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農機整備士の異世界開拓ライフ  作者: ミャーク
32/53

#32魔導農具チェーンソー

特に戦闘に参加してない俺は疲れてもいないので、自宅に戻ったあとは畑に水やりを行ったあと、ブラックウルフ達と銀音の昼食作りを行った。肉野菜炒めとハンバーグを作ってあげたらかなり喜んでたよ。

食休みを行った後、刈払機をマジックバックへ収納。明日からのミノタウロス討伐の準備は整った。トラクターに乗り込み街へと戻る。


「ブラックウルフ達はさっき合流した所ぐらいで待機してて。一応人が来たら警戒させない為にも上手く隠れててね。銀音は俺と一緒に街まで来てくれ。多分討伐会議とかもやると思うからそこに参加しよう」


銀音は戦闘時まで着てたのとは違うオリーブグレーの作業服を来ている。正直この色も凄く似やっているので、昨日ほどでは無いにしても少しドキドキしている。トドメに髪が鬱陶しいとの事でポニーテールに纏めていて、これもドキドキさせる要因になっていた。

街に着いて今朝はいなかったエドさんに事情を説明する。戦闘まで出来るなんてお前は何者なんだよって言われたが、ただの(元整備士の)農家ですよと苦笑いを浮かべて置いた。


「今日も乗ってきてるトラクター?だっけか。昨日は急いでたからあまり理解できてないんだが、農業に使うんだよな?」

「そうですよ。運転席…御者台の言えば分かりますかね?そこに人間が乗り込んで走行するんです。まだ時間あるので乗ってみますか?」

「ええっ!?いいのか?俺結構馬車の扱いは下手だぞ?」

「大丈夫ですよ!しっかり教えますから。以前はこれを販売する仕事をしてたので、親切丁寧に分かりやすく教えますから、安心して乗ってみてください」


タクミがそこまで言うのならって事で、まずはエドさんが乗り込む。余計な機能は省いて、取り敢えずクラッチ、ブレーキ、アクセル、ステアリング、シフトレバーを教えた。ギヤは安全の為に副変速、主変速共にローギヤへ入れておく。


「じゃあエドさんクラッチペダルを最後まで踏み込んでください。その後ハンドル左横のシフトレバーを前方へ押し上げます」

「おっおう…クラッチを踏んでレバーを前に、これでいいか?」

「OKですよ!これで走る準備は整いました!あとは、クラッチペダルをゆっくりと外してあげてください。するとトラクターが走り始めます」


不必要なところは触らないように指示して、オドオドしながらも手順通りに進めるエドさん。トラクターに初めて乗るどころか、原動機で走る乗り物自体に触れるのも初めてだろうに、そう考えると未知のものを知ろうとする冒険心が凄くて尊敬するな。

個人的にはクラッチが繋ぎやすいのでエンストが少なく、乗用車に乗る前の最初の教習車にはトラクターがいいんじゃないかと思う。


「よし!じゃあ離していくぞ!ーーーおお!!おおー!!!ほんとに走ってやがる!無茶苦茶遅いけど!」

「一応アクセルペダルを踏み込めばもう少し速度は出ますけど、今は安全の為ゆっくり走らせる設定にしてます」

「なんというか馬車に比べるとうるさいが、乗り心地は抜群にいいな!タクミはこれで来てたが歩いた方が早いんじゃないか?」

「一応最高速を出せば1時間で15キラトーメル程先まで進むことが出来ますよ」

「1時間で15キラトーメルだと!?そいつは速いな!最速の馬車でも1時間で13キラトーメル先まで行くのがやっとだって言うのに」

「他にも凄いのはですねーーーこの機械ひとつで約馬20頭分位の力があるんですよ!」


そいつは凄いな!とエドさんが言い、他の衛兵の方達も同じように驚いていた。一応25馬力のはずだが、新車では無いのとこの世界の馬がどれ程の力があるのか分からないので余裕を持ってそう説明した。その後も皆のリアクションが良いので色々説明してしまった。これを売り出せばがっぽり稼げるのになとエドさんが聞いてきたので、モーズさんのところでいずれ量産する予定だと伝えた。


