03話 誰が為に鐘はなる
ここはとある国の教会がある町の中――。
町の中央にある像の前には、両親と娘が立っていた。
「ねえ、この像は何?」
娘が目を輝かせながら尋ねた。
「これはね、人々を助けた聖人様の像なのよ」
母親は、優しい声色で答えた。
「この像がある場所はね、神父に化けた悪魔が聖人様を亡き者にしようとした場所なんだよ」
父親は、語り始めた。
「え? まさか聖人様殺されちゃったの?」
娘は不安げな顔をした。
「いやいや、御使い様が光臨なされて、悪魔を滅し、聖人様は助け出されたのさ」
父親は、大丈夫だよと伝えるように、ポンと娘の頭に手を置いた。
「……よかった」
娘は、ふぅと胸を撫で下ろした。
「さてと、そろそろ教会に向かわないとな」
父親が二人の顔を見ながら言った。
三人は教会へと歩き出した。
「何で、教会へ行くか覚えてるかしら?」
母親が歩きながら娘に問う。
「えーと、八歳になった日には、教会へ行って、お祈りをするんだよね」
娘は、記憶を辿りながら答えた。
「ええ、そうよ。聖人様と御使い様、二人の像の前でお祈りするのよ。人々が信仰を忘れたら、また悪魔に付け込まれるからね。」
母親は、娘に補足しながら言った。
三人は、教会へ入るとシスターに挨拶をした。その後、二つの像の前で片膝を地面につき、祈りを捧げた。
三人の祈りに呼応するかの如く、晴天に澄んだ鐘の音が『カアーン、カアーン』と響き渡った。
「いい音色だね」
娘は、鐘の音に聞き惚れた。
「ああ、お二人が祝福して下さってるに違いない」
父親は、感謝しながら聞き入った。
「ええ、そうね」
母親は、相槌を打ちながら聞き入った。
三人は暫く鐘の音に、聞き入ったあと、雲一つない日差しの元へと出て行った――。