#46キャニダ語
ステータスを確認してみると、多言語習得レベル1の下に
キャニダ語が追加されていた。実際には12時間も聞いていないはずだがこれも早熟レベル1の効果だろうか?本当に聞き流しているだけで言語理解できるようになってしまった。これのお陰でブラックウルフ達の会話内容は聞くことは出来た。次は話せるかどうかだ。
「銀音ちょっといいかな?なんかブラックウルフ達の言っていることが分かるようになったみたいだから会話してみたいんだけど……」
「はい!?ーーー言われてみるとキャニダ語で喋ってますね。大変流暢なキャニダ語です!さすがはタクミ様!完璧に使いこなしてますよ」
「え!?俺今普通に喋ってるよ?もしかして人語じゃない?」
「タクミ様はずぅーっとキャニダ語で会話なされてますよ!」
「マジか…自分には普通に日本語…人語にしか聞こえないわ」
ブラックウルフ達の言葉もそうだが普通に日本語で喋っているようにしか聞こえない。スキルの効果で自動翻訳されているみたいだな。謎原理だが考えてもどうせ分からないので深くは追求しないでおこう。
「主殿!我らの言葉がお分かりになるのですか!?」
「タクミ様へ今までずっと話しかけていたかいが有りましたね。銀音様に毎回通訳をお願いするのも大変申し訳なかったですし…」
「遅れながらお礼を。銀音様を含め飢餓とミノタウロス襲撃の危機をお救い頂きありがとうございます。主様に救って頂かなければ我ら一族は全滅していた。これからは誠心誠意御仕えさせて頂く所存です」
「俺は家の方に危険が迫ってるのを対処しただけだよ。たまたま討伐出来ただけだし、君達の協力も無ければ倒せてなかっただろうからお互い様だよ」
どうやら会話も問題なくできているようであった。それにしても主殿って・・・なんか仰々しくて困るな。まぁ呼び方は気にしないから俺が慣れるしかない。しかし、ブラックウルフ達は遠くから見たら個別に判断できないけど、近くで見ると微妙に毛並みや毛色が違うんだな。でも、俺に話しかけてきた3匹は全く区別が使いな・・・。それならせっかくの宴だし会話ができるようになったから、延期していた名付けを行おうかな?彼らにそう問いかけると特段今のままでも問題は無いとの返答だったが俺が分かりづらいと説得した。
「君達がこの群れのリーダー的なポジションなのか?」
「はい。我らは三つ子の兄弟で一応私が群れの代表を務めておりますが、主に我ら兄弟と銀音様で大方の方針は決定しています」
三つ子か〜それは確かに見分けつかないわけだ。どうするかなー。そうだ!確かまだ使っていないウェスがあったからそれを首輪代わりにして色で区別しよう。
俺はガレージに戻りウェスを取り出す。ちょうど赤黄青の三色があったのでそれらを首につけてあげた。
「じゃあ主なリーダーとして赤の君はジャス、黄はラミリス、青はルトスね。改めて俺はコウダ・タクミだ。名前がタクミね。これからよろしく」
3頭の名前は勇敢な所がどこか三銃士を彷彿とさせたので、それにちなんだ名前にした。三つ子と言うのもあるだろうが、それ以前に狼なので見た目には分からないが、黄色のウェスを付けたラミリスはだけは雌らしい。なのでちょっと女の子っぽい名前にした。
基本的に集団で行動するので命令は3頭のいずれかに下してもらえればいいとの事。という事で他のブラックウルフ達には名を付けなかった。
名前も付け終わり飲み会を再開。酒も進みブラックウルフ達についてどう言った種族なのか聞いてみた。
「ブラックウルフへの進化前はリーフウルフでした。肉以外も食べる雑食の生き物で、我らのようにハティーウルフへ進化した銀音様の様な方と共に行動する群れは珍しいと思われます」
「そう言えば気になってたんだけど、ジャス達もさらに進化したら銀音みたいになるの?」
「左様です。しかし、残念ながら銀音様と同じハティーウルフへは進化出来ませぬ。リーフウルフの進化は二通りあり、我等は戦闘の経験でブラックウルフへと進化を遂げました。仮にこのまま生き続けたとしたら、ウプトウルフへと進化を果たします。ですが、そうそう進化するのは難しいものです」
もう少し細かく聞くと狩りや戦闘の経験が多いとブラックウルフ、ウプトウルフに進化し、戦闘をあまりせず野草や果物等を多く食べて長く生きるとホワイトウルフ、ハティーウルフへと進化するようだ。ハティーウルフは単純に長く生きれば至る事が出来るが、銀音の様に何百年も生きなければならない。一方ウプトウルフは膨大な戦闘経験が無いと進化することは出来ないようだ。今回ミノタウロスという格上の相手を俺の力を借りて倒した為、たまたま一族揃って進化したらしい。そして1度進化の方向性が決定してしまうと途中で変えることは出来ないそうだ。
「自分…ルトスから質問しても宜しいですか?」
「構わないよ、なんでも遠慮なく聞いてくれ」
