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農機整備士の異世界開拓ライフ  作者: ミャーク
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#44新しい施肥剤と酸度測定①

長くなったので2話に分けます!

翌朝は驚く程スッキリと目が覚めた。昨日同様何時眠ったのか記憶は無いが地獄の様な二日酔いは無い。時刻も8時前と普段の起床より少し遅いくらいだ。

部屋を出て店舗の方に向かうとステムさんがいた。


「おはようございます!コウダ工場長。昨日はぐっすり眠れましたか?」

「昨日飲んでる最中に明日も酷い二日酔いだろうな、と、覚悟してたんですが全然ダメージ無くて驚いてます」

「もしかしてファマーの消酒ドリンク飲みましたか?あれは効果が暫く続きますからね〜でも、飲み過ぎは厳禁ですよ!1ヶ月に1本が目安です。用法用量を守らないと大変なことになります」

「そうなんですか…ちなみにどうなるんですか?」

「内臓機能が向上しすぎて、必要な栄養素なんかも処理してしまったり、アレルギー症状が出てしまったりしますね」


それは怖いな…やはりこれだけの効果があると、副作用も半端では無いという事だな。

ステムさんに今日は帰ることと来週改めて伺うことを伝えて、銀音を起こしに行く。


「銀音ー起きてるか?そろそろ出発するぞ」


ノックしながらそう伝えると、扉が開き昨日のやつれた感じと違い、いつも通りの銀音がそこにいた。


「おはようございます。勿論起きていますよ。準備も完了してますので何時でも出立出来ます」

「銀音もか。やっぱりドリンクの効果は凄いな。1ヶ月に1本しか飲めないらしいから、今度来た時に買う事にしよう。この後朝食を食べてからコンポストに行ってミノタウロスの角について聞いてみよう思ってるから直ぐに出よう」


まとめる程の荷物も無いので早々に部屋を出る。再度店舗へと向かいステムさんにモーズさん達によろしく伝えてください、とお願いしてから朝食を食べにジャンミートへ向かう。

今日の日替わりモーニングメニューはオニオンスープにサラダと厚切りベーコン、フレンチトーストのセットだった。それを2人分注文して美味しく頂いた。さすがジャンミートと言ったところで、厚切りベーコンは俺の知ってる厚みじゃなく親指よりも太かった…。朝から重いなと思っていたが、薄めに味付けされたフレンチトーストとサラダで調度良いバランスになっていてペロリと平げられた。


「さて、今はーーー9時位か。コンポストに行くにはちょうどいいかもな。そろそろ向かうとしよう」


代金を支払って店を出る。コンポストに行ってミノタウロスの角でどんなものが作れるのか聞いて依頼してみよう。

ん?というか良く考えたらミノタウロスの角持ってないな…コンポスト行く前に冒険者ギルドに行って素材と買取料金を貰わなきゃだね。

ということでまずはギルドへと向かう。



ギルド内は依頼を受けに来たり、完了の報告をしに来た冒険者たちで賑わっていた。俺は買取・解体カウンターへと向かいミノタウロスの件で来たことを伝える。職員の方がギルドカードの確認を求めてきたのでギルドカードを提出する。


「コウダ様ですね。確かに確認できました。ミノタウロスの角と肉、ブラックミノタウロスの角と肉以外は買取という事で、解体料金ミノタウロス2体で金貨6枚、ブラックミノタウロスが金貨5枚の計11枚を差し引いて金貨539枚です」

「結構な金額ですね…内訳って分かりますか?」


受付の方に内訳を見せてもらった。ミノタウロスがそれぞれ金貨160枚でブラックミノタウロスは230枚の様だ。もしも角と肉も買取させていたら、ミノタウロスは250枚、ブラックミノタウロスは350枚にもなっていたようだ。角も肉も需要があって、特に肉は贅沢品らしく高値で取り引きされているみたい。

ブラックミノタウロスの角と肉は俺が貰ったので、解体料金と気持ちとして端数の30枚を引いて残り金貨100枚づつをウィンドソードとアングリフの皆さんに渡してもらうようにお願いした。

引き取りする素材は隣の窓口で受け取れるとの事で、早速そちらで受け取りを完了させた。角は良いとして山積みになってる肉の量がえげつない。見た感じ軽く1tはありそうな感じだ。暫く肉には困らないな。

