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おしどり夫婦のお料理事件簿〜小さな謎とダイニング・メッセージ〜  作者: 地野千塩


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メシマズ嫁の愛し方(3)

 今日は、お花日日和というわけでもなかった。曇りだった。せっかく富沢や宮子達とお花見をする日であったが、天気には逆らえない。花見客は減りそうなのは、悪くないかもしれない。


 朔太郎は早く行き、公園で場所とりをした。その甲斐あってか、桜がよく見える中央広場の芝生の土地をゲットできた。一方、美玖は朝から花見弁当で忙しい。たけのご飯や煮物、からあげ等を作っているようだ。別行動になってしまったが、こうして皆んなと花見が出来る事は楽しみだ。


 約束の時間になり、美玖と合流。今日は動こやすいパーカーにジーンズ姿だ。髪も一つにまとめて、見るからに活発的な雰囲気だ。美玖の雰囲気と服装がよくマッチしていた。


「今日のお花見弁当は、自信作だからね」


 美玖は大きめな保冷バッグをレジャーシートに置く。天気は残念だったが、その変わり客も大人しそうで、酔っ払いがいないのがありがたい。


 それに薄曇りの空に、ピンクの花も意外と合う。綺麗に見えるものだ。公園の土、芝生の匂いも悪くない。春の生命力を感じさせる匂いだ。


「それは楽しみだ」

「ええ。でも富沢さんの奥さんって本当にメシマズなのかしら」

「さあな」

「もしかしたら、富沢さんの料理のハードが高すぎるのかもしれない。聞くところによると、そんな悪い感じもしないんだよね」

「そうかな?」

「そうよ。たぶん、何かのボタンが掛け違っているんじゃないかな?」

「何かて何だ?」

「それは謎だけどね」


 夫婦二人で考えてみたが、よく分からない。やっぱり宮子の料理を食べてみない事には、わからないものだ。


 隣のレジャーシートにいる家族連れは、コンビニ弁当を食べている。宮子がコンビニや惣菜を頼っていないとすれば、そんなもんかもしれない。朔太郎の母も特に料理はうまくなかった。ネギは繋がっているし、にんじんや玉ねぎの切り方も何となく雑だった。それでも母の料理を美味しく感じられたのは、慣れもあっただろう。それに今よりファストフードや外食チェーン店も発達していなかった。今は逆に安くて美味いものが簡単に手に入る。美玖の推理通り、冨沢の料理へのハードルが高くなっている事も考えられた。


 富沢はずっと独身だった。食生活も外食やファストフードに長年世話になっていた事だろう。そこから家庭の味に慣れていくのは、急だった可能性もあるだろう。


 今の料理は美味しくなり過ぎたのだ。飽食の時代とも言われる。それが良い事なのかは、朔太郎は判断できなかった。外食の味に慣れ、家庭料理へのハードルが上がっている場合は、作る方は大変かもしれない。特に日本は外国の料理も迂闊に取り入れる傾向にもある。それを全部作る方が責任を持つのは、大変かもしれない。


「なあ、美玖。俺は味噌汁でも漬物でも地味な粗食でも美味いと思う」

「はあ? さくちゃん、突然何を言ってるの?」

「俺は嫁の料理が不味いなんて絶対言わないから」

「なんか恥ずかしいなぁ。そんな褒めても何も出ないけど?」

「いいんだよ。本当に毎日ありがとう」


 お礼まで言う朔太郎に、美玖は顔を赤くさせていたが、これが本心だった。料理を通じて作っている過程やそのメッセージを知る事ができる朔太郎が、そんな力はなかったとしても料理を作ってくれる人には感謝したい。


「そんな褒められると照れるんですけど」


 美玖の頬がちょうど桜の花びらのように染まった時だった。富沢夫婦がやってきた。


「こんにちは。お久しぶりです。宮子です」


 宮子の外見は、清純派女優のようだ。服装は地味だが、目鼻立ちが整い、清楚な美女に見える。


 この人がメシマズ嫁?


 どうも外見の印象と違うのだが。朔太郎は、首を傾けていた。

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