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花と望遠鏡  作者: 山椒ひかり
ユトダイン王国編
13/25

神・精霊

 『失われし七氏族の物語』


 我々の世界は初めから存在した。それ以前の世界は無でありながら、同時に悠久の時を経て、絶え間なき滅びと再生を繰り返しながら紀元を迎えたとされている。


 最初の神は二つあった。名もなき男神と女神が、突如として世界の全てを創造したのである。しかし世界の完成を知る者は誰一人としていなかった。何故なら全ての民は言語を持たず、歴史を持たなかったのだから。


 そこで二神は一人の指導者を生み出した。二神はその指導者に知性を授け、言語を授け、この世界の真理を説いて聞かせた。指導者はその神の英知を民に与え、やがて文明が築かれたのであった。


 初代ユトダイン王が王国の誕生を宣言したとき、人類はようやく、大いなる一歩を踏み出したのである。王は民に言語を教え、星の動きを観測し、暮らしを豊かにしたのだ。


 次第に国が大きくなるにつれ、更なる指導者が必要となり、次に五つの神が現れた。それらの神々は民を導く五人の指導者を生み出し、各々に役割を与えた。五人はそれぞれ、アドラノス、カヤン、フルダ、セバラディ、ダンバースの名を冠した。


 かくしてユトダイン王を頂点とした六の氏族が国を発展させ、偉大なる大帝国を築き上げたのだ。しかしその繁栄は長く続かなかった。どういう訳か、世界の創造主たる二神が対立を始めたのである。やがて争いに敗れた女神は地上に降り立ち、美しき踊り子の姿に化け、王の弟を唆して離反を促した。愚かなる弟は、堕落せし女創造主を『ヘルト』と名付け、自らもそう名乗り、北方に新たな国を誕生させるのであった。


 この離反者ヘルトこそ、最後に誕生した七氏族のひとつであった。

 (注)七氏族のうち、現存が確認される氏族はユトダイン王家、ヘルト皇家、ダンバース公爵家の三家のみである。


 かくして国は二つに分かたれた。また時を同じくして、数多の神が天界から舞い降りた。その多くは邪神であった。そして神々は弱き人間に力を与え、世界の混乱を巻き起こしたのである。

 

 こうして大乱の時代が幕を開けた。しかし結果として、世界は崩壊しなかった。数千にも及ぶ神々が、皆思い思いの人間へ力を授けたのにも関わらず、多くの人間はその力を正義の為に用いたのであった。もちろんのこと、時に正義は牙を剥く。罪なき民の血は大地を赤く染め上げ、断末魔の叫びは天をも割いたという。ユトダイン帝国は領土の大半を失い、ヘルト新帝国も疲弊した。


 だがそれでも、世界は平穏を取り戻したのだ。やがて数千の神々は精霊と呼ばれるようになり、七氏族を生み出した二神の創造主と、五つの柱の存在は、遥か彼方に忘れ去られていったのだ。

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