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農機整備士の異世界開拓ライフ  作者: ミャーク
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#51 ベニヤ板の製作①

サリーナさんの部屋を後にしたあと、俺は銀音に先程の疑問を問いかける。


「そうですね…息を長続きさせる魔法なら知っていますが、水中で呼吸出来るようにする方法は知らないですね」

「そっかーまぁ〜その辺はサリーナさんが何とかしてくれるだろう。過去人間が人魚の国に行ったことくらい1度はあるだろうしーーー 。今はそこんとこは置いといて、俺は昨日の続きで小屋の内装を仕上げるとしよーっと」


サリーナさんが目覚めた翌日、まだ彼女の体調も良くないだろうと思って、小屋の内装仕上げに取り掛かっていたのだ。進捗としては1階部分の壁と中二階の設置までは終わらせておいた。恐らく今日で全ての壁と床を張り終わる事が出来るはず。その後は照明となるランプ置場と簡易窓への扉を設置すればいよいよ完成だ。

銀音は丁度昨日で樹木の切り倒しが終わったようなので、次は樹皮を剥いでもらうことにした。

チェーンソーはモーズさんのとこに貸し出してるし手でやらせる訳にも行かないので、どうするか考えているとどうやら新しい魔法で作業を行ってみるようだ。その名も“ダストブラスト”。風魔法と土魔法の合わせ技で土魔法で礫を創り出し、風で創り上げた竜巻で巻き上げ、それを相手にぶつけるっといった技だ。高速に回転した礫や砂塵は恐らくヤスリのような役目をするはずなので相手はひとたまりもない。今回はそれを丸太に使ってみるということだ。俺も気になるので1本試しにやってもらうことにする。


「それでは……大地より生み出されし矛、風と共に敵を打ち砕け、“ダストブラスト!!”」


銀音が技を発動させたと同時に4つの竜巻と先のとがった拳より一回り小さな礫が発生し、そのまま竜巻の力で巻き上げられ高速回転し始めた。4つのの竜巻はアースリストレイントによって垂直に固定された丸太へと近ずいて行き、カタカタと小石が当たる様な音が響き渡ったかと思うと丸太の樹皮がどんどん剥がされていったーーーものすごいスピードで。


「ちょっ!ストーップ!これ以上やったら材料が無くなっちゃうよ!」

「思ったよりも威力があったようです。あまり魔素は込めなかったのですが…すみません。次は調整してみます」

「そうだね。樹皮だけ剥ぐことが出来るのが理想だけど、一瞬でここまで出来るのはすごく効率もいいし、削りすぎなければいいから調整しながらやって見て。逆に樹皮が少し残る程度でもいいよ」


あとは銀音に任せて俺は小屋の仕上げに取り掛かる。 まずは中二階の床と壁に使う材料の切出を行う。今回小屋を建て始めて感じたのが、板の幅が短い為に何度も切り出しや打ち付けを行わなければならないという事だ。本来壁や床なんかの平で広い面はベニヤ板が手っ取り早くて簡単だ。しかし、今手元にベニヤ板は無い。その為ひたすら15〜20cm幅の木板を床になる部分に打ち付けているのだ。


「ーーーダメだ…昨日はまだ何とかやり続けられたがこれじゃ埒が明かない。ベニヤ板から造ることにしよう」


ベニヤ板というのは構造としてはとても簡単だ。規格品ではあるけど自作するなら自分で寸法を決めればいい。まずは丸太を大根の桂剥きの要領で剥いて伸ばしていき、今回は床とかべ両方に使う必要があるので、一番範囲の狭い面を基準に作ることにする。そして切り出した単板(ベニヤ)を縦横木目が直行する様に貼り合わせるのだ。余談だけど、ベニヤ板って言って通じるけど、実際にはベニヤと呼ばれる単板を複数枚重ね合わせて作った板を合板って呼ぶんだよね。現場とか一般人でもベニヤで通じてるからいいんだけども。

