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叛きの城のマカディオス  作者: 下山 辰季
第六部

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58/60

58・一角の獣鬼

*虫さんの集団が出てくるシーンあり

 ヨトゥクルの力で夢から持ち帰った情報を仲間たちにも伝える。ウィッテンペンにもかかわることなので、フィーヘンもめずらしく話し合いの場に顔を出してくれた。


「シボッツの前でならウィッテンペンも荒っぽい手段はなるべく避けたがりそうでぃすけど……。平和に話し合いが終わると決めつけるのも楽観的すぎますね。ブチ切れたウィッテンペンとケンカになるなんて想像したくもねーでぃすわ」


 セティノアは委縮している。


「おっかない人っぽいね。ファイトだマカディオス! いざって時のために、私が迫真の命乞いをレクチャーしてあげよっか?」


 ダイナはあまりあてにならない。


「ウィッテンペンほどの魔女が病弱なゴブリン男一人にどうしてそこまでこだわるのか、理解に苦しむよ。でも本当にその魔物が大事だとしたらウィッテンペンが手放すわけない。話し合いは絶対こじれる。あの人とぶつかる気なら、やりすぎぐらいの奥の手を用意しておかないと」


 フィーヘンは意外と過激だった。


「直接本人に会ってはいませんが、聞いた話の印象ではウィッテンペンというのはかなり厄介な性格をしていますね。自分本位でまわりの迷惑をかえりみないところなんて、あの魔物(クルガフィカ)を思い出しますよ」


 ヨトゥクルの感想にフィーヘンはほんのかすかに眉間にシワを寄せる。マカディオスとセティノアは同時に首を横にふった。


「上手く言えねえけどその二人はちげえんだよ」

「似て非なるものでぃす」




 みんなはウィッテンペンにばかり注目して、シボッツの能力については気にも留めていないようだった。

 マカディオスだけはシボッツを侮らなかった。


「まずは合図がつうじる距離まで妖姫に近づかねえと。あっちに先に発見されたら再会のチャンスは消えちまう」


 シボッツはマカディオスとの記憶を失っているし、ウィッテンペンが会いたがるとは思えない。


「隠密行動しなくちゃ、っつーわけだ。めっちゃ心配性なシボッツの警戒に引っかからずに」


 ダイナが隣に座るセティノアに話をふる。


「オモテ側の世界への通り道を開くのは多分セティノアだよね? そういうのってほかの魔物に感知されたりするもんなの?」


「んー、セティは気づくこともありますよ。空間に作用する魔法の発動に。ただ魔物全員がセティと同じくらい敏感なわけではなさそうでぃす、よね?」


 セティノアから問いかけられるような目で見られ、ヨトゥクルとフィーヘンは軽くうなずく。


「シボッツがどれだけ感知できるかはわかんねえけど、オモテへのルートを魔法で作る時は古城からちょいと離しといた方が良さそうだな」


 大勢で行けばそれだけ目立つ。

 身体能力に秀でたマカディオス一人で古城にもぐりこみ、妖姫と接触する。シボッツの記憶封印を解除してからセティノアも合流、という計画を立てた。


 ヨトゥクルの陰鬱なため息。


「どれだけ作戦会議をしたところで成功の予感は薄いままですけれどね。不確定要素が多すぎます」


 それはそうだ。こちらはシボッツの魔法のすべてを把握しているわけではない。ウィッテンペンの実力や暴力性も未知数だ。状況がどう転がるか読み切れないが、それでも城にむかい妖姫に会いにいく決意だけはあった。何があっても頑張るんだという覚悟もある。