マジックバックの容量ギリギリで何とかしまう事が出来た。一度にこれだけの物を入れるのは滅多にないだろうし、逆に容量の目安が出来て良かったと思おう。


ギルドを後にしてコンポストへと向かう途中、手土産にお菓子を購入。そのまま歩き続けてコンポストの事務所へと到着した。


「イーラミナさん、コウダです!いらっしゃいますか?」

「あー居ますよ!コウダ様少々お待ち頂けますか!申し訳ないです!」


忙しそうな時に来てしまったみたいだな。事前に行くことを伝えておけばよかったか…。

そこまで重要じゃないミノタウロスの角について聞きたいだけだったから、ちょっと申し訳ないね。


「お待たせしました!どうぞ中へお入りください」

「ありがとうございます。すみません、忙しい時に突然押しかけてしまって…」

「いえいえ!大丈夫ですよ。ソフィーを起こしていたもので…お恥ずかしい限りです。はははっ」


そのまま応接室へと通され、イーラミナさんがお茶を準備してくれた。俺も買ってきたお菓子を渡し、暫し談笑(ミノタウロスの件…)をしてソフィアさんが来るのを待った。


「コウダさん、おはようございます!すみません遅れてしまって!」

「いえ、こちらが突然訪問したのが悪かったですから気にしないでください。ソフィアさんも来たので早速本題に入りたいのですがーーー」


俺はそう言いながらマジックバックからミノタウロスの角とブラックミノタウロスの角を取り出し机の上へと並べた。全部で6本。ミノタウロスの角は濃いめのベージュ色でいちばん太い所は直径が野球のバットの芯位。先端に向かって細くなっていき全長20cm位だ。ブラックミノタウロスは名前のように黒に近い藍色で長さが30cm程と一回り大きい。


「これは先程話しに出ていたミノタウロスの角、ですね?私も久々に現物を見ました」

「実は冒険者の方にミノタウロスの角は作物に効く肥料が作れると聞きまして、コンポストに来れば何かわかるのではないかと……」

「そうですね。確かにミノタウロスの角は作物に作用する肥料を作ることが出来ます。もしかしてこの黒いのはブラックミノタウロスの角ですか?」

「ええ、そうです。討伐した人に権利があるらしく、私が引き取ることになったんです。ミノタウロスの角と違ってどれほどの効果が得られるんですか?」

「ブラックミノタウロスの角は作物の収穫量を増やせる肥料が作れるん。厳密には受粉率をほぼ完全にすることが出来る様になるので、蕾が出来たら出来ただけ収穫することができるんです。取り扱いも本当に簡単で粉末にしたブラックミノタウロスの角を薬品と調合した植物調整剤を水に溶かして蕾に散布するだけ!これ程取扱が簡単で容易に収量を上げられる薬品は中々ないですよ。まぁーその分お値段も張りますが…」


ミノタウロスの角やブラックミノタウロスの角を用いた薬品が作られた経緯は、50年ほど前の戦時下に自国での食糧生産を向上させる為に作られたようだ。輸入に頼るとどうしてもこういう問題が出るんだろうな。元いた世界と違ってこういう薬品があるのは凄いな。


「ミノタウロスの角は粉末にして別の素材と混ぜ合わせ加工することで、成長促進剤を作ることが出来ます。少量で十分な効果を得ることが出来、最大5倍もの速度で作物が成長します」


ごっ5倍!?凄まじい効果じゃないか!そんなに効果があるのならミノタウロスの角が高値で取引されるのも分かるな。急ぎで出荷したい時や時間のかかる作物なんかに使えば利益ガッポガッポじゃないか!ブラックミノタウロスの角もそうだけど本当に運良く噂を聞けてよかったよ。


「あのー。コウダさん。いい事ばかりに思えると思うんだけど、ブラックミノタウロスの角と違って実はちょっとしたデメリットがあるんです」

「え?デメリット?角が高額で利益率が下がる事ですかね?」

「まぁー確かにそれもあるんだけど、成長促進剤って言ってる通り本当に成長だけを促進させる物だから、これに肥料みたいな栄養素は含まれてないんですよね」

「ーーーそれってもしかして、仮に成長が2倍になったらその分土地から水分や栄養素を吸い上げる速さも2倍になるってことですか?」

「そういうことです…この成長促進剤を用いると確かに早く作物を育てることが出来ますが、その分育成期間の手間が一気に凝縮されて管理作業が大変になるんです。販売当初は収穫量を何倍にも出来るということで爆発的に売れたけど、施肥量を間違えただけで最悪作物だけでなく土地自体もダメにしてしまうリスクがあって、今では雇用人数の多い大規模農家位しか使用してないんです」

「まぁー使い方さえ間違わなければ有用な商品なのは間違いないですよ。実際使い方を熟知している小規模農家さんは、土地があまり無い分、施肥量を調整して一筆あたりの収穫量を1.5倍以上にまで増やしています。先程ソフィーが言ったように与える作物別に施肥量を間違わなければ十分に効果のある商品です。ただ、発売当初に使い方をきちんと周知させることが出来ず躓いてしまったせいで、今ではあまり人気のある商品ではなくなったのです」


あーなんか発売当初に躓くって分かるな。農機具なんかも30年くらい前に発売されたやつは今みたいにネットでなんでも調べられるわけじゃないから、使い方の指導とか上手くいかなくてその機械の性能を100%引き出せなかったって聞いたことあるわ。使われずに放置されてる機械の価値を知ってる人が安値で買ってきて、実際に正しく使用して見せると周りの農家も、この機械はこんなにも使えたのかー!ってまた需要が上がるんだよね。


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