さて、工程を考えるだけなら割と簡単そうだがここで大きな問題が発生する。


「貼り合わせるための接着方法をどうするかだよな……一応木工用ボンドはあるけど量が全然足りないし何かいい方法はないかなーーー」


俺がベニヤ板製作で頭を悩ませているとジャス達3兄妹が小屋の中へ入ってきた。どうやら狩りに出掛けることを俺に報告に来たようだ。内装や中二階が徐々に仕上げられていくのが嬉しいらしく3匹とも物凄い勢いで尻尾を振っている。そうだ!リーフウルフって言うくらいだし草花にも詳しい筈、何かいい魔法を知っているかもしれないな、聞いてみよう。


「ちょっと皆に聞きたいんだけど、木材同士を接着するボンド……固定する為のいい魔法はないかな?」

「うーむ…はっ!それならば“エーテルグリップ”が良いかと!」

「エーテルグリップ!なんか如何にもくっつきそうな名前の魔法だなぁ」

「狩りを行っている時や洞窟などが無い場合に、天気が崩れて来た時雨風を凌ぐ必要があります。そこで、役立つのがエーテルグリップという水と土の複合魔法です。枝葉を接着させて雨や風を凌ぐ壁や屋根を造り出すことが出来ます」


ルトスはそう言いながら近くに置いていた端材2つを両前足で器用に転がし、向かい合わせに配置、そしてエーテルグリップを唱えてみせる。すると液体のりのような物が右前足から出現しそれを木片の片側に塗り付け貼り合わせた。


「この様に粘着性のある液体を作り出すことが出来るので、繋ぎ合わせたい物体の間に塗布する事で固定することが出来ます。最初はサラサラと液状ですが乾くにつれてどんどん硬化が進み最後は僅かな弾力がある物体になります。塗布するのは少量なので実際には弾力を感じる程の厚みはありません。10回程息を吹き付ける程度で硬化しますが、量が増えるほど硬化時間は長くなります。少量でもかなりの強度が出るのであまり量を付けすぎると解体時に難儀しますね。取り扱いも簡単で難易度もそこまで高くないので、タクミ様であれば直ぐに扱える筈ですよ」


なんと言うかルトスの説明を聞いていると何だかメーカーさんの担当営業を思い出した。こんな風に実際に効果の程を実演してみせ、従来品と比べてこうなりました、新たにこの機能が追加されました、使い方はこんな感じです、っと事細かに疑問点や質問に快く答えてくれていた。ルトスは商売人の才能があるかもしれない、何かの機会に役に立ってくれそうだ。


「それじゃあ早速使ってみようかな、どうしたらいいの?」

「魔法に関しては私よりラミリスの方が得意ですので」

「という事でタクミ様!ここからは私がお教え致します。そういう訳だからジャスとルトスは居ても仕方ないし狩りに行ってきて!ほらほら!」

「押すでない!分かったからそう急かすな!まったく…我も主殿の勇姿を見たかったのだがな…」

「仕方ないよ。ラミリスはタクミ様にいいところを見せたいのさ。事実私達がここへ残っても出来ることは少ないしなーーー」


ジャスとルトスはなにかブツブツ言いながら、狩りに向かうべく仲間の元へ戻って行った。あいつらも魔法の訓練を一緒にやりたかったのだろうか?今度誘ってみるのもいいのかもしれないな。


「二人も行ったことですし始めましょう。タクミ様は土魔法の経験は有りますか?」

「銀音に教えて貰ったアースリストレイントって魔法なら使った事あるよ」

「それなら話は早いです。魔素を圧縮する過程は同じですが、その圧縮した魔素に異なる属性2つを同時に同量込める必要があります」

「2つを同時に同量?それってどういう感覚?」

「タクミ様は水魔法や土魔法を発動する際どの様に発動していましたか?」

「どのようにって…普通に圧縮した魔素にイメージしながら詠唱して発動していたけど?」

「その無意識にしていたイメージを明確にするのです。単属性の魔法を発動する際はぼやっとイメージだけでも問題ありませんが、イメージを具体的にする事で魔法の威力や発動が早くなったりします」