 決意と覚悟だけでは望みどおりの結果にたどり着かないことは、これまでの経験でマカディオスとセティノアも理解しているはずなのに。


「二度目の挑戦をしようにも、危険な魔女にこちらの手の内がバレた後では難易度が上がるでしょうね。世の中は上手くいかないことの方が多いですから、何事も……」


 しばらくの間、室内は沈黙に支配された。

 その静寂の中、ダイナが物おじせずに口を開く。


「これは私の言葉じゃなくて、お世話になったマスターの受け売りなんだけどさ」


 760a。音楽家という役割の人間を製造するための街で、喫茶店を営むモニクの顔をマカディオスは思い出す。


「色んなことが上手くいかなくても、人間には最後の最後まで残るものがあるんだって。それが人間性だって。だからもしどうしようもなくなったらさ、君らしくあれば良いよ」


 ヨトゥクルが不愉快そうに鼻を鳴らし、すぐさま話に噛みついた。


「無価値なキレイごとで強引にまとめようとするのはやめてもらえます? 失敗続きで追い詰められた人間の本性なんて荒んで目も当てられない。あなたが人生に苦しんでる時にどんな素晴らしい人間性を披露してくれるのか今から楽しみにしていますよ」


 ぶつけられた皮肉には取り合わず、ダイナはマカディオスとセティノアの顔を見ながら落ち着いて話を続けた。


「思いどおりにいかない状況にあっても、どんな態度をとるかを人間は選択できる。ってことは心にとめておいて」


「精神力だけ(・・)すべて(・・・)の問題を解決しようとする考え方には反対だけど、人間性のありよう次第で運命が変わることもあるって意味なら同意」


 目線をわざとらしく動かしフィーヘンは冷淡な真顔でヨトゥクルを凝視する。


「困難に直面してもウィッテンペンは冷静かつ楽しげな態度でいるの。あの人は抜け目なく好機をまって、時がきたら躊躇なく喰らいついて目的を達成する。……否定意見しか口にしない陰険な態度でいるよりはるかに建設的」


 もんのすごく冷え切ったこの空気をマカディオスは人情にあつい親分肌な態度でなだめるはめになった。




 オモテ側の古城近くの森でセティノアが二つの世界をつなげる通り道を開いた。泥棒みたいな袋を背負ったマカディオスが送り出される。

 夜明けの近くの早朝。空気は冷えて澄んでいる。数日前の雨の湿り気がまだ少し地面に残っていて、踏んだ枯れ葉はしっとりと足を包む。


「ムリは禁物でぃすよ。またあとで!」


「ありがとよ」




 鮮やかな赤い実をつけたサンザシに、遠目には白緑の花にも見える実を下げたトネリコ。オークの大樹はドングリを森中にばらまいていた。


 やがて目の前にイラクサの茂みにかこまれた古い城壁があらわれる。

 魔法のイラクサ。シボッツはこれをとおってほしくない場所にびっちり生やしてくるのだ。

 マカディオスなら茂みをジャンプして壁にはりつくことはできそうだ。問題は音。大きな物音で気づかれたり、最悪飛びついた衝撃で壁を壊すかもしれない。


 まずは周囲の状況をよく見てみる。

 イラクサのしげみの外にしなやかな若木が生えていた。木の高さとしなり具合や頑丈さを確認する。知恵と工夫と筋肉次第では魔法のイラクサをやりすごすのに使えるかもしれない。


 とっかかりになるような枝が少なく、真っすぐな幹が伸びた木。木登りで枝にたよるのは初心者。屈強な広背筋(背中)上腕三頭筋()で幹にしがみついて巨体を引き上げる。

 木の上の方までたどりついた。両手でしっかりと幹をつかみ、足腰を木から離す。そのまま体を地面と水平に伸ばしていく。


 それはそれは見事な筋肉勇壮旗(ヒューマンフラッグ)をびしっと決める。


 重心の移動により若木が城壁側にしなる。はだしの足が壁面にソフトに接触。詰まれた石のかすかな出っ張りに足指をかける。驚異的な腹筋と体幹バランスで、安定した動きで上体を壁に引き寄せた。

