ところで、今日の夕飯は何?」

「菜の花の焼きそばよ」

「菜の花か……。美味しいけど、ちょっと飽きてきたかな?」

「大丈夫。今日で菜の花祭りは終わりよ。卵も昨日スペインオムレツ作ったので、全部食べ切ったから」

「それはよかったよ」


 朔太郎は苦いきコーヒーを啜りながら、胸を撫で下ろしていた。どんなに美味しい菜の花でも、連日続きくと飽きるものだ。そろそろ飽きてくる前に、な菜の花が消費できた事は喜ばしい事だ。


「卵はともかく、菜の花も来年まで食べられないからね。今の旬の料理も楽しもう」

「そうだな。思えば菜の花って今の時期だけだよな」


 再び苦いコーヒーを啜ると、夫婦は春らしい明るい顔で笑っていた。

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