イメージを明確に、か。同時に同量のイメージか…どういうイメージなら良いだろうーーー?そうだ!学生の時に友達の誕生会でケーキのデコレーションやった時のイメージか良さげだ。絞り器に入れた生クリームを絞り出すあの感じ。あの時は確かウケを狙って両手に絞り器を握って同時にキャラクターを描いたんだっけかな…利き手じゃない方がガダガダで酷い出来だったけど楽しかったなぁ。おっと、思い出に浸るのはこのくらいにして、早速あの時のイメージでやってみよう。


「圧縮した魔素に2属性を流し込むように…、絞り器を握る力を均等にするあの感じーーーあっ!あー!途中まで上手くいってた感じなのに水属性を多く付与しちゃったわー!くそーめちゃ難しい!」

「一応その状態で発動出来なくもないですが、この複合魔法の場合水属性が多ければ粘度がよりサラサラに、土属性が多ければネバネバした感じで発現されます。場合によってはそれでいいですが、込めすぎる量が極端に片寄るとその属性に引っ張られてしまって効果を発揮出来なくなります」


ラミリアが見本を見せてくれたが、水属性が多い時はサラサラと言うよりはもはや水に近く、土属性が多い場合は僅かに水気を帯びた粘土のような物体になった。成程、本当に誤差程度の範囲でしか効果を得ることが出来ないのか。でも、ちょっとコツのような物が少し分かり始めてきたぞ。

暫く練習を続けて何とか3回に1回は合格点を貰えるようになってきた。このままトライすればもう少しはマシになるはず。この特訓は細かな魔素の扱いを練習出来るので、今後の魔法発動でもいい効果をもたらしてくれるだろう。時間を忘れてエーテルグリップの発動練習をしていると、銀音から昼食の準備が出来たと声をかけられた。もうそんな時間なのか、集中してたから全然気が付かなかった。一旦練習は中断して昼食を頂くことにーーー。

銀音はまだまだ簡単な味付けの料理しか作れないが、余っていた肉と野菜を炒めてくれていた。これがまた絶妙な塩コショウの配分でご飯が進む美味しさでペロリと完食した。

食休みをしながら談笑している時に銀音のダストブラストについての話になり、その際銀音の魔法属性ってどうなってんの?って話になった。各属性満遍なく使えるしどうしたらそれが出来るのかを聞いてみた。


「私は風魔法が最も得意でその次が火、そして土、水です。この前お話した魔法属性についての続きですが、本来は最も相性の良い属性を優先的に伸ばしていくのが良いとされています。魔素の圧縮の仕方、魔法の発動、威力のコントロール。属性を問わずこれらは全てに共通して必要な事です。相性の良い属性で行うことにより、実感も湧きやすいですし感覚もつかみやすいのです。私も若き日は風属性を多用していました。しかし、私を含め長く生き続ける種は効果の大小はあるものの、時間をかけて四属性全てを扱う事が出来るようになる者が多いです。タクミ様達人族の一生で考えるならば、一属性、若しくはその次に得意な属性を伸ばすべきでしょう」


成程、適性云々の前にそもそも4属性全てを扱えるようになるのは途方もない努力の積み重ねが必要ということか。でも、俺には早熟スキルもあるしかなり早い段階で物に出来てきてると思う。銀音もラミリスも俺はかなり呑み込みが早いって言ってるし、もしかしたら4属性全てをある程度扱えるようになるのかも?まぁ〜その辺はゆっくり身につけて行ければいいかな。

しばしの談笑の後、昼食後特有の眠気が襲ってきたので、少し仮眠をとることになった。取り敢えず起きたらもう少しエーテルグリップの練習してから、ベニヤ板作りに取り掛かるとしよう。

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