 そのまま指の第一関節で体重をささえて城壁をよじ登る。




 古城の庭へと侵入した。妖姫の姿は見当たらない。屋内にいるのだろう。

 セティノアがこの場にいないのでざっくりとした判断にはなるが、この城が放棄された時代はあの水車の廃村よりも新しそうだ。まだ木製の扉が朽ちずに存在している。


 城壁内に残っている建物のうち居住できそうな塔に目星をつける。建物の窓から見られないよう気をつけながら、塔の出入口を見張れる場所へと潜伏する。長年放置された城の庭は植物たちによる王国が築かれていて、身を隠す場所にはこと欠かなかった。茂った木々の下、落ち葉の山の中へ腹這いでもぐりこむ。




 きしむ音とともに塔の小さなドアが開く。

 幻想的な儚さと生物的なおぞましさが入り混じった、キレイで歪な妖精の国のお姫さま。そんな人影が赤と黄色に色づく秋の庭に姿をあらわした。

 雰囲気が少女のように変わっているが、ふわふわした不思議な髪や右手にシボッツの特徴が出ている。黒い髪など少しだけウィッテンペンの要素もまざっている。


 建つけの悪くなった年代物のドアを苦労しながらも丁寧にしめるその所作は、まぎれもなくシボッツのものだった。

 外で食べるつもりで持ってきたのか、赤いリンゴをつかむ手は左。果実をボールみたいにもてあそぶのは、ちょっとお行儀の悪いウィッテンペンらしいふるまいだ。


 枯れた噴水のふちをイス代わりにして妖姫が腰かける。噴水のそばにだけ枯れ葉や雑草が少ない。お気に入りの場所としてここによく座っているのかもしれない。

 小鳥の声に聞き入って、朝の煌めきを静かに受け取っている。

 ただそれだけのことなのに、妖姫は本当に満ち足りたようすだった。


 事前にシボッツから話を聞いてなければ、二人はこのままでいた方が良いんじゃないかと引き返したくなるような光景だった。シボッツの意見も聞いているし、ここまできて帰るつもりは毛頭ないが、マカディオスは出ていくタイミングに迷った。


 落ち葉の山にかくれていたマカディオスの鼻の上に、小さなダンゴムシが落ちてきた。そのままたくさんの脚でちょこちょこ歩きはじめたではないか。


(くっ、マズいぜ!!)


 ダンゴムシがそのまま進めば鼻の穴に直撃する。

 かといって派手に手で払えば、すっごくかっこう悪い状態で妖姫と対面してしまう。


 窮地でマカディオスが頼ったのは己の鼻息だった。

 枯れ葉を吹き散らさないように勢いをコントロールしながら、ダンゴムシだけを鼻からしりぞけようと奮闘する。

 マカディオスの努力はむくわれた。さようならダンゴムシ。ぽとりと地面に落ちていった。

 地面に……。


(なんかやけにもぞもぞすんな)


 地面に近い湿った落ち葉の合間に、何かがいる。

 地味な色で、うねうね動き続ける、大勢の、毛虫。


「ぬぉわァあああああああッ!!??」


 躍動する大腿四頭筋(太もも前面)ハムストリングス(太もも裏側)。大絶叫とともに枯れ葉を爆発的に散らし垂直に飛び上がる。虫を捕まえたりカゴの中で飼うのはわりと好きなマカディオスでも、この不意打ちの遭遇は厳しかった。


 滞空時間。リンゴをかじる直前だった妖姫と一瞬だけ目が合う。

 白い睫毛に縁どられたスミレ色の右目はキョトンとしていて、凶悪ピンクの左目はイジワルそうに細められた。マカディオスの視界いっぱいにフルーティな赤が迫る。リンゴを豪速球で顔面に投げつけられたのだ。

