#2手続きとお金
短いですが続きです。
門を抜けた先はテレビとか小説に出てくるような、中世ヨーロッパ風のレンガ造りの家々が立ち並んでいた。
街行く人々の格好も男性は半袖や長袖に長ズボン、女性は頭巾にくるぶし付近まで伸びた長いスカートと言うお約束な感じであった。
「なんと言うか思ってたよりも活気があるな。人の密度だけだったら結構東京都市部とかに負けてないかも」
人の往来が多いのもあるが、道脇なんかには露店等もあり、商人と客が品物について商談しているようだった。
今が昼時というのもあるのだろう、飲食物の露店に一層人だかりができている。
「俺も何か食べたいけど、金がないからな…とりあえず役所に行って手続きから済ませてあとのことは考えよう」
俺は門からひたすら真っ直ぐに中央部に向かい歩き続ける。するとエドさんが言っていたように二階建ての建物が見えてきた。おそらくあそこが役場で間違いないだろう。
遠目でも分かるくらい大きな建物だった。
役場の目の前まで来た。流石に一般向けの建物とは違い、かなりしっかりと、そして豪華に作り込まれている。
「二階建てって聞いてたけど、体感的には3階建てくらいは高さがあるな。屋根が三角ってのもオシャレでいいね」
役場入り口は3m近くはある2枚の木造の扉で、なんとも重厚感があり表面にはシンプルながらも彫刻が施されている。
扉に手を当てそのまま押してみると、拍子抜けするほど簡単に開くことが出来た。
館内には手続きを待っている人や掲示板を見る人、何か書物を読む人達で溢れかえっていた。
よく見ると俺が入ってきた場所とは別の三方に出入口があるのが確認できる。中央部には円状の受付のようなものがあり、四方の出入口の両側に2階部へと上がる階段が設置されていた。
「確かエドさんは2階が手続きするところって言ってたよな?でも、2階のどこかもいまいち分からないし中央のカウンターで聞いてみるか」
俺はカウンターへ行き変更手続きが行える場所を聞く。どうやら、2階の生活環境部という所で出来るらしい。
階段で上がると1階よりもより多くのカウンターと事務員さんたちがいて、皆忙しそうにしている。
俺は各カウンターに書かれてい案内板を見て生活環境部へと向かう。
「こんにちは。こちらは生活環境部となっておりますが、本日はどの様なご要件でしょうか?」
「こんにちは。住宅の名義変更に来たのですが…」
俺はそう言って権利書と譲渡証を見せる。正直騙されているんじゃないかと半信半疑なのもあるから、ここで何か問題が起こるじゃないかとヒヤヒヤしてる。
「お預かりしますね………確認できました。今回、エル・バンカー様所有の住宅及びその周辺の土地10チヨをお客様へ譲渡するということで宜しいですね?問題なければこちらの譲渡証の譲受人の欄に貴方様のお名前をご記入ください。手続きに必要な鉄貨5枚と身分証はお持ちでしょうか?登録の際に必要となります」
「実はこの国の出身ではなく、身分証を持っていないのです。どこで発行していただけますか?」
「それでしたらそのままこちらの窓口で発行することができます。しかし、発行手数料に銀貨2枚頂いているのですが、お持ちでしょうか?」
「すみません。何分この街に着いたばかりでして、この国のお金も持っていないのです。質屋のようなものがあれば何かお金に出来ると思うのですが…」
多分、手持ちのものか一緒に向こうから来ていた部品の中で売れるのもあるだろう。あって欲しいと願う。
「左様でございますか。宜しければ土地の一部を担保にお金をお貸しすることも可能ですがどう致しますか?」
「え!?お金貸してもらえるんですか!正直どうやって工面しようか悩んでたので助かります!」
「それでは詳しいお話をさせていただきますーーー」
窓口のお姉さんが言うことをまとめるとこうだ。
1#返済は1年以内に行うこと
2#額により変動はあるが利子は基本いつ返しても一律、今回の場合は金貨5枚らしい
3#土地の一部1ゼ(10ゼで1ダンで10ダンで1チヨらしい)を担保にするので金貨80枚借りれる。
4#無断で逃亡した場合は、土地が取り上げられることはもちろん、軽犯という事でいわゆる金融絡みでブラックリスト入りするらしい。
正直今の右も左も分からない状況で返せるかどうか分からないけど、バンカーさんの行為を無駄にしないためにも絶対に返さないと。
「説明内容に疑問点、不明点などがなければこちらの借用書へとサインをお願い致します」
俺は先程渡された譲渡証と借用書、身分証へと纏めてサインしていく。手続きと発行に少しかかると言われ、待合席にて呼ぼれるのを待つ。
しかし、なんていい制度が導入されている役場なんだ。余所者に対して親切もいいとこだろ。それだけ、悪人が少ないのだろうか?最初は転移?して訳が分からなかったけど良さげな街の近くでよかった。
待つこと15分程で名前が呼ばれた。
「まずこちらが身分証となります。コウダ様は地主ということで譲り受けた住宅の住所を登録してあります。今後は関所やギルドなど身分証を求められる所ではこれで全て手続きできます」
身分証には写真などはなく名前と拠点としている街の名前などが記載されていた。特別な装置にかざすと住所や婚歴など様々な情報が見れるらしい。
「そして、新たにコウダ様のお名前で登録された土地の権利書と測量図控えです。こちらの権利書は無くさないよう大切に保管なさってください。あとは事務手数料を引いた金貨79枚と銀貨7枚、鉄貨5枚となります。ご確認頂き、不備等なければ終了となります」
「ーーーはい、問題ありません。ありがとうございました。あとこの街と周辺の地図などはないでしょうか?何分この街に来たのは初めてでして」
「ございますよ。この街の地図と周辺地域の大まかな地図です。2つで銀貨2枚になりますがどうなさいますか?」
「両方貰います。ありがとうございました」
銀貨2枚支払い地図を受け取ってカウンターを後にする。親切に簡素ではあるが手提げ袋をくれたのでお金以外は全てそこに入れてある。
さて、土地の所有手続も終わってお金も何とかなった。とりあえず次は衣食住の食だな。エドさんにお金を支払いながらどこかいい所を紹介してもらおう。
俺はそうして役場を出て、関所に向かったのだった。