#18伐採祭り
片付けを早々と行い、だし巻き玉子、オクラの和え物とキュウリの浅漬けを作り風呂酒のツマミにする。
勿論風呂で飲むのはパンジャ酒だ。これは絶対に合うに違いない。
「ツマミと酒はOK。コーキングは塗ってから4時間は経ってるから表面は硬化してるはず。お湯を張ってみよう」
タンクから竹で延長してお湯を注ぎ込む。湯気が半端では無いな。これは水で調整してやらないと火傷するやつだな。魔導設備の出力に驚きながらも、水で温度を調節して漏れがないかを確認する。
「水漏れは………無しだな。しっかりコーキングとボンドが仕事してるね」
服を脱ぎ頭と体を洗いついに浴槽へと体を沈める。溢れ出す水がもったいないので浴槽には余裕を持ってお湯を入れて置いた。計算通りギリギリ溢れださないくらいの水位になった。
「ああ〜ーーー洗われるな〜」
温度は少し高めで恐らく43℃位ちょっと熱いがこのお湯に浸かれているという満足感。そして、準備したツマミと酒がこの雰囲気によく合う。堪りませんな。
風呂では血管が膨張し、血液の周りが早くなるため急性アルコール中毒等起こる危険性もあるみたい。ゆっくりチビチビ飲んで、風呂から上がることにしよう。
月明かりと数本のロウソクの明かりしかないが、なんともロマンチックで彼女でもいればイチコロだったろうなと考える。酒とつまみを煽りながら、今後の事や予定を考える。
「そういえば結局白犬は帰ってこなかったな…まだ完全には回復しきって無いはずだけど、きっと無事に群れに帰ってるだろう。その方があいつにとってもいいことだろうしな」
白犬の無事を祈りつつ風呂から上がる。だいぶリラックスすることが出来たな。1度はやってみたかった風呂酒。確かにかなり酔い周りが早い。薄めて飲むくらいで丁度よさそうだ。明日は朝から早速ウィザーウッドを散布した樹木を伐採するとしよう。
翌朝昨日は風呂を作った時の疲労感と湯に浸かったリラックス効果でかなり熟睡することが出来た。時刻は8時前驚く程体が軽い。食事と準備を終えて裏庭へ移動する。
「さて早速伐採作業に入りますかね~先ずは用法通りに散布したやつから順番にっとーーー」
ウィザーウッドを散布した木々を全て切断し終えた。一応切る前に外観を確認したが1/4に希釈したウィザーウッドを散布した4本はどれも葉に緑が少し残っていたが枯れる前って感じだ。その他はしっかりと乾燥されている。結果としては1/2までは効果が十分に得られる事。乾燥を急いでいない、薪として利用するならば1/4でも良さそうだと感じた。常用は1/3にしておいて、急ぎで1/2、ものすごく時間がある時は1/4に希釈して使い分けするとしよう。
42本も切り倒すとあっという間にお昼を過ぎていた。昼休憩を挟んで枝葉を落とすとしよう。
「今日の昼は白犬にあげてた肉が余ってるから、それで野菜炒めでも作ろう。こんだけ汗を流してたらビール飲みたくなるなー。ひと仕事終えての昼飯に飲むビールはものすごく美味いんだよね!今度ビールも買うとしよう」
野菜炒めを作りながらビールに思いを馳せる。次街に行った時の買いたいもの・探すリストにビールの文字を書き足しておく。
食事を終え30分程昼寝をしてから作業再開。枝を落とす作業をしていく。葉っぱは地面に枝ごと叩きつけるとある程度落ちるので、土と混ぜる事にする。淡々と同じ作業を繰り返し、やっと15本目が終わった。
「やばいな…倒すのは簡単だったけどこの作業は時間がかかって大変だ。もう日が落ちてきてるしあと1本やって今日は終わりにしよう」
今日の作業が終わる頃には夕方6時過ぎになっていた。淡々とした作業だから、結構時間が過ぎるのが早いな。せっかくのスローライフだしゆっくりこなして行こう。
