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農機整備士の異世界開拓ライフ  作者: ミャーク
11/53

#11測定液

少し短いですが続きです

イーラミナさんに思い浮かんだアイディアを提案してみる。それは、測定液を提供する代わりにもし量産に成功したら特許権、所謂バックマージンを貰えるようにしてもらうこと。そこまで大金じゃなくていいから安定収入は欲しい。


「そうですね。普通ならその考えで問題は無いと思います。ですがこちらも商売ですので、コウダ様がお持ちの測定液がどれほどの効果があるのか?取扱易さは?生産費は?等など考えるべきことが沢山あるのです。もし後日時間があるようでしたら私共の工房へ来ていただけませんか?我社の研究員にも会わせたいですし、その時にでも測定液なるものを見せて頂けるとありがたいのですが…?」

「分かりました。正直私の持っている量では今後が不安でしたし、量産が可能であればお願いしたかったんです。先ずはお話から始めましょう」


時間は翌日の朝10時半頃に決まった。工房の場所が描かれた地図を貰った。せっかく堆肥工房にお邪魔するんだから、直接堆肥を買えるのか色々相談してみよう。イーラミナさんと別れ、俺は結局堆肥を買わずに家に戻ることにした。時計を確認すると丁度お昼時。せっかくだからお昼はジャンミートで食べる事にしよう。


ジャンミートで食事を終えて会計を済ませる。家に帰るには少し時間が早いし、どうするかな。そう言えば機械を動かす為に燃料が必要なんだよな…。見た感じ魔法が普及している様だし、石油なんかは無いかもしれないな。でも、今後のことを考えたら何とか手に入れたいし…ちょっとモーズさんに聞いてみよう。

ファマーへ入店しモーズさんに声をかける。


「あんちゃんが言ってる“ガソリン”?と“ディーゼル”?って燃料は知らねーが液状の燃料なら幾つか扱ってるぜ。そこの後ろの戸棚に小瓶があるだろう。左の緑の瓶はライトオイル、右の赤い小瓶がボラタイルオイルって燃料だぜ。一般家庭ではあまり使わないが、工業分野なんかでよく使われてるな。あとは冒険者や魔術師なんかも戦闘で使うらしい」


俺はモーズさんに断ってから、小瓶の蓋を開ける。まずはライトオイル、手で仰ぎながら匂いを嗅いだが少し違うけどディーゼル燃料の香りがする。蓋に軽く注いで色を見たがかなり透明。十中八九ディーゼル燃料で間違いない。

ボラタイルオイルも蓋を開けた瞬間に、内側から圧が抜け陽炎のようなものが出来、ガソリン燃料独特の鼻に刺さる匂いがした。まずは試してみるしかない。1つで2リットルくらいの小瓶を2本づつ購入する。ライトオイル(ディーゼル燃料)が鉄貨3枚、ボラタイルオイル(ガソリン燃料)は鉄貨4枚の計銀貨1枚と鉄貨4枚だった。値段的には地球とそう変わらないみたいだな。


「ありがとよ。そういや丁度日程が決まったところで手紙を書こうとしてた所なんだ。あんちゃんの家に行けるのは今日から3日後になるんだが大丈夫か?」

「勿論大丈夫ですよ!そんなに早く段取りしてくださってありがたいです」

「じゃあ3日後にな。もし、手持ちの魔石で事足りそうならその日で府術も完了させる予定だから、朝からお邪魔するぜ」

「はい!よろしくお願いします」


まだ使えるか分からないけど、燃料も手に入ったし使い方の指導と付術の日程も決まった。トントン拍子で事が運んでるな。明日はイーラミナさんの工房にお邪魔して、戻ってからはガレージの整理をすることにしよう。



ファマーを後にし家へと足を向ける。東門までたどり着いたが、何やら門前に人だかりが出来ている。中心部にはエドさん他衛兵の姿があった。


「こんにちは。何かあったんですか?」

「おう、タクミか。実は今そこの商人からの情報でここから1つ先の村でリーフウルフが目撃されたらしいんだ」

「リーフウルフ…ですか?すみません。私の出身では聞かない生き物なんですが」

「そうか。リーフウルフってのはな、単体では大した戦力では無いんだが大抵5、6匹で群れてて連携して獲物を狩るんだ。普段は村近くまで来ることは無いんだがここ最近の干ばつで獲物としてる動物が南下したらしくてな。それを追って村近くに出没してるらしい」


他にもリーフウルフは名前の通り鮮やかな緑色の体毛をしており、周りの茂みに擬態して獲物に近づくらしい。一応毛皮や肉は売り物になるそうだが、普段は人里に近づかない為流通はあまりしていないそうだ。まぁそこまで需要も無いらしいけどね。


「タクミ、お前の家は街寄りとはいえ防壁の外に有るんだ。村とは距離はあるがくれぐれも用心するんだぞ」

「分かりました。夜間はしっかり戸締りしておきます」


なんか怖い話だな。1つ先の村って一体どれくらいの距離があるんだろう。一応念の為に枕元に大ハンマーとマイナスドライバーを置いておくか。工具をこんな事に使いたくはないけど、身を守るためだし仕方ないよな。


東門を出て自宅に到着した。時間まだ15時半過ぎ。夕食には早い時間だし、何かやるにしても中途半端な時間だ。

そうだ、どうせなら測定液の資料をまとめてよう。あと、測定液は何かあった時のために全部渡さず、半分ほどにして置くべきだな。ガレージに転がっていたペットボトルに分けておこう。

ガレージから測定液と取説、空のペットボトルを持ってきた。スマホで音楽を鳴らしつつ分割作業を進める。改めて取説を読んでみると、アルカリ寄りは緑、中性は黄色、酸性はピンク寄りの色になるらしい。因みにオクラは中性から若干酸性寄りの圃場状態が良いらしい。


「試しに裏の圃場をチェックしてみるか。そもそもベストな酸度値かもしれないしな」


裏庭に移動し、ハンドシャベルで何ヶ所か土を採取した。室内に移動し、透明の容器に土を入れ水を入れ撹拌、暫く放置して上澄みを別の容器に移し測定液を垂らす。暫くすると透明の液体がじわじわと色を帯びてきた。


「色は…黄色っぽいけど中性ってことでいいのかな?という事はオクラにとってはいい圃場という事だな」


大体の作物は中性より酸性寄りが好ましいので、この土壌酸度なら試験とは別に入手したナスも良く育つ条件だ。

尖った作物で言えばほうれん草やチンゲン菜はアルカリ性土壌、小松菜やスイカなんかは酸性土壌でも育つことが出来るらしい。つまり、その時々のph値を測定しその時に合った作物を植えることで、圃場のサイクルが上手くいくってことだろう。まぁー実際には栄養素の再配布や排水性の問題なんかも出てくるだろうけど、何事もやってみなくちゃ分からない。せっかく測定液があるんだし、なんちゃって農家知識で色々試してみよう。


「とりあえず、測定液が正常に使えることは分かったし、日本語で書かれてるから翻訳して、役に立ちそうな理論でも調べて書き起こしておくかな」


今後測定液が上手く量産できることを祈りながら、資料をまとめて明日に備えるのだった。

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