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農機整備士の異世界開拓ライフ  作者: ミャーク
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#43二日酔いと消酒ドリンク

翌朝。内側から石頭(せっとう)ハンマーで殴られているかのような頭痛で目が覚めた。飲酒は幸せの前借りだと職場の先輩がよく言ってたことを思い出す。幸せを前借りするってことは、残りは不幸しかないわけで…。頭痛の他に体のだるさと吐き気…全く人間とは学習しない生き物だな。

目覚めた場所を見回したところ、昨日飲み会をした工場ではなくビジネスホテルくらいの部屋であった。


「ここは…どこだ?確かファマーからは移動してないはずだけど」


自分が横たわっていたベッドの他にはちょっとしたタンスと鏡、洗顔用の桶と水瓶だけで壁も板張りのシンプルな内装だった。

取り敢えず顔を洗い部屋の扉を開けて外へ出ると、廊下へと繋がっていた。見た感じファマーの廊下っぽいからやはりそのまま酔いつぶれてここへ寝かされたのだろう。

時間を確認すると午前10時。確か昨日の記憶が残っている時で23時になりそうな時間だったのは覚えている。

そろそろ寝てぇーなんて思いながら時間を確認したもんな。でも、モーズさんを筆頭にドワーフの職人たちは皆浴びるように飲んでいた。コップに穴でも空いてるんじゃないかって疑うぐらいのハイペースだったよ…。


「このまま寝ておきたいところだけど、流石にいつまでも他人の家にいても迷惑だしな。取り敢えずモーズさんに一言声掛けてから帰ろう」


取り敢えず廊下を右方向へ進んでみる。廊下には俺のいた部屋と同じような扉が並んでいて、突き当たりを左に曲がると昨日講義と懇親会を行った工場へ出た。机や椅子、飲み食いしたゴミなどは綺麗に片付けられていたが、人の姿は無かった。

どうするかな。もしかして皆帰っちゃったか?工場内も物凄く静かだし今日は休みなのかも。

もしかしたら店は開いているかもしれないと思いファマーの店舗の方に行ってみる。


「おっ!今起きたのかコウダさん。昨日は飲み過ぎてたみたいだけど、大丈夫か?」

「モーティーさん…正直物凄く体調は悪いですね。途中からの記憶が無いです」

「くくくっ!だろーな!あんなになるまで飲んだらきついだろうよ!ベロンベロンで目も開いてないのに物凄ぇーハイテンションだったからな。白銀の姉さんも大概だったがな。最後の方は2人してイッキ飲み大会始めてたぜ。ドワーフの俺たちから見てもなかなかの飲みっぷりでびっくりしたぜ」


くそ〜昨日の自分をぶん殴って説教してやりたいぜ。記憶を飛ばした時はだいたい歯止めが効かなくなって飲みまくってるんだよな…。

暫く酒は絶対飲まない、っと心に強く誓った。


「しかし姉さんも起きてこないし、そんな体調で今日の昼からのミーティング大丈夫か?」

「ーーーミーティング?なんの事ですかね?」

「なんだ、覚えてないのか。昨日飲みながらチェーンソーやら内燃機関やらの原理を質問されてて、個別に明日教えるってんでミーティングを開く事になったじゃねーか。皆理解を深めるために、午前は互いで話し合ってるぜ」

「全然覚えてないですね…これはやばいな。申し訳ないですがもう少し眠らせてもらっていいですか?」

「ぷっ。構わねぇーよ!寝て少しでも回復して来たらいいよ。ほら、これ飲んどくといいぜ!飲んだ翌日はやっぱり“消酒(しょうしゅ)ドリンク”に限るぜ!」


渡された透明の小瓶には飲むのを躊躇う紫色のドロっとした液体が入っていた。全然味が想像出来ない…ネタじゃないのか?こんな飲み物見たことないぞ。


「遠くの国から来たってのは本当なんだな!初めて見たのか?」

「えっええ…これは本当に人間が飲んでも大丈夫なのですか?」

「くくくっ。大丈夫だよ!飲めないのを渡すわけないだろう!見てくれは悪いが味は思ったより美味いぞ?表現するならフルーツジュースに近いかな」


フルーツジュース…俺の知ってるフルーツジュースはこんな色してないんだけどね。スムージーでももう少し流動性がいいぞ?俺はコルク栓を開け匂いを嗅いでみる。思っていたよりは刺激臭はしないな………えぇぇい!ままよ!。


「ーーー意外と飲みやすい。フルーツジュースってよりは野菜ジュースだね」

「だっろぅー?これは体内で魔素と反応して内臓機能をフル稼働してくれるんだ。副作用とかもないし、内臓に溜まった老廃物の排出や機能不全を正常に戻してくれるってんで酒を飲まない人もたまに飲んでるくらいだぞ?」