 リンゴを口でキャッチし地面にすたっと降り立った時は、もうすでに妖姫の姿はどこにもなかった。合図はまだ出せていないのに。


 几帳面に閉められたはずの塔のドアがほんのわずかに開いているだけだ。




 妖姫はとっさに自身に隠ぺい術をほどこし塔へと逃げこんでいた。ドアの方を警戒しながら階段の横で息を整えている。


 ――びっくりした……。隙を作ってくれてありがとう。いえいえ、君のためならお安いご用。


 記憶の戻らない小鬼からすれば突然のみしらぬ侵入者。しかも覆面に半裸スタイルの怪しい巨漢。

 魔女にしてみれば、ついにやってきた強奪者。奪われまいとウィッテンペンが抱えこんでいるのは、シボッツで、身をていして自分を守ってくれた人で、命をかけてでも自分が守りたい人で、だれよりも長い時間を共にすごした同伴者で、ただの一度さえ唇を重ねあわせたこともない恋人で、赤んぼうの時から渇望している命の漿そのものだった。


 ――アイツのデカッ尻を蹴っ飛ばして追い払っちゃおうよ。すぐ乱暴なことを言いだすんだから。隠れてやりすごせば良いだろう。えー? アイツは平穏の強奪者だよ。君のおだやかな世界を破壊しつくす招かれざる客! キレイなカーテンを引きちぎるし、台所でコショウをぶちまけたりするだろうよ。


 やけにハッキリとした例をだしてマカディオスを追い払うよう魔女はそそのかした。


 ――ここで私と君だけで楽しくすごそう? それにアイツはほかにも君を悩ませる問題をかかえてるんだ。山ほどね。


 わざとイラクサの魔法をかけずに放っておいたドアが遠慮がちにノックされた。

 ドアの隙間から、あの覆面の大男の声が妖姫の耳に届く。


「お、おどろかせてすみませんでした! 葉っぱの下にいた虫がいて叫んじゃっただけです! オレはめちゃくちゃ怪しく見えるだろうけど、悪人じゃなくて……。大事な用があってきたんです」


 ――意外と礼儀正しいみたいだな。変な訪問者にはちがいないし、すぐ信用する気もないが、行儀よくしている相手をこちらが乱暴に叩き出す道理もないだろう。は? ダメでしょ! 枯れ葉の山にひそんでる時点でめっちゃ怪しいヤツだよ! 俺たちだって、無人の城に勝手に入りこんでる怪しいヤツじゃないか。


 塔のドアを少し開けておいたのも、イラクサの魔法で通行止めにしなかったのも、意図的だ。姿も物音も消せる妖姫がいる階段横はドアからすぐに見える場所。身をかくせるようなものは何も置かれていない。追手側には、わざわざ調べる価値もないように見える。

 追手がこの塔に踏みこんできたら、階段を登って上の階を調べにいくだろう。姿も足音も消した妖姫はその間にドアから脱出すれば良い。


 覆面の大男は、きちんとしたお客さまのようにドアの前でまっている。強引に踏みこんでくるようすはない。


 ――一度塔にさそいこんでから魔法で閉じこめちゃえ! そんな気軽に……飢えと渇きで苦しむことになるんだぞ。


 妖姫に危害をくわえるつもりの野蛮な極悪人なら、魔女の提案も妥当だろう。塔に入ってきたところをイラクサの魔法で出られなくして閉じこめてやる。

 だが、廃城を調べにきただけの冒険家や遺跡ドロボウだとすれば重すぎる罰だ。というのが小鬼の意見。


 ――大丈夫だってー、これしきで死ぬもんか。ちょっとした足止めくらいでしょ。


 シボッツの中で小さな違和感がいくつも重なっていた。ウィッテンペンはあきらかにあの訪問者のことをしっている。


 ――ウィッテン、俺に何か隠し事をしてるだろ。


 心を共有している魔女からの返事はない。

 妖姫はため息をついて、傷跡のある左手を水かきのついた右手でそっと包んで手の甲をなでた。


 ――親しい仲でもすべてを打ち明ける義務はない。ただあなたが何も事情を説明してくれないのなら、俺はあの奇妙な来客に会って確認したいと思う。


 三十秒ほど魔女の反応をまってから、小鬼は姿を消す魔法を解いた。




 まだ少しの警戒心を残して妖姫はおそるおそる扉を開ける。


「会いたかったぜ、二人とも!」


 心底嬉しそうな声といっしょにパッと差し出されたのは花束だった。黄色のバラとスカシユリが主役となって作り出しているのは、手持ちサイズの陽だまり。それをそっと手渡される。