片付けを終えて先ずは風呂に入る。重労働をしたり頭を使って疲労した時にゆったりと風呂に浸かれるのは本当にいい。今日は昼に作った野菜炒めの残りときゅうりを味噌に付けながらツマミとして食べる。野菜炒めはかなり汁気が多くなっているがこれはこれで美味いと思う。そして味噌ときゅうりの相性は抜群だ!やはり味噌はいいな。色合い的には赤味噌みたいだが、味は合わせ味噌に近い感じがする。今度味噌汁でも作るとしよう。そう言えばそろそろ畑の具合も確かめなきゃだな。明日は枝を落とす前に畑を1回見ときますかね。
翌朝。昨日風呂場で考えた予定通り先ずは畑の状態を確認してから枝を落とす作業を行っていく。
「まずは最初に耕した圃場からだね。うん?………これマジか思ったよりも雑草の分解が進んでるね。地球とは違う微生物でも居るんだろうか。かなり馴染むのが早い。もしかしてこの調子なら今週にでも植え付け作業に移れるかも」
5畝のうち原野だった場所も思ったより土が出来上がっていた。あと1回ロータリーをかけてやれば十分作物を育てることが出来るだろう。この調子ならこの前雑草の刈り取りをした隣の土地も直ぐに漉き込作業に入れそうだね。
畑の状態が確認できたので、続きの枝落とし作業に入る。流石に昨日やってただけあってコツを掴んできたのか、1本当たりにかかる時間が短くなっていた。
小休憩、お昼休みを挟みひたすら作業を続けて時刻は昼の2時過ぎ。やっと全ての枝を落とすことが出来た。
「長かったな〜後は邪魔にならないとこに移動するだけか。重たいからトラクターで引っ張るとしよう」
農具小屋にちょうどいい太めのロープとツルハシの様なフックが2本あったのでこれを繋げて丸太を運ぶ。
取り敢えず今は材木置き場当たりにまとめて置いておくことにしよう。5段積みにすれば幅は取らないけど荷崩れが怖いから、一応杭は数ヶ所打ち込んでおく。
一度に2本づつせっせと移動作業を行い、1時間半ほどで作業は完了した。少し休憩してから片付けをしようと思っていたその時、裏庭の林の奥から物凄い音が鳴り響き、続いて土煙が上がった。
「なっなんだ!?山でも噴火したのか!?でも、山は無いし…一応様子を見に行ってみるかーーー」
もしも盗賊等人為的な場合も考えて、悪い奴らだったら身を守らないといけない。一応チェーンソーも持っていくとしよう。
武器と言えばやはりチェーンソーは外せないよね。使えば道具、戦う時は武器って、都合のいいのがチェーンソーのいい所だ。初めて見る人には俺がジェイソンのように見えてるかも。
燃料を手早く満タンまで入れて、スマホも持って出発する。もしも怪しい奴らがいたら、物音立てずにサイレントカメラで撮影する為だ。
林を進むこと数分。土煙が上がっている近くまで来た。俺は草木に身を隠しながらその現場へと近づいていく。
「…誰も居ないな。でも、どでかいクレーターみたいのが空いてる」
クレーターのサイズは深さ30cm程で、余程重たい物が勢いよくぶつからないとこうはならないだろういう感じであった。
「一体ここで何があったんだ?」
もう少し辺りを見回してみると向こうの方に何本か木がなぎ倒されていた。横から物凄い勢いで衝突されたのか、根元から倒れているのもあった。
「ワンワン!ワンワンワン!」
木々の倒れているさらに先から犬の威嚇するかのような鳴き声が複数聞こえる。
「もしかしてこの前の白犬か?取り敢えず見に行ってみよう」
鳴き声が段々よく聞こえるようになってくると、何やら別の声も聞こえてきた。表現するなら牛の鳴き声をもっと低くした感じだ。
「モ゛ォ゛ォ゛オ゛ー!!!」
現場に到着するとそこでは頭と下半身は牛で上半身は人間の生物?が雄叫びを上げていた。