「ありがとうございます。皆も疑問に思っていると思うのですが、タクミ様は不思議な武器をお使いになりますよね?私は人間に興味があって何度か戦闘を見た事があるのですが、タクミ様の様な武器を使っての戦闘は見たことがありません」
「あぁー…これは武器じゃないんだ。まぁ確かに使い方によっては武器になるけど本来は草木を切ったり、畑を耕したりと農業をする為の道具でな。多分一般的には桑とか斧、鎌なんかを使うと思うんだけど、これはそれの何十倍も効率よく出来るんだ。それに動力も魔導じゃなくてボラタイトオイルやライトオイルの爆発力を利用して動作してるから、魔素を練り上げるのが苦手な人でも扱うことが出来る」
あれだけの殺傷能力がありながら、武器ではなく農具という事に皆驚いていた。まぁ地球でも武器にしている映画やゲームも有るくらいだから間違いでは無いと思う。
ラミリスが言うには人間の力以上の農作業(表層と下層農反転や硬盤層の破砕)が必要になる時は、家畜を使って行っていたらしい。この世界にも家畜で牽引する作業機があるのか、それは朗報だぞ!機構的には難しいものでも無いし少し手を加えればトラクターで使える様に加工出来るだろうし、家畜で牽引するよりも何倍も効率よく作業が出来るはずだ。今度ファマーにトラクターを持って行って相談してみよう。
そんな感じでブラックウルフ達との飲み会は進んで行き、互いを知りながら絆を深める機会となった。軽めに後片付けを行ってその日は解散。なんだかんだ21時を回っていて夕方までのBBQのつもりが思ったよりも遅くなってしまった。
「明日は放置していた畑を見なきゃな……あーあとあれだ、ブラックウルフ達の寝床も作ってやらないとな」
明日以降の予定を考えてながらそのまま寝落ちしたのだった。
翌朝。香ばしい肉の焼ける香りで目が覚めた。時間を確認すると朝の6時半頃。取り敢えず寝床から起き出し居間へと向かうと昨日片付けたBBQコンロで銀音が肉と何やら野草の様なものを焼いていた。
「朝っぱらから肉か?ちょっと重くない?」
「おはようございます。昨日の肉の残りと早朝ジャス達が森の中から取ってきたキノコや野草を炒めてみました。タクミ様の味付けを見よう見まねで作ってみたのですがどうでしょうか?」
俺は銀音からフォークをもらい味見してみる。ふむ、ちょっと胡椒が強い気もするが普通に美味い。この野草も初めて食べたけどシャキシャキしてて食感はアスパラに似ている。見た目はキャベツの芯見たいな奴だけど。
銀音に感想を伝えると嬉しそうにこれからは自分が朝食を作りたいと言ってきた。まぁー料理の練習にもなるし、本人が興味があって上達したいと思ってるなら断る理由もない。俺も楽できるしね。
重いかもと思っていたが、なんだかんだ完食してしまった。今日は朝からブラックウルフ達の寝床小屋作りだからこれぐらいガッツリしてるのが良いかもね。
銀音と片付けを済ませて早速小屋作りに取りかかる。小屋は母屋に隣接した方がいいだろうか?でも、ブラックウルフ達には番犬ならぬ番狼としても活躍してもらいたいし、ここは裏手の露天風呂から少し離れた所に建設するとしよう。露天風呂から渡り廊下を設置してやれば雨の日も安心だし、そこなら畑も見渡せる。
ということで、露天風呂から5mほど離れた場所に枝で地面に線を引く。ブラックウルフ達の頭数からして、20畳は欲しい所だ。中に中二階も作ってやればそこまで窮屈しないだろう。となるとウィザーウッドで採取した丸太はまだ残ってるけど今回の小屋作りで使い切ってしまいそうだな。畑として開拓がてら新たに丸太をストックしておこう。
「主殿!我らは狩りに行ってまいります。今朝狩りに赴いた折、3キラトーメル程先で水場を発見したため、そこで魚を取って参ります」
「とても美味しいピンクスマも見えていたのでそちらも取ってきますね!」
「タクミ様は海藻類は大丈夫ですか?ケルプやメカワは歯ごたえもあって美味しいですよ」
魚は刺身にしても焼いたり煮たりしても美味しいから是非とも手に入れてもらいたい。海藻類は嫌いじゃないし出汁が取れるやつもあるからこちらも取ってきてもらおう。俺はジャス達にお願いして、どうせなら沢山ほしいからマジックバックを持っていって貰うことにした。バックをルトスに掛けたがやはりベルト長い・・・縮めることもできない為、仕方ないので工具箱に入っていた結束バンドで調整した長さで固定した。皆には夕飯前には帰ってくるように伝えて見送った。
「さて、俺たちも作業に取り掛かるか」
「まずは何からやりますか?」
「役割分担しよう。俺が木材を切り出している間に銀音にはウィザーウッドを散布してほしい。やり方は教えるね」
散布方法を教えて分担作業が始まった。今日中に材木の切り出しは終えたいとこだが、折角のスローライフ焦らず確実にやっていこう。




