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 その日 クラリス・アリュシアのもとに一通の手紙が届いた。


 差出人の名前はマイケル・カルバドス。知らない名前だ。


 書いてある内容も、まるで心当たりのない叔父の名前がでてきたり、他愛もない近況報告ばかり。


 アリュシアはさらりと一通り目を通し、アルコールランプで手紙の空白部分をあぶった。


 するとぼんやりと文字が浮かび上がる。この隠された文章こそが本当の手紙だった。


 手紙によると、ついに革命の準備が整ったということが記されていた。


 革命----そう、彼女は革命を起こすのだ。


 大国アリュシアと隣国のロードバーグ帝国は、クラリスが産まれた時から戦争をしている。


 それが一大産業だと言わんばかりに武器を製造し、国内を整備し、民草に仕事をまわしていた。


 国としては潤うかもしれないが、それは民草の命を代償に得た偽りの発展。このままではアリュシア王国は中身が伴わないハリボテ国家になりさがる。早々に手を打たねばならず、そのためには戦争に依存した体勢を変えなければ、と聡明なクラリスは常々そう思っていた。


 そんな彼女が革命家たちと接触するのは、そう難しいことではなかった。


 なぜなら彼女はこの国の中でもトップ層に位置する第三王女なのだから。


 革命家たちと接触したクラリスは、すぐに彼らの同志となった。


 けれど、その革命家たちを率いる人物を知って彼女は驚きを隠せなかった。


 革命家のリーダーは、なんと敵国であるロードバーグ帝国の王子、リベロ・ロードバーグだったからだ。


 最初は訝しんだクラリスだったが、身分も、国籍も、年齢さえも気にしない彼の組織、ひいては彼自身の人柄に触れ、彼を信用することにした。


 リベロもまた、クラリスの芯の強さと聡明さに惹かれ、二人は恋に落ちた。


 敵国の、それも国を代表する者同士の恋。


 叶わぬ恋などとは微塵も思わなかった。


 なぜなら二人は、本気で国を変えるつもりでいたからだ。


 つまりこの手紙は革命の伝令でもあり、愛する人からのラブレターでもあった。


 クラリスは集会の日時を確認し、一度だけ胸にぎゅっと抱きしめ、アルコールランプの火で手紙を燃やした。


 今夜は革命前夜。


 明日、世界が変わる。


がんばります。

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