「そろそろそのモーズさんのところに、道具を取りに行くので行きますね」

「おう!ミノタウロスの討伐は頼んだぜ!帰る時は関所に泊まっていきな!少し飲もうぜ」

「ありがとうございます!その時は是非!」


俺はエドさん達に別れを告げてその場を離れる。パンジャ酒を持ってくればよかったな。いいか、討伐後に買って行くとしよう。

関所からモーズさんの店に直行する。少し早い気もするが店内で使えそうな器具を見ながら時間を潰せばいいだろう。

ファマーに入店し受付を見ると前回と同じように看板が立てられていた。しかし、今回はどうも内容が違うようだ。


“チェーンソーのコウダさんへ。来店されたら店奥へお進み頂き、突き当たりの扉を開けすぐの右側扉へノックよろしくお願いします”


「この感じだとチェーンソーへの付与は終わっているようですね」

「そんな感じだな。忙しいから工房へ直接来て欲しいんだろう」


俺と銀音はカウンター奥の扉を開け、指示通りの扉の前へと到着した。扉をノックしようとすると部屋から物凄い轟音が鳴り響いた。あまりに唐突だったので心臓が飛び出すかと思った。


「やっちまったーーーーー!」


轟音の後これまたどでかい声で男性が叫んでいる。俺は慌てて扉を開けた。しかし、暖かい霧…というか水蒸気のせいで視界がものすごく悪い。


「大丈夫ですか!?返事して下さい!」

「おーこっちは大丈夫だ!すまない。どちらさんだ?」

「大丈夫そうなら良かったです。表の看板を見てこの部屋まで来ました。コウダです」

「コウダ………コウダ!?タクミ・コウダ工場長さんか!?」


声の主は俺の名前を聞いた後、何やら喜びの声のようなものを発して、このままじゃ話もできないとのことで緊急換気装置とやらを起動させた。換気扇とも違う独特の風切り音が聞こえた後、物凄い勢いで室内の空気が入れ替わっていく。ものの10秒程度で視界がクリアになった。部屋の奥5m先にモーズさんとは違う若いドワーフが立っていた。


「あんたがコウダ工場長なのか!初めまして、モーズの息子モーティーだ!是非貴方と話がしてみたいと思ってたんだ!」

「初めまして。モーズさんには色々とお世話になってます。これからよろしくお願いします」

「ちょっくら茶と茶菓子を準備してくるから適当に寛いでてくれ」


そう言ってモーティーさんは部屋を出ていった。先程の爆発はなんだったのだろうかと思って、部屋を見回すと何やらボイラーのような構造の工作物が目に入った。

側面には小さいが内側から破断したような穴が空いており、恐らくここから大量の蒸気が漏れたのだろう、まだ少し蒸気が漏れ出していた。もしかして蒸気機関を作ろうとしていたのもしれな、戻ってきたら聞いてみよう。


「待たせたな。そっちの工作台で話しよう」


工作台は厚さ10mm程の鉄板で作られており、なんだか工場で使ってた溶接台みたいで懐かしく感じた。

モーティーさんを対面に銀音と横並びで座る。


「早速なんだけどさ、あのチェーンソーって機械はコウダ工場長の持ち物なんだよな?あれ程画期的な機構は初めて見たぜ。しかも、動力に魔導を使ってないんだって?」

「そうですね。モーズさんとこれから開発に着手するんですが、ボラタイルオイルを使って動かしてます」

「それは凄いな。ライトオイルやボラタイルオイルは自然界にもあるし、なんなら作ろうと思えば作れる代物なんだ。単価も高くないし供給も安定してるから、実用化出来れば物凄い大ヒット商品だぞ!実際に動かしてもらえるか?今回親父に頼み込んで俺が魔導付与させてもらったんだ。奥の工房で親父が作業してるから、切れ味のチェックを兼ねて動作確認させてくれ!」

「はっはい!分かりましたから!近い近い!」


モーティーさんはものすごく興奮していたのか、喋りながらどんどん近づいてきた。あまりに興奮していたので銀音が警戒していたが、俺が制止したら大人しく従ってくれた。モーティーさんに落ち着いてもらって取り敢えず、モーズさんの所に行って納品検査をすることになった。

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