そんな夢の様な効果があるのか!元の世界にあったら絶対リピート確定だわ。1時間ほどで効果が現れるようなので、お言葉に甘えてもう少し寝させてもらうことにした。

図々しいがもう1本頂き、銀音にも届けることにする。


「おーい大丈夫かー?」

「たっ…タクミ様ですか?大丈夫ではありませんがどうしましたか?」

「そうか。俺も酷い有様だよ。モーティーさんから二日酔いに効くドリンクを貰ってきたから飲まないか?」

「この地獄が少しでも和らぐなら是非頂きたいです。今、扉を開けますね」


扉を開けた銀音の顔はこの世の終わりとも言わんばかりの酷い有様だった。綺麗な銀色の髪も心無しかくすんで見える。俺が銀音に消酒ドリンクを手渡すと躊躇いもなくドリンクを飲み干した。


「すっ、凄いな。俺は飲むの躊躇ったんだけど」

「どのような見た目と味だろうとこの地獄から開放されるなら有難くいただきますよ」

「そっそうだな。昼からはまたミーティングやる事になってるからもうしばらく寝ておこう」


俺は銀音の部屋を後にし、再度眠りについた。少しでも回復しないと正直ミーティングなんかやってられないよ…。

ズキズキと痛む頭に耐えながらベッドに横になり続けた。




なにかの物音で意識が徐々に覚醒していき、それが自分の部屋がノックされている音だと気が付いた。俺は急いで飛び起き扉に駆け寄る。


「すみません!今開けます!」

「おーコウダさん。昼飯の準備が出来たんで呼びに来たんだが、その様子だと食べられそうだな!」

「そう言えば、あの激しかった二日酔いが嘘のように無くなってますね!心無しか体もいつもより軽いです!」

「それが消酒ドリンクの効果よ!びっくりするくらい効果抜群だろ?」

「これマジで凄いですよ!どこに売ってるんですか!?買い貯めしておきたい!」

「実はこれもうちの商品でな!店で売ってるから買っててくれ。ちょいとお高いけどな」

「これだけの効果があるのなら高いのも納得ですよ。是非買わせて頂きます!」


部屋から出て銀音の部屋を訪ねると彼女も俺と同様凄まじい効果に驚いていた。そりゃそうなるよな。元の世界でもこれだけの効果がある商品は無い。

調子が戻ったのでモーティーさんに案内のもと食堂へとたどり着いた。

食堂は店舗の2階ワンフロア丸々で、社員食堂らしく長机がズラッと並べられていた。

ちょうどお昼時なので工場の職人さんとは別に昨日は見なかった女性社員や作業服とは違う制服を着ている男性社員でごった返していた。


「かなり大きな会社なんですね!」

「こういったら自慢に聞こえるかもしれないが、うちは80人の職員を抱えてる中規模の商会なんだ。この辺ではなかなかにでかいぜ?」

「それは凄いですね!もしかして魔導付与の他にも色々やってるんですか?」

「そうだな。魔導付与や農具、機械の制作が主なんだが魔導付与自体は幅広い分野に使われてるからな。住宅建設や特殊建築、健康商品なんかの開発もやってるぜ」


ファマーは開業150年を超える老舗らしく、機械や建築の分野は開業当時から行っていたようだが、魔導付与と健康商品は50年前から始めたようだが、この街では一番の商会らしい。俺は最初で当たりを引いたわけだ。

昼ごはんは3種類の日替わりメニューから選んで頂くシステムで、俺はシンプルに具だくさんの野菜スープとパンのセットにした。ゴロゴロと大きめに切られた肉がとても美味しかったよ。


昼食後早速ミーティングを開始したが、昨日聞いたとは思えないほどの理解と疑問で、驚いた事に簡単にではあるが設計図を描いてきていた。俺はそれに対して問題点や改良点を指摘していき、職人たちの疑問や提案に回答していった。

ミーティングは続かなく進んでいき、来週から早速試作品を制作していくことが決まった。全員が全員このプロジェクトに参加する訳には行かないので、代表者を決めて進めていくことに決定。チェーンソー制作チームの中心人物は3人。魔導付与が得意なモーティーさんをリーダーに設計や計算が得意なステムさん、加工や装飾が得意なカナヂさんという若手のホープ達だ。実はこの3人が一際熱意があり理解が早かったのもある。なんか、自分の若いときを思い出す。最初から先輩たちの様になんでも出来る訳では無いし、でも、この仕事で何か一つ秀でた技術身につけたいって我武者羅に働いてたな。会社として新しいことにチャレンジするからこそ、先輩職人の皆さん達もモーティーさん達に任せたのかもしれない。


「ということで、これから俺とステム、カナヂの3人でチェーンソーを開発していくので、諸先輩方、協力よろしくお願いします!これからプロジェクトが成功することを祈願して今日も飲み会だー!」


予想通り今日も飲み会だな…前の会社でもこういうノリあったなーーー。

俺はその日も力いっぱい酒を飲んで意識を無くしたのだった。

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