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05話 青雲の志

 ここは、とある洞窟への入り口付近。

 今日も新人冒険者の為の講習がある日だ。


 洞窟の前には、教官の男が一人、その向かいには五人の新人たちが集まっていた。


「お前ら今日は何のためにここへ来たか分かっているか?」


「「「「「はい!!」」」」」


 前回の講習と同様に新人達が一斉に声を上げた。


「じゃあ、そこのお前! 説明してみろ!!」


「新人講習の為です!」


「あのなぁ、その講習の内容を聞いているんだが?」


「えーと……」


「仕方ない、もう一度説明してやる。今回は、このゾンビと蟲が出る洞窟で講習を行う。つまり、今回のターゲットはこの二種類を相手にすることになるが何故この洞窟なのか分かるやついるか?」


「えーと、放置していると中から蟲が溢れ出てくるから?」


「その通りだ。(ついで)に補足するとだなゾンビは外に出てこれないが蟲は出てこれる。故に討伐することになるんだ」


「態々講習で来なくても誰かしら討伐してくれるんじゃないんですか?」


「ふむ。新人ならそう言うだろうと思っていた。ただその考えはこの中へ入れば変わるはずだ。これも分かる奴いるか?」


「もしかして、今日捨ててもいい服で来いと言ったことと関係ありますか?」


「お、なかなか鋭いな! そうだ! そのことと関係している。中は腐臭が充満していて臭い! 中に入ると服まで臭いが染み付いて落ちなくなる。故にまず好き好んで行く奴なんかいない!!」


「えっ!?」


「あっ! お前、そのヒラヒラのドレスみたいな服は、王都で流行りの服だな! 」


「確か元は、行商人をやってた人たちの店の物ですね」


「そんな……高かったのに……」


「安心しろ! たまにそういう奴がいるから、古着を数着持ってきてある。後でこれに着替えろ」


「うう、ありがとうございます」


 危うく一張羅を台無しにするところだった、新人内で紅一点の少女は涙を浮かべながら感謝を述べた。




 新人たちが、装備の準備や着替えなどを済ませたのを見計らって教官が尋ねる。


「さて、準備は出来たか?」


「はい、出来ました!」


「マスクが邪魔だなぁ」


「マスクは外さない方がいいぞ。まぁ臭いに耐えられるなら別だがな」


 そう告げた教官も口や鼻を覆うように布を巻いていた。


「我慢します……」


 剣士の少年は、教官の様子を見てマスクを外さないことを固く誓った。


 教官たちは、中へ入るとさっそく芋虫みたいな蟲と遭遇した。


「これか……てか何か食ってないか?」


「うげ、これ手じゃない?」


「ああ、こいつらはゾンビを食うぞ。因みにゾンビもこいつらを食う。まぁ基本的にはゾンビの方が食われる事の方が多いがな。とりあえずこいつを駆除してみろ」


「じゃあ、俺がやってみるぜ」


 剣士の少年が意気揚々と立ち向かっていった。


「うおりゃあ!!」


 掛け声とともに、剣を縦に振り虫を一刀両断にしてみせた。少年が初めての虫退治を喜ぶ間もなく、前方から蟲の群れがウネウネと這いずってくる。


「ほれ、次が来るぞ!」


 新人達は、次々向かってくる群れを何とか撃退し、皆一斉に大きなため息をついた。


「「「「「はぁー」」」」」


「なんだ? お前らもう根を上げたのか? 駆除はまだまだこれからだぞ!」


「うへぇー」


 そう言いながら進んでいく教官たちの前方に人影らしきものがあった。


「ねぇ、ちょっとあそこに人影が見えない?」


「どれどれ、げっ! あいつら共食いしてやがる」


「あー、たまにいるんだよ。動けなくなった仲間のゾンビを食うやつ。なかなか見れない光景だぞ。運がいいな」


(((((うれしくない)))))



 洞窟に入ること数時間が経過して、一同は外へと出てきた。


「もう無理」

「吐きそう」

「やっと新鮮な空気が吸えるわ……でも体中から死臭が……」

「もう暫く蟲は見たくありません」

「やっと解放された」


「お前たち何か勘違いしてないか? これは講習後も定期的に行われるモノだぞ」


「「「「「えっ!!」」」」」


「そう嫌そうな顔をするな。ある程度実力がついた者たちは、別の依頼もあるから断ることも出来る」


「ならさっさと実力をつけるぞー!」


「「「「おー!」」」」


「お前たち意気込むのはいいが、実力をつける前にまずは風呂だな!」


「確かに……」


 講習を終えて、死臭を(まと)った六人は風呂屋へと向かって歩いて行く。

『双月の晩に気をつけて 14話 三分咲き』は、明日(8/5)の午前8時頃にアップする予定です。

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