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06話 尽力せし者達

 ここは、とある国のギルドの中。

 教官の男が一人、その向かいには五人の新人たちが集まっていた。

 だが、今回はいつもとは違い、重々しい空気が漂っていた。



「まず初めに言っておくことがある。いいか、お前たち! 今日の戦いは決してふざけたりするなよ。一瞬の油断が命取りに繋がる。分かったか?」


「「「「「はい!!」」」」」


「よし、それでは今日の内容を説明する。それは冒険者ギルドの存在意義とも言える魔物退治だ。魔物とは何か答えられるやついるか?」


「それなら知ってるぜ。体の中に魔石があるやつだな」


「その通りだ! だが、採掘などで採れる天然の魔石と、魔物の中にある魔石の違いについては分かるか?」


「う、分かりません……」


「天然の物は、魔道具に使われていて、魔物の中にあるものはギルドが回収してるんですよね」


「その通りと言いたいところだが、一番重要な部分が抜けているな。魔物の中にある魔石は、そのまま持ち歩くと人にも害を及ぼすということだ。だからこそ、採取してすぐにこの箱に入れるんだ」


 教官は、簡素な装飾が施されている小さな小箱を手にもって新人に見せた。


「害を及ぼすってどんな感じですか?」


「具体的には、気分が悪くなったり、悪夢にうなされたりする。他にも様々な症状が出るんだが、酷い場合だと発狂することもある」


「こわっ!」

「発狂!?」

「そこまでですか」

「何か不安になってきた」

「私触りたくないんだけど」


「少し触るくらいなら大丈夫だ。それに長時間持ち歩いても大丈夫なように、この特殊な箱がある。ほれ、お前たちの分だ」


「「「「「ありがとうございます」」」」」


「今後は、外に出るときには必ず持ち歩くように。場所によっては、いつ魔物に出くわすか分らんからな」


「「「「「了解です」」」」」


「よし、それでは魔物狩りに行くぞ。初めに言ったが油断はするなよ。あと、これから行くのは今までの講習とは違い、命の危険性があるからな。心してかかれよ」


「「「「「はい!」」」」」



 ◇



 教官と新人の六人は、荒野へと辿り着いていた。


 教官は辺りを見回すと手ごろなところにいる一匹の熊のような魔物を見つけた。


「よし、丁度いい。お前たち連携であいつを仕留めて見せろ」


「私がけん制するわ」


 そう言うと、ドレスの様な服を着た少女が杖をかざしながら火の玉を放つ。その火の玉は、螺旋を描く様に飛んでいき魔物の顔へと命中する。


「グオオオ」


 顔に火の玉が命中した魔物は唸り声を上げながら、炎を払うように両手を動かし始めた。


「今だ! これでもくらえ!!」


 その隙を逃さずに剣士の少年が腹に切りかかった。


「くそ、浅い」

「続きます」


 メイスを持った少年がすかさず足に追い打ちをかける。鈍い一撃が魔物をおそうと一瞬動きが止まり、その時を待っていたかのように、矢が魔物の目へと突き刺さる。


「グワアアアア」


「よし、当たった! 練習の成果ってやつだ」


 矢を命中させた少年が喜んでいると、魔物は唸り声と共に暴れ始めて、メイスを持った少年にその剛腕が振り下ろされる――しかし、その攻撃は当たることなく槍を持った少年によって防がれていた。


「やらせねえよ!!」

「ありがとうございます」


 教官は、新人の連携を見守っていたがこちらに向かってくる陰に気づいて背負っていた大剣を抜き、戦闘態勢を取る。


「クソ、さっきの唸り声で他の魔物が気づいたか。お前たち、そのままそいつを倒すんだ。他はこちらで対処する」


「「「「「了解!」」」」」


 狼の様な魔物が群れをなして向かってくる中へと教官は飛び込み、次々と切り伏せていった。しかしその内の一匹が少女の元へと向かってしまった。


「しまった! 避けろ!!」


 無防備な少女ののど元に狙いを定めて魔物は飛び掛かる。それと同時に教官の声に気付いた少女は魔物が飛び掛かっている後方を振り向いた。


「え!?」


 打ち漏らした魔物たちが、少女に飛び掛かったと思いきや、真っ二つになりながら燃え上っていく。


「危ないところだったな」


 少女の危機を救ったのは、燃えるような紅い剣を手に持った赤髪でツンツン頭の青年だった。


「危ないところを助けて頂いてありがとうございます」


 少女は紅い剣を持った青年にお礼を言うと、何やら元気な声が聞こえてくる。


「うおおお、なにその剣かっこいんだけど!」


 討伐を終えた剣士の少年が、興奮しながらまじまじと紅き剣を見つめた。


「初討伐お疲れさん。これか、最近見つけたんだが魔剣らしいぞ」


「すげー、これがあの魔剣なのか」


「おー、お前さんか。すまん、助かったぞ」


「おっさん、腕訛ったんじゃないのか? 俺が通りがからなかったら危なかったぞ」


「ぐっ、返す言葉もない」


「それより、魔石はいいのか?」


「はっ! そうだった。お前たち魔石は、大抵心臓付近にあるから探してみるんだ」


 新人たちは、教官の声を皮切りにして、魔石を探し始めた。

 暫くして、魔石を見つけた新人たちは教官に報告する。


「教官ありました」


「よし、それでは箱に入れたら帰るぞ」


「了解」

「つ、つかれたー」

「今日はぐっすり眠れそうだわ」

「え? 俺は逆に興奮して寝れそうにないんだけど」

「僕もです」


「ハハハ、懐かしいな新人時代。あの時の教官もおっさんだったっけ」


「え? その話詳しく聞きたいんだけど」


「お? そうか、それなら……」


「お前たち、魔物への警戒を怠るなよ」


 教官は六人を(たしな)めたあと、皆でギルドへと戻っていった。

『双月の晩に気をつけて 17話 四分咲き』は、明日(8/25)の午前8時頃にアップする予定です。

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