表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おしどり夫婦のお料理事件簿〜小さな謎とダイニング・メッセージ〜  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/57

メシマズ嫁の愛し方(5)

 あの花見の日以来、富沢夫婦はすっかり仲直りしたらしい。


 宮子も料理がプレッシャーだったと正直に告白し、今はたまに外食をしながら緩くやっていく事に決めたそう。レシピブックも簡単なものに買い換え、レンジやクイック調味料、ミールキットなどを活用という。


 それでも宮子は美玖と連絡を取り合ううちに、楽しく料理をしてみたいと思ったそうだ。ドライカレーも美玖からレシピを教えて貰い、干しレーズン入りのものにしているという。


「まあ、お雑煮に餡子餅とか、ポテサラに林檎とかも、まあ、いいかなって思うよな。別に死ぬわけじゃないし、雑煮も一年に一回だし。美玖さんによれば、あのドライカレーのように惣菜系に果物入れるのも別にそんなに珍しいわけでもないらしいしなぁ」


 後に富沢から連絡をもらったが、もう妻の料理で悩んでいる雰囲気はない。朗らかで落ち着いたた声で、以前のような軽薄さもすっかり消えていた。


「宮子の料理は、別に今もたいして美味しくないけど、慣れてきたかもな」

「そうだよ。家庭料理ってそんなもんだよ」

「独身時代も長かったし、外食の味付けの慣れ過ぎていたのかもしれないな。きっと俺が嫁に求めるハードルが高すぎたんだよな」


 富沢はそう語っていた。朔太郎が予想していた事もだいたい合っていたようだ。


「作ってくれる人がいるだけ有難いぞ」

「うん、先生の言う通りだったわ……」


 こうして富沢のメジマズ嫁問題は解決した。電話を切った朔太郎は、時計を見る。もう夕方の五時過ぎでお腹が減ってきた時間だった。実際、腹から情けない音も聞こえてくる。腹が鳴る音は、どうしてこんなに弱々しいのだろうか。


 急いで一階のダイニングルームに向かう。今日の夕食は酢豚だった。うちの酢豚には、ちゃんとパイナップルが入っている。見た目は豪華で華やかだが、朔太郎はさほど得意でもない。少なくともパイナップル入りの酢豚は、好物だと断言できない。


 それでも、まあ、悪くは無い。ちょっと珍しいし、毎日同じようなものを食べるのも飽きてくるだろう。美玖は献立にも悩む事が多いので、たまには、こんな酢豚だって悪くない。自分の好みでない味でも、少しは面白がれる器でいたいものだ。


「さくちゃん、今日は酢豚よ! パイナップル入りで豪華でしょ?」

「ああ、うまそうだ! さっそく食べようじゃないか」


 朔太郎は笑顔で食卓についていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