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農機整備士の異世界開拓ライフ  作者: ミャーク
13/52

#13クリーンストーン

イーラミナさん達に案内されて辿り着いたのは、コンポストから徒歩3分程の場所にある、“労働者の憩いの場工業飯!”と看板に描かれた食事処だった。


「工業飯さんの食事はどれもボリューム満点で美味しいんですよ!メニューは全部で15種類。週替わりランチと日替わりランチの2つがあってこれを食べに来る人も多いんです。私は定番の工業飯Aにします!」

「工業飯A?どんなバリエーションなのか分からなくてワクワクしますね。自分もそれにします!」


イーラミナさんが俺とソフィアさんの工業飯A2つとチキンカツピラフを注文している。私ははあまり胃は大きくないので、とボソッと言っていたけど、そんなにボリュームが有るんだろうか…ちょっと不安になってきた。

注文を終え、ピンク色の作業上着にワンポイントでピンクのストライプが入った黒のスカートを着用したウェイトレスに席まで案内された。


「ただいまランチタイムとなっておりますので、下記のドリンクの中からお1つお好きな物をお選び下さい」


アイス・ホットティーにアイス・ホットブラックコーヒーと普通のランチドリンクかと思いきや、ビールにワインとアルコールまで載っていて驚いた。ソフィアさんいわく、シフトの都合上早朝出勤でお昼前に終わる人の為に昼間酒と言うこの店だけのメニューがあるそうだ。夜勤の方々が居てくれるお陰で、街の生活が上手く回っているという感謝を表した結果らしい。これには俺も感動してしまって、つい店員さんにありがとうって言ってしまったよね。そして、向こうも満面のスマイルで返してきてさらに気分が良くなった。

取り敢えずタダで酒飲めるならと思ったけど、ここは無難にアイスブラックコーヒーにしておこう。ソフィアさんはアイスティーをイーラミナさんはホットブラックコーヒーのホットを頼んでいた。


「しかし、すごい賑わいですね。本当に酒を飲んでる人たちもいるし」

「そうですね。コウダ様席後ろを見てみてください。あちらでお酒を飲んでいる方たちは服装から見て、配水管理課通称“ウォーターデリバリー”の方たちでしょうね」

「ウォーターデリバリー?とはどの様な職業の方たちなんでしょうか?」

「ウォーターデリバリーと言うのは飲水等を管轄している公的機関のひとつです。各家庭には水を配給する管が通っているのですが、この管の先には水を封じ込め、魔力を流せば放出する魔石に繋がっているんです。ひとつの魔石に25件1月分程の水が蓄えられています。彼らは25件を1ブロックとして定期的にこの魔石を取り替えたり、水管の整備を行っているのです」


なるほど上水道職員の方々か。しかしこの街は水道も敷設されてるのか。結構ライフラインがしっかりしてるみたいだな。


「そして店左奥にいる濃い茶色の作業着を来ている人達は環境整備課、通称“クリーンマスター”の方たちです。コウダ様は工業区に来てなにか感じませんでしたか?」

「感じたことですか・・・そう言えば工業区の割には空気がとても綺麗だなと感じました」

「その空気を綺麗にしているのが彼らの仕事なんです。“クリーンストーン”と呼ばれる魔導付与がありまして、50年ほど前に発表された比較的新しい技術なのです。空気を吸い込み嫌な匂いや汚れを魔石内に吸着してクリーンな空気にしてくれるんです。最近だと技術が進んで、吸着だけでなく任意の香り石を組み込むことで芳香剤としての役割も持つようになったんですよ」

「工業区で使われているクリーンストーンは街中と汚染が酷い地域用だからサイズも結構大きいけど、家庭用のは拳サイズで凄く扱いやすいし、香り石も沢山種類があるから女性に人気があるんです。私の研究室もいろんな堆肥が置かれてるので、クリーンストーンと香り石を使ってますよ。でも、家庭用では歯が立たないので工業用ですけど・・・」


ソフィアさんは少し恥ずかしそうにそう告げる。なるほど、芳香剤としての役割もあるのならトイレとかに置いたら効果は抜群だろう。空気清浄機能付きならガレージに置いてみるのもいいかもしれないな。家庭用で販売している位だから値段的にもお得そうだし、今度Bコープあたりに探しに行ってみよう。


「そうなんですね。日夜皆の当たり前の生活の為に働いている方々がいるお陰で街全体が快適に生活できているんですね。とても大事なお仕事だからこそ、仕事終わりの昼間酒は染みるでしょうね」

「そうですね。彼らがいてくれるからこそ近隣の方々に悪臭で訴えられることもないですし、僕ら自身も気が楽になって仕事に専念できますよ」


工業区のクリーンストーンは工業区で生産を行っている企業の寄合で負担している様だ。大なり小なり公害は発生させているため、工業区に居る限りは年間金貨10枚は最低でも支払うそうだ。因みに堆肥生産を生業としているコンポストは匂いがきつい為、年間金貨15枚は支払っているそう。確かに食物をレベルアップさせる為の増強剤とはいえ、農家でもない一般家庭で食事中にでも堆肥の匂いが漂ってきたら食事が台無しになる。こればっかりは仕方の無い経費だね。

そんなこんな話している内に食事とドリンクが運ばれてきた。


「お待たせ致しました。工業飯A2つとチキンカツピラフでございます」


3人のウェイトレスがそれぞれ1品ずつ手に持って配膳する。それぞれが頼んだ食事が正面へと置かれた。俺は工業飯Aをまじまじと見つめる。…しまった、思った以上にボリューミーだわ。大盛りのサラダに唐揚げ、チキンカツにスパゲッティ、目玉焼きにハンバーグ、ご飯は大盛りと言うデラックスランチだった。成程これはかなり胃のでかい方たちには最高のランチだろう。食べれないことは無いだろうが、これはかなり応えそうだ…。


「いっただきまーす。やっぱり工業飯Aは量が多くてリーズナブルで最高だね!」

「同じ血が通っている妹とは思えないよ…。その量見るだけでちょっと胸焼けしてくる」

「兄さんは食べなさすぎなんだよ!しっかり食べて頭に栄養送ってあげないと、いい商売もいいアイディアも浮かばないよ」


そう言いながらソフィアさんはものすごい勢いで工業飯Aを食べ進めていく。確かに健康的な生活はいい食事、いい運動、いい睡眠と言うしな。俺もしっかり食べて農家としての事業を軌道に乗せよう。

談笑しながら食べ進めること数十分何とか全て残さずに食べ終えることができた。


「コウダ様見た目に反して結構食されるんですね!」

「…いえいえ、正直お腹が苦しいです。我が家の家訓というか、暗黙のルールみたいなのがあって食事を残すのは良くないって考えがあるんですよね。だから残すの勿体なくて、飲み会とかでもツマミをバクバク食べてます…」


器に米粒とかを残すのは個人的に好きじゃないってのもあるけどね。やっぱり出されたものはしっかり完食しなきゃダメだよな。

コップに残った飲み物を飲み、暫くしてから店を出る。


「美味しいランチご馳走様でした!工業区に来たらここで食事をとることになりそうです」

「それは良かったです。他にも美味しい店はあるのですが、うちの工房から距離がありましてね。次の機会にでも紹介しますよ」

「コウダさん。頂いた資料を元に必ず測定液を完成させますね!」


2人に別れを告げその場を後にする。恐らくあの二人の知識と技術、探究心ならきっと測定液を完成させてくれるだろう。あとは、俺も農家としての第一歩試験をクリアするために出来ることを頑張るだけだな。

取り敢えずオススメされたコンポスト製2号堆肥を買ってから帰宅するか。

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