 心の小箱がカチリと小さな音を立て、封じこめていた記憶の数々を解き放つ。

 花をさし出す。それが合図だった。

 夢の中で合図を決めた際、マカディオスはもっとド派手にクラッカー百個を鳴らして巨大くす玉をぶち割るという合図にしたがり、シボッツはシボッツでものすごく厳重でひそやかな暗号めいた合図を提案していた。

 お互いの意見をすり合わせて妥協し合った結果である。


「シャレた花束を持ってきたな」


「妖精市場でセティノアと選んだんだ。ウィッテンペンとも話ができるか?」


 シボッツの記憶封印が解かれた今、夢でのやりとりも含めてその内容をウィッテンペンもしることになる。


 マカディオスの姿を映す妖姫の左目があざけるような笑みを作った。


「久しぶりだねー、マカくん。私たちにお別れのあいさつをしにわざわざやってきたのー?」


「家族の話し合いをしにきた」


 ウィッテンペンが落ち着いて話を聞いてくれるように、シボッツはただただ左腕を優しくなで続けていた。


「二人が仲良くて幸せにしてんのはオレだってうれしいし、セティノアや卵から出てきたオレといっしょに暮してたのは二人にとって義務でもなんでもないってのもわかってる」


 半分になってしまった、かりそめの家族。


「騙し討ちみてえなやり方で同意もなくシボッツを取りこんだろ。そろそろ一人と一人に戻っちゃあどうだ? そうしなくちゃいけない理由があんなら、少なくともシボッツにはちゃんと話さねえと」


「一丁前にほざいてくれるねー。人の時間も労力も善意も当たり前の顔でむしりとっていく、甘ったれの小僧風情がさー」


 妖姫が華奢な体をくの字に折った。苦しげな小さな声がもれる。

 儚げな細身はじょじょに大きさを増していき、ふわふわとした白い髪がつややかな黒髪へと変わっていく。ちょこんと突き出ていた妖姫の二本の角は引っこんで、代わりに額の中央から一本角が凶暴に伸びた。

 シボッツの面影を残した妖精の姫君のような魔物は、ウィッテンペンの容姿を色濃く反映した半人半獣の魔物へと変貌をとげた。


挿絵(By みてみん)


「ナマイキな口を叩くようになったねー。立派りっぱ」


 あざけるような拍手がひびく。


「家族の思いがちがう時はどうしたら良いのかな? 話し合い? そんなもんで解決するもんか! そういう時はー……決闘だよ!」


 獣鬼は陽気な笑顔で宣言した。


「私がすごく強引なやり方でシボッツを独り占めにしたのには……マカくんが背負うものもかかわってる。それが理由のすべてではないし、君が悪いってわけじゃないんだけどね。これは試練でもあるんだ。私が明かす事情に君が耐えられるかどうかをしるための。どう? 挑戦する気ある?」


「やってやるぜ」


「そうこなくちゃ。ルールを教えてあげるからセティノアも呼んできなよ」




 セティノアが来られるように、マカディオスは地面に枝で転移陣をえがいた。かたわらで獣鬼もそれを見つめている。


「……たしかに転移陣は正確にかけてるけどさー、どうしてゴリラのラクガキもいっしょなの? ささいな問題だ。上手にかけてるぞ、マカディオス」


 転移陣からやってきたセティノアは恐ろしげな獣鬼の姿を見るなり凍りつく。


「ヒッ? ヒョゲエェエエーッ!? 命ばかりはお助けくだせー!!」


 迅速に命乞いの態勢。極め抜いた達人の技のごとく、隙のない洗練された動作だった。あれはきっとダイナが伝授した技だ。


「こわがらなくていい。俺とウィッテンだよ。ほら、マカディオスもそばにいるだろ?」


「ホワワワワ……。マジでぃすの」


 何はともあれ、これで久しぶりに四人が勢ぞろいした。

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