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最近、日本に神様が降臨したという情報が色々なソースから入ってくる。
曰く、子熊のコスプレをした男の子である。
曰く、なぜか日本でしか目撃例がない。
曰く、なんでも知っているし、なんでも出来る。
曰く、いつも人助けの為に現れる。
曰く、何者かに追われていて、一つ所にとどまる事が出来ない。
子熊の神様というキーワードで検索するだけで、誰でも簡単に情報が入手出来てしまうような神様だ。
彼に助けられたという人々からの投稿や、彼に会いたいという人々が運営する彼に関する情報を求める掲示板などもある。
ざっと調べてみた限り、どうやら実在するらしい神様に、自分も是非会ってみたいと思った。
だから、
「誰か助けて! 具体的には神様とかプリーズ!」
今現在、自分は不特定多数の人間から、追われていた。
理由は簡単、自分は、なぜか人間に異様な程モテる。
街を歩けば確実に痴漢や痴女に襲われるので、万年引きこもりなのである。
幸いにして金銭的に恵まれている自分は自宅でネットゲーム三昧が日常なのだけれど、どうしても神様に会ってみたくて外出したのだ。
容姿も含め、身体的には恵まれているが、知能と精神年齢が低いのが自分の欠点だ。
こうなるとわかっていて飛び出してしまったあたり救いようがないバカである。
自分は、どうしても、まともな恋愛というものを経験したいのだ。
人間は全て、多少の個人差こそあれ、獣になって襲ってくるので問題外。
ならば神様を相手にしてしまえというわけだ。
そして、
「自ら危険に飛び込んでまで私に会おうとする人達も結構いて困っているんだ。君もその一人かな?」
情報通りの姿をしたプリティな少年が自分の前に現れたのだ。
ストライク。
返事は勿論。
「イエス! オーマイゴッド!」
「・・・はじめまして、大泉 刹那さん、生憎だけど、君の望みは叶えられない、私には想い人がいるのでね」
「オーマイゴッド!」
「・・・年上のお姉さんは私も大好きなのだけれどね」
「貴方の意思なんて知らない、知らなくていい、自分は、貴方と恋に落ちると今決めた、だから」
「・・・」
「自分の物になりなさい」
「断るよ」
比喩ではなく、自分達の間に亀裂が走った。
自分達の言葉の強制力に耐え切れず、空間が裂けたのだ。
子熊の神様と並び立つキーワード、美し過ぎる魔女と呼ばれた自分の本性にも、この神様は見事に抗ってくれた。
やはり、
「貴方しかいない!」
「君じゃない!」
予言者の言葉はその世界の真実である。
二人の予言者の相反する言葉がぶつかりあえば、世界が矛盾に耐え切れない。
よって、
自分は、壊れてしまった時空間の一日前へと逆戻りして、自宅のパソコンの前に座っていた。
宣言一つで世界を左右するこの自分と対等に渡りあうとは、ますます、
「自分は貴方が気に入ったよ